日大豊山vs共栄学園
元気なイケイケ野球の日大豊山が、手の内を知った仲の共栄学園に快勝
8回にダメ押しのソロ本塁打を放って三塁を回る日大豊山・市沢君
<春季東京都高校野球大会:日大豊山4-1共栄学園>◇5日◇1回戦◇都営駒沢
昨秋は、2回戦で優勝した國學院久我山に敗れている共栄学園。甲子園でもベスト4にまで残った力のある相手に先制するなどして競り合った試合を経験したということは自信にはなっているであろう。その共栄学園に立ち向かう日大豊山は、今春は1次ブロック予選からの戦いとなったが、2試合コールドゲームで勝ち上がっての本大会進出となった。
実は、この両チームは監督同士も仲が良く、練習試合などもよく行っており、お互いに手の内を知っている同士でもある。それだけに、お互いに公式戦としては負けられないという思いもあるであろう。
試合前から、日大豊山のベンチは元気がよかった。その元気のよさが初回に爆発した。失策で先頭打者を出してしまったものの、先発の布施がしっかりと凌いだ日大豊山はその裏、1番上野が左前打を放つ。続く石田句が死球で一、二塁となり、石田がしっかりと送って二、三塁。2死となったが、5番市沢が左前打して先制点が入ると、ベンチは一気に盛り上がる。さらに、狩野の一打は内野安打となり2点目。7番山根も左前打して、勢いで3点を先取した。
このリードで布施は落ち着いて投げられたようだ。3回こそ、2死から、2番後藤が二塁打して、続く早川の中前打で1点を返されるものの、慌てることはなかった。
3点を先取して以降、日大豊山としては、なかなか追加点が入って行かない展開で、いくらか焦れてくるところでもあろうが、布施は落ち着いていた。上手に打たせて取っていく投球で、このあたりはクレバーな投球と言ってもいいであろう。共栄学園の原田健輔監督も、「相手の戦略にうまくハマってしまったという形でした。相手投手のカットボールに手を出して攻略しきれないというパターンでした。布施君が上手く投げてくることもわかっていたんですけれども、まさに、術中にハマってしまいました」と言うように、布施は、身体自体もそれほど大きくはなく、がっちり型と言うよりは、いくらか華奢かなとも思えるくらいだ。それでも、上手に投げて行っているという印象だった。必ずしも球威があるというワケではないけれども、まさに、「打たせて取る」というのは、こういう投球だということのお手本のようでもあった。
そして、膠着していった展開の中で、8回に5番市沢が出会い頭的ではあったが、右翼へソロホーマー。試合の展開からしても非常に大きな1点となった。
日大豊山は、試合後のベンチも大いに盛り上がっていたが、福島直也監督も、「やってきたことがしっかりやれたという感じで、とても嬉しいですね。布施も丁寧に投げてくれて、メンタル面も強化されてきているのかなとも思います」と喜んでいた。「全体的にチームのノリがいいので、この勢いで行きたいですね」と、次へ向けても、気持ちを高めていた。
東京都の場合、春季大会は、ベスト8までの戦いは一気に短期間で進んでいくだけに、こうした形でチームの勢いをつけていくことで、一気に走って行ける可能性もありそうだ。
(取材=手束 仁)