試合レポート

仙台育英vs下関国際

2022.08.23

複数投手陣だけではない。仙台育英が示した全国の勝ち方

仙台育英vs下関国際 | 高校野球ドットコム
悲願の初優勝を果たした仙台育英(日刊スポーツアフロ)

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第104回 全国高等学校野球選手権大会

 第1回大会で秋田中が京都二中に敗れて以来、昨年まで三沢(青森)、磐城(福島)、仙台育英(宮城、2度)、東北(宮城)、光星学院(青森、2年連続、現・八戸学院光星)、金足農(秋田)が夏の甲子園大会決勝に進出しているが、優勝旗を手にした学校はなかった。(センバツ大会の決勝進出校は仙台育英花巻東(岩手)、光星学院の3校)

 悲願の甲子園大会の優勝は「白河の関越え」と表現される。2004年に駒大苫小牧(南北海道)によって「津軽海峡越え」が果たされているので「今さら白河の関と言われても」と言われそうだが。甲子園大会の優勝は球児のみならず、東北の高校野球の関係者にとっては悲願と言ってもいい。その悲願が仙台育英によってもたらさた。勝因はいくつかあるが、最も強く印象に残ったのは走塁である。

 私が俊足の基準にする「打者走者の一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」を達成したのは下関国際の1人1回に対して、仙台育英は6人15回だった。普通、疲れが出てくる準々決勝、準決勝、決勝は全力疾走が減る。それが今年の仙台育英はまったく衰えなかった。3回戦以降の走りは次の通りである。仙台育英の飛び抜けた走塁がおわかりいただけると思う。

 3回戦  仙台育英5人12回  明秀日立1人1回
 準々決勝 仙台育英5人9回  愛工大名電2人4回
 準決勝  仙台育英4人7回  聖光学院1人2回
 決勝   仙台育英6人15回  下関国際1人1回

 勝負を決定づけた7回裏を振り返ってみよう。先頭の9番尾形樹人(2年)が四球で出塁して打席には1番橋本航河(2年)が入る。スコアは僅少差の3対1なのでバントのサインが出ても当然の場面だが、1球目からバントの気配はまったくない。

 3球目のシュートを橋本が捉えて打球が右中間を破ると一塁走者の尾形はスタートを切っていて、あっという間に二塁、三塁を回ってホームに向かっている。バントでも仕方ない場面でヒットエンドランのサインを出せるのは塁上の走者も打者走者も俊足だからだ。尾形は悠々とホームに生還し、打者走者の橋本は三塁ベースに足から滑り込んで、私のストップウォッチが示した三塁到達タイムは10.96秒という速さだった。

 甲子園大会の三塁到達11秒切りはすぐ思い返せないほど珍しく、関東一時代のオコエ瑠偉(現楽天)が11秒を切ったよな、とようやく思い出せる程度。大谷翔平(エンゼルス)でも11.3、11.4秒程度で「メジャー屈指」と言われるのだ。

 この三塁打のあと下関国際の2番手、仲井慎(3年)は2番に四球、3番に死球を与えて満塁にする。下関国際の終盤をまかされる守護神らしくない乱れ方を見ても、橋本の三塁打が与えた衝撃の強さが理解できる。1死後、5番岩崎生弥(3年)に高めストレートをレフトスタンドに運ばれて勝負は決したと言っていい。

 仙台育英の先発、斎藤 蓉(3年)のピッチングも見応えがあった。攻撃陣と同様に、最も注目したのが旺盛な攻撃精神で、近年、甲子園大会で頻繁に見られる内角攻めが斎藤 蓉のピッチングにも見られたのだ。

 最も印象的だったのが1対0で迎えた5回表のピッチング。斎藤 蓉は1死一、二塁の場面で9番、橋爪成(3年)に対して縦変化のスライダーで内角を厳しく攻め続け、セカンドゴロの併殺打に打ち取るのだ。仙台育英は複数投手による継投策に特徴があるが、この日は7回までマウンドに立ち続け、球数は100球に達した。

 7回表まで3対1の僅少差だったこともあり、ベンチは斎藤 蓉を降ろせなかったのだろう。監督の覚悟を鈍らせるくらい今日の斎藤 蓉は素晴らしかったということである。

 仙台育英の陣容を見てすぐわかるのは2年生が多いこと。決勝のスタメンで見ると1番橋本、2番山田脩也、4番齋藤 陽、9番尾形、投手では今大会で好投した髙橋煌稀仁田陽翔湯田統真が2年だ。初戦を見たとき来年の優勝を狙っているのではないかと思った。それほど2年に好素材が多い。

 来年の高校野球を牽引するのは仙台育英大阪桐蔭になりそうだ。

(記事=小関 順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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