試合レポート

広島新庄vs盈進

2019.10.06

延長10回に11点!広島新庄が決勝戦へ!

広島新庄vs盈進 | 高校野球ドットコム
盈進五番、横山が本塁打を放つ

 広島県内でもかつて明確な格差があった。甲子園に行くのは沿岸部、つまるところ南部に限られるという格差である。実際野球の里として知られる三次市出身で、つい先日に引退表明をした広島東洋カープの永川勝浩選手も甲子園には出場していない。古豪として知られる広島商、広陵はどちらも広島市内、夏に強い如水館は三原市。おととし去年と選抜に連続出場した市立呉は言うまでもなく呉市だ。海岸沿いの県南部に強豪が集中しており、北部はいつまでも甲子園に出られないのではないか。そんな懸念に待ったをかけ、一気に解決してしまったのが広島新庄だ。毎年のように生み出される名投手。堅守の安定感から安心したように奔放な打撃を見せる魅力的な選手たち。堀瑞樹田口麗斗などプロに羽ばたいた選手もいる。名将迫田守昭監督が就任して以来、広島新庄は県北から虎視眈々と甲子園を狙う強豪になった。それは今年も変わらない。

 準決勝第二試合は広陵敗退のざわめきがまだ残る中、午後一時四十五分に開始された。先攻である広島新庄は、対戦相手である盈進のサウスポー・柴田祐貴(1年)の変化球の前に三者凡退。盈進は初回、先頭の大久保航希(1年)が三塁打を放つと、それに動揺した広島新庄先発の秋山恭平(1年)が二者連続で四死球をだし、いきなりの無死満塁のピンチを背負い込む。最少失点を覚悟しての中間守備を取るが、それをあざ笑うライナーを盈進四番の山城大空斗(1年)が放ち、新庄は初回からビハインド。しかし、それだけで済むのならよかった。直後の打席には五番の横山太一(2年)。ここまで一死も奪えていない秋山は明らかに気を急いていた。それがわずかにリリースを狂わせたのか、甘い球を放ってしまう。横山がそれを強振すると、放物線を描いて左翼席に。三回戦で広島国泰寺高打線を五回無失点に抑えた左腕はあっという間に五点を献上してしまった。

 反撃を狙う広島新庄打線はスタメン全員が左打者。そして相手の先発はサウスポーの柴田。左投手特有の外角に逃げる大きなカーブに腰が引け、あるいはひっかけたりしてなかなか突破口を見いだせない。それでも四回五回と一点ずつを返し、2-5で六回表を迎えた。左打者を並べ、その全員が俊足。見えない重圧に披露していたのか、柴田は先頭の大可尭明(1年)を内野安打で出すと、二番の瀬尾秀太(1年)に甘い球を右翼線上に運ばれて無死二三塁で三番の下志音(2年)を迎える。大きなカーブが持ち味とはいえ、柴田の球速は120キロに満たない。のけぞらせようと内角に投げるもむなしい努力だった。またしても甘く入った直球を狙い撃たれ一点を献上。二死を何とか取るものの、六番の梶岡に適時打を打たれ、同点に追いつかれてしまう。

 試合は一年の秋山の後を継いだ二年生左腕の秋田駿樹(2年)と柴田の投げ合いになるが、先に柴田が根を上げ、六回にワンポイントで松井大輝(1年)、その後を継いだ渡瀬藍司(2年)がマウンドに。七回表、二死二塁で二番の瀬尾が打ち上げたドライブのかかった打球を中堅手大久保と右翼手山城がまさかのお見合い。譲り合った末にどちらのグラブも打球に当たらない最悪の結果で盈進はついに一点差をつけられる。一方の秋田はブレーキのかかった変化球を駆使して盈進打線に仕事をさせない。結局九回まで試合は動かず、一点差のまま盈進が九回裏の攻撃へと入るが秋田の前にあっさりと二死。このまま終わるものかと思われた。

 が、二死からエラーで出塁するとそこから二連打を重ねてあっさりと同点までもっていく。これで試合が分からなくなった。6-6のまま延長へ向かい、有利なはずの後攻を取っている盈進がジャイアントキリングを果たすかもしれない。そこまではそんな希望もあった。

 延長に入ると広島新庄はまるで別のチームになったかのように躍動した。こちらも二死を取った後のエラーからだが、規模がまるで違った。三塁打二本を含む長短打九本を集中させ一気に11得点を入れ、決勝戦進出を決めた。両チームとも活発な打線を見せた試合だが、満塁弾によるビッグイニングの盈進と、マシンガンのような連打で大量得点を取る広島新庄、その二つの確実性の違いをまざまざと見せつけられた。そんな試合であった。

(取材・写真=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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