試合レポート

浦和学院vs昌平

2021.05.04

壮絶な打ち合いの末、浦和学院が大逆転で関東へ

浦和学院vs昌平 | 高校野球ドットコム
三奈木 亜星(浦和学院)

 県営大宮球場の第一試合は優勝候補・浦和学院対Aシード・昌平という強力打線を誇る両者の一戦、昨夏の代替県大会準決勝以来の対決となる。もちろんメンバーも代わっているので、あまり参考にはならないが互いに意識する所もあるであろう。

 注目の先発だが、昌平は主戦の2年生川島新大が登板したのに対し、浦和学院はエース宮城誇南(2年)ではなく三奈木亜星(3年)が先発する。それにより浦和学院は8番・ライトに安達斗空(2年)が入る。それ以外のスタメンは両校とも前の試合から変更なく試合が始まる。

 試合は初回から激しく動く。

 昌平は初回、今大会初先発でややボールが高い浦和学院・三奈木の立ち上がりを攻めたて、一死から2番・福地基(3年)が右中間へ二塁打を放ち出塁すると、
「反応で打てた。体勢を崩されながらも自分の持ち味である大きく弧を描くように拾うバッティングができた」
と主砲・吉野創士(3年)が外角のスライダーをすくい上げレフトスタンドへ高校通算48号となる先制2ラン本塁打を放つ。これが号砲となり、4番・古賀智己(3年)がセンター前ヒットを放ち再度チャンスメイクすると、二死後6番・川田悠貴(3年)もライト前ヒットを放ち二死一、二塁とする。続く小林飛雄馬(2年)がセンター前タイムリーを放ち3点目、さらに8番・山村羅偉(3年)が四球を選び二死満塁とチャンスを広げると、続く川島が走者一掃となるセンター越えのタイムリー二塁打を放つ。昌平打線が結局、一挙6点を奪うビックイニングを作る。

 このあたり、昌平サイドとしても三奈木の先発は想定外であったようだが、先日の秀明英光戦でも書いたとおり昌平打線はアベレージ130km後半ほどのストレートであれば打てるということを改めて実証してみせた結果となった。

 だが、浦和学院も黙ってはいない。その裏、昌平・川島の立ち上がりを攻め、2番・八谷晟歩(2年)が四球を選び出塁すると、二死後、こちらも主砲・吉田瑞樹(3年)がストレートを捉えレフトスタンドへ2ランを放ち、すぐに反撃を開始する。

 浦和学院・三奈木は2回以降立ち直り徐々にボールが低めへと制球ができるようになる。それに伴い、打線もジワリジワリと点差を詰め始める。

 2回裏、この回先頭の安達がライト線へ2塁打を放ち出塁すると、続く金田優太(2年)が犠飛を放ち一死三塁とする。ここで吉田匠吾(3年)が一塁線を破るタイムリー二塁打を放ち6対3とする。

 浦和学院は4回裏にも一死から9番・金田がショートゴロエラーで出塁すると、二死後2番・八谷が四球を選び二死一、二塁とする。ここで続く松嶋晃希(3年)がライト前タイムリーを放ち6対4と2点差まで追い上げる。

 浦和学院はここから継投策に出る。三奈木を4回で諦め、5回表からショートの吉田匠をマウンドへ送る。これは昨秋も見られた継投であるが、この日の吉田匠は6回表には3者連続三振を奪うなど制球が良く流れを引き寄せる。


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3ランを放った川田 悠貴(昌平)

 一方の昌平も先発川島を5回で諦め、6回から左腕の川久保匠(2年)をマウンドへ送る。だがこの日は川久保が誤算であった。

 浦和学院は6回裏、この回先頭の代打・石田創大郎(3年)が四球を選び出塁すると、続く金田がきっちりと送り一死二塁とする。ここで1番・吉田匠がライト線へタイムリー二塁打を放ち1点差とすると、二死後、3番・松嶋がセンター前へポトリと落ちるタイムリーを放ちついに6対6の同点に追いつく。

 そして7回から満を持してエース宮城がマウンドへ上がる。だが、宮城対策を立てていた昌平は、ここから再度浦和学院を突き放しにかかる。

 昌平は7回表、浦和学院・宮城の代わり端を攻め立て、この回先頭の福地がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く吉野も
「変化球待ちの状態でのインコース打ち。練習してきたことが出せた」
とインコースのストレートをうまくバットを巻き込みながらレフト前へ運び無死一、二塁とする。4番・古賀の送りバントは失敗に終わるなど後続がチャンスを広げられず二死一、二塁とチャンスは萎んだかに思われた。だが、6番・川田が追い込まれながら変化球を捉えると、打球はレフトスタンドへ値千金となる勝ち越し3ランとなり3点差をつける。

