都立日野vs都立紅葉川
日野が打線の強力ぶりを示して、年内最後の試合を締めくくる
一冬越え成長が大いに期待される、日野・松本君
この秋は、日野はブロック一次予選の初戦で、この秋の東京都大会で優勝することになる國學院久我山と初戦で当り破れている。紅葉川は、一次予選では大東第一と明治大明治を下し、都大会進出。しかし、都大会では、初戦で修徳に敗れた。
そんな両校の、年内最後の対外試合ということになった。日野高校は、現在学校の改築工事中ということもあり、校舎は仮設で校門から迷路のような仮設通路を通ってグラウンドに到着するのだけれども、体育の時間なんかでも、着替えからグラウンド集合に5分くらい有しそうな状況だという。それでも、現状ではグラウンドはそのままの状況なので、試合は行えるという状態だった。グラウンドそのものは、しっかりと整備されており、右翼と中堅の距離や右中間の膨らみのなさなどに対して目をつぶれば、都内の学校の練習環境としては、決して悪くはないということは言えようか。
さらに、改築工事が完全に終了すれば、グラウンドそのものももう少し広く確保出来そうな感じだということでもある。そういう意味では、日野の野球部としては今回の改築工事は、時間はかかりそうだということだけれども、長い目で見れば好材料ということになりそうだ。
最初の試合は、お互いの中では現状のベストに近いメンバーでの対決となった。日野は、嶋田雅之監督も期待が大きい左腕松本君だ。
「コロナの影響もあって、夏休みの間の練習は十分に出来ていたとは言い切れない状況でした。それで、ブロック予選の日程がいきなり9月の初日で、正直、調整しきれていないところもあったと思います。実は、ここへ来て非常にまとまってきていい仕上がりなんです」と言うが、その言葉通り、いい球筋のボールを投げていた。
それでも、いくらか単調になるところもあって、そこを捉えられたというところもあったが、これから冬のシーズンとなって基礎体力作りを含めて体幹などを強化をしていけば、間違いなく球威は増していきそうだ。日野の場合、ウエイトトレーニングメニューもしっかりとしており、そんな環境も含めて伸びしろは十分に期待できそうだ。
三塁手からリリーフした紅葉川・片桐君
紅葉川は、都大会に進出は果たしたものの、高橋勇士監督は、「柱になる投手がいないので、何人もが投げられるような状態で準備させている」という状況で、この試合では影山君が先発したが、2回に日野打線につかまってしまった。日野打線は、少しでも甘いと逃さず捉えてくる。それに、失策も絡んでしまうと大量失点になっていくことは否めない。結局、この回は打者13人で8連続得点となってしまった。代った片桐君も捉えて9点が入って超ビッグイニングとなった。この破壊力は、さすが「強打日野」と言っていいであろう。
日野は、3回にも4番廣岡君の右線二塁打などで2点を追加する。しかし、紅葉川も2番手として三塁からリリーフした片桐君が、ややトリッキーな投球で何となく交わしていっていた。力で抑えなくても、交わしていかれれば何とかしていくことは出来るということは、こうした試合での投球を経験しながら学んでいかれることになっていくのであろう。
それでも、日野打線は、やはり都内でも上位に入る破壊力があるので、得点力は圧倒的にある。特に、勢いづいてくると集中打が出るというところもあるのでそれをくい止めなければならない。
この日野の新チームは、コロナの影響もあってやや調整が遅れたところもあって、秋季大会の一次予選ではチームとしては未完成の状態だったというところもあったようだ。ただ、初戦で敗れた國學院久我山が結果的に東京都大会で優勝したことで、選手たちのモチベーションは上がってきたということはあるようだ。「ここ1カ月くらいから、チーム状態は非常によくなってきた」と、嶋田監督も感じているという。それだけに、この感触を大事にしていきながら、冬のトレーニングを経て、来季を迎えたいところである。
これだけ強い日野でも、来春は一次ブロック予選からの参加ということになる。それだけに、より一層、チームとしての底力を作っていかなくてはいけないということもテーマとなっている。
紅葉川としては、来春は東京都大会本大会の出場は既に決まっているので、課題となっている投手の柱を一冬かけてじっくり作っていきたいというところであろう。打線は、各打者強い打球も放っており、投手を軸としてしっかり守れる野球をしていかれるようになっていけば、大いに期待は出来そうだ。
2試合目では、多くの選手を起用していろいろ機会を与えていきたいという方針もあったので、試合そのものは途中、いくらか大味になっていったところもあった。だけど、最後9回に日野は4点リードされている中で、加藤洋章助監督から、「アウトにならないようにどうしていったらいいのか。アウトにならないように攻撃を続けていこう」と声をかけられて、選手たちはそれに応えるように、しぶとく食い下がって、4点を奪い返したしぶとさは見事だった。こういうところに、高校野球の大事な一つひとつの思いがあるのだろうなと言うところを感じさせてもらえた。
両チームが、来春からの新シーズンで、もう一回り成長した姿を見せてくれることを期待してやまない。
(記事:手束 仁)
佐々木千隼(日野→桜美林大→千葉ロッテ)から寄贈されたマシン
ネット裏に掲げられたモットー
日野・高山諄平君