昌平vs秀明英光
守乱に乗じAシード昌平が秀明英光・岩井を攻略
昌平先発の川島新大
県営大宮球場の第一試合はプロ注目主砲の吉野創士(3年)を擁するAシード・昌平対MAX142km右腕・岩井裕貴(3年・越谷ボーイズ)を擁する秀明英光との一戦である。昌平打線が秀明英光・岩井をどう攻略するかがこの試合のテーマとなる。
まずスタメンだが、昌平は昨秋から多少オーダーが変更になっている。5番を打っていた福地基(3年)が2番、8番を打っていた後藤壮太(3年)が5番に上がり、小林飛雄馬(2年)と川田悠貴(3年)が入れ替わっている。さらにスタメンは昨秋地区の初戦で鷲宮戦以来となる山村羅偉(3年)が今大会は8番に座る。一方の秀明英光は今大会元キャッチャーの岡田嘉斗(3年)がレフトへコンバートされ、本来ファーストで考えていた1年生の山﨑寛悠がマスクを被る。ファーストには辻本拓馬(3年)が入り試合へ臨む。
先発は秀明英光がエースの岩井、一方の昌平は2年生右腕・川島新大(2年)が先発し試合が始まる。
昌平は先頭の寺山太陽(3年)が初球を捉えセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く福地がきっちりと送り一死二塁とする。3番・吉野はレフトフライに倒れたのだが、レフトが目測を誤り(記録は二塁打)一死二、三塁とチャンスを広げると、二死後5番・後藤の大きなセンターフライに対しセンターがグラブに当てながら落球するなど昌平がラッキーな形で2点を先制する。
一方の秀明英光にとってはいきなりコンバートによる守備の綻びが出てしまった形だ。
昌平は4回裏にも、この回先頭の後藤が深めのセンターの前へポトリと落ちるヒットを放ち出塁すると、続く小林がきっちりと送り一死二塁とする。ここで7番・川田がファースト強襲のタイムリーを放ち1点を追加すると、ライトがジャックルする間に二塁へと進む。続く山村がレフト前へタイムリーを放つとさらにレフトが後逸する間に三塁へと進む(記録は三塁打)。ここで9番・川島もファースト強襲のタイムリーを放ち4対0、さらに続く寺山がレフト前ヒットを放ち二死一、二塁とすると、さらにキャッチャーのファンブルでそれぞれ進塁し、キャッチャーの三塁への悪送球で二走・川島が本塁へ生還し6点差をつける。2番・福地にもライト前タイムリーが飛び出すなど、結局昌平はこの回一挙5点を奪うビックイニングを作りコールドペースへと持ち込む。
秀明英光の反撃は6回表であった。
秀明英光は二死から9番・伊藤翔流(3年)が右中間へ二塁打を放ち出塁すると、続く伊藤翔(3年)がセンター前タイムリーを放ち1点を返す。
昌平ベンチは6回で先発・川島を諦め継投へと入る。だが、この日は昨秋チームを引っ張っていた2番手・右サイド吉川優一朗(2年)がピリッとしない。
7回表、1点を返し俄然勢いの出てきた秀明英光に対し、7回表一死から4番・岡田に四球を与えると、続く大賀光雲(3年)にも四球を与え一死一、二塁とされる。ここで6番・山﨑にライト前ヒットを浴び一死満塁と傷口を広げると、続く寺島大貴(3年)にも押し出しの四球を与え、早くもマウンドを3番手・左腕の川久保匠(2年)に譲る。川久保も代わり端、8番・高橋建丈(2年)の所でワイルドピッチを放り7対3とされるが後続は打ち取り事なきを得る。
追い上げられた昌平はその裏、すぐに突き放しにかかる。
7回裏一死から後藤がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く小林の所で昌平ベンチはエンドランを仕掛ける。小林はセカンド正面のゴロを放つが、これをセカンドが後逸し一死一、三塁とチャンスが広がる。二死後、一走・小林がディレードスチールを決め二死二、三塁とすると、8番・山村がレフト越えの2点タイムリー三塁打を放ち試合の大勢が決する。
投げては、昌平の3番手・川久保がその後秀明英光打線を封じる。結局昌平が9対3で秀明英光を下しベスト8へ駒を進めた。
秀明英光先発の岩井裕貴
まずは秀明英光だが、エース岩井は強打の昌平打線相手に自責点は4とまずまずの出来であり、特に昌平・吉野などはうまく打ち取っていた。だが、如何せんこの日は守備が5失策と乱れ、この他にも見えないミスが多く岩井の足を引っ張ってしまった。これまでは何とか誤魔化しながら勝ち進んできたが、昌平が相手となると話は別だ。大会中のコンバートにより急造の選手で臨んだ今大会であったが、その不安がこの日一気に噴出してしまった形だ。これには秋山監督も
「このチームは嫌な所に目を向けない傾向がある。大黒柱の岩田がいるだけに夏までに攻守にそこを意識させなければ」
と夏までに攻守の底上げを宣言した。
一方の昌平だが、この日は先発の川島がテンポの良い投球を見せ攻撃へのリズムを作った。打線もこの日は相手の拙い守備に助けられた印象もあるが、2試合連続二けた安打と振れている。この日は吉野、古賀智己(3年)の3、4番がややブレーキ気味であったが、旧チームの千田を思わせるリードオフマン寺山を筆頭に彼らの前後を打つ福地や後藤などが好調を維持している。打線は昨秋の経験がありどこからでも長打が出る。
黒坂監督も試合後
「岩井君はインステップ気味で投げてくるので右打者は真ん中から外の球反対方向に、左打者はチェンジアップもあるので引っ張り込まずに打つということが今日は徹底できたかなと。130km後半のボールであればうちの打線はそこそこ打てるので」
と自信をのぞかせた。この日も難なく秀明英光・岩井を攻略して見せた。問題は昨秋主戦としてチームを引っ張った吉川の出来か。今後の上位との対戦で彼が必要になる場面は必ず来る。それだけに」
「吉川は投げてみないとわからない投手ですから。もう一段階上のレベルを目指すには彼にはもう一冬必要かな」」
と黒坂監督は吉川に対し、更なる奮起を促すことも忘れなかった。
(取材=南 英博)