 おそらく疲れもあったであろう。エース宮城は今大会これまで地区予選を含め登板した5試合33イニングで被安打9、与四死球3、奪三振39、自責点0と対戦相手を圧倒して来たが、この本塁打により今大会6試合目にして初めて自責点が付く形となった。

 それでも浦和学院は、6回途中から登板した3番手・エースの田村廉(3年)に対し、すぐに反撃を開始する。7回裏、この回先頭の藤井一輝(3年)、続く高松陸(3年)の連打などで一死二、三塁とするが、後続が倒れ無得点に終わると、8回裏にも一死から3番・松嶋がセンター前ヒットを放ち出塁するが、続く吉田瑞の所でキャッチャーがファンブルする間に果敢に2塁を狙うが封殺される。結局吉田瑞が右中間へ二塁打を放ち再度チャンスメイクすると、続く三奈木も四球を選び二死一、二塁とするが後続が倒れ無得点に終わるなどややチグハグな攻めになる。

 3点差で最終回を迎え、打順は7番からといよいよ追い込まれた浦和学院だが、ここから代打攻勢を仕掛け猛反撃を見せる。

 一死から、代打・尾崎亘(3年)がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く代打・鍋倉和弘(2年)も四球を選び一死一、二塁とする。さらに1番・吉田匠も死球で出塁し一死満塁とする。ここで3番目の代打・高山維月(2年)がセンター前へ2点タイムリーを放ち1点差とすると、続く松嶋もライト線へタイムリー二塁打を放ち9対9とし、またしても同点に追いつき、試合は延長戦へと進む。


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宮城 誇南(浦和学院)

 こうなると、流れは浦和学院である。

 10回裏、浦和学院はやや疲れの見える昌平・田村に対し、一死から7番・高松、8番・尾崎、代打・観音啓太(3年)が3連続四球を選び一死満塁とすると、最後は1番・吉田匠がライトへポトリと落ちるタイムリーを放ち10対9サヨナラで浦和学院が昌平を下し関東大会への切符を手にした。

 まず昌平だが、6点のリードを逆転されての敗戦は痛恨であろう。しかも、吉野がホームランを放った試合で初黒星を喫した。昨秋主戦として優勝に貢献した右サイド吉川優一朗(2年)が不調でこの日控えのメンバーからも外れていたが、彼の事を警戒していた高校も多かっただけに、彼を控えメンバーに入れて置くことも一つの手だったか。いずれにせよ、打線は宮城からも本塁打を放つなど、大会を通じ強打の印象を植え付ける事には成功した。それだけに課題は投手陣である。黒坂監督も「無駄な塁を与え過ぎた結果」と試合後悔やんだが、この日は投手陣が12四死球と乱れ、それが失点に絡んだだけに夏へ向け投手陣の整備は必須だ。

 一方の浦和学院だが、初回6点のビハインド、最終回を迎え3点のビハインドと2度のピンチを迎えても決して諦めず、最後は逆転して見せた。この勝負強さはチームの伝統であるが、それにしても物凄い粘り腰である。
「まぐれですね。監督生活30年の中でもなかなかないゲームで選手に感謝したいです。三奈木は4月に打球を受けた影響で投げ込みが不足しており、ある程度の失点は想定していたんですが、代打陣も含め打撃陣が良くカバーして追いついてくれた。コロナでチーム作りが遅れており、急ピッチで仕上げてきたので明日の決勝も含めて関東大会での経験を夏につなげていきたい」
と森監督もよもやの逆転勝利に試合後ハイテンションであった。チームは一戦一戦強くなっている印象を受ける。浦和学院の最終回での逆転勝利というと、小島和哉投手を擁し後にセンバツで全国優勝した代が、2012年秋ベスト8の上尾戦での最終回に4点差を逆転サヨナラで試合を物にしたことがある。それ以来のインパクトを残す今日の勝利であった。決勝戦では花咲徳栄とのライバル対決を残すが、総力戦で物にして勢いに乗っているだけに好ゲームを期待したい。

(取材=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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