都立城東vs都立足立新田
延長10回押し出しサヨナラで都立城東、師弟対決を制する
4番・三好秀登(都立城東)
前日、都立文京が敗れたため、都立勢はこの両校だけになった。都立足立新田の有馬信夫監督は、都立城東監督時代の1999年の夏、東東京では都立勢初の甲子園出場を果たした。その年都立城東に入学したのが、現在都立城東の監督である内田稔であった。内田は高校1年生と2年生の時、有馬監督の厳しい