試合レポート

二松学舎大附vs都立広尾

2021.07.26

ドラフト候補左腕・秋山正雲の独壇場。投げては13奪三振無失点&打っては貴重な先制3ラン

 二松学舎大附都立広尾の一戦は、二松学舎大附のエース・秋山正雲の独壇場とも言っていい試合だった。

 秋山の投球については、春季大会、6月の練習試合と見てきているが、進化の跡が見える。常時130キロ後半〜最速142キロの直球はクロス気味にくい込み、打ち難いコースにビシバシ決まるのだ。高めのストレートも、力のない浮いたボールではなく、回転数の高いストレートで、思わず振ってしまうほどの凄みがある。

 ドラフト候補に挙がる投手をチェックするために、地方大会や中継を見ると、140キロを超えるストレートを投げているのに、ガンガン打たれている投手が多くいる。そういう投手に共通するのは、ベルト付近に入って振り抜かれやすいコースに投げていること。力いっぱい投げようとして、打者の打ちやすい軌道に投げてしまっているのだ。

 
 秋山のストレートの軌道を見ていくと、ふっと浮くものではなく、対角線に決まるクロスファイヤーを実現できていた。

 さらにテンポもよく、味方に良いリズムを生むことを意識している。そして2回裏、駒沢球場のライトスタンドにある大会の横断幕直撃の3ランで主導権を握る。「打順は8番ですが、他の野手と比べると余裕が感じられました」と市原監督が説明するように、スイングも鋭く、隙を逃さない技術の高さも光った。

 秋山は回を重ねるごとに内容が良くなっていく。カーブ、スライダー系の変化球の制球力も高まり、6回表の場面では、右打者の膝下に「これは打てないでしょ…」と思わせる138キロのストレートで2ストライクにとった後にさらに低めの変化球で三振を奪った。終盤でも球威とコントロールは衰えず、次々と三振を奪っていく。

 前半は直球主体、後半は変化球の割合を増やしつつも切れのあるストレートをねじセルなどなど、投球のコンビネーションがしっかりと成り立っていた。腕を力強く振りながらも、コントロールも抜群で、なおかつテンポも良い。申し分ない投球内容だ。


 エースの成長に市原監督は目を細める。
「秋までとにかく全力で投げるというのが見えていましたが、ここにきて、力配分ができる投球ができるようになったと思います。またなかなか点を挙げられない苦しい状況でしたが、それでもしっかりと守ってくれるところにエースとしての頼もしさが出てきたと思います」

 また秋山もエースとしての自覚が感じられる。
「自分が崩れたら、チームが崩れてしまうので。力配分、気持ちのギアチェンジなどそうお言うのは工夫をしました」

 走者を背負った場面でも力を入れて腕を振るのではなく、気持ちを入れる。意味合いは似ているかもしれないが、なるべく力まずにベストストレートを投げる工夫が感じられた。

 8回を投げ、13奪三振、無失点。大きく評価を高める投球になったことは間違いない。

 対する都立広尾の・石黒和は最速140キロの速球を投げる右の好投手として注目されていたが、前評判通りの逸材だった。バランスの良い足上げから、滑らかな体重移動から投げ込む直球は常時130キロ〜133キロを計測し、そのストレートが膝下、コーナーギリギリに決まり、120キロのスライダーも手元で曲がる。強気に内角を攻めながらも、二松学舎大附打線はなかなか1本が出なかった。

 そんな苦しい状況だったが、6回裏、一死二、三塁から7番丸山の2点適時打、8回裏には丸山丈司の本塁打で6対0として、二死一、二塁から代打・日笠の中前適時打で7対0となり、二松学舎大附の8回コールド勝ちが決まった。 

 コールド負けとなったが、次のステージでも十分続けていける好投手で、大学以降で脚光を浴びる可能性を持った逸材ではないだろうか。

(取材=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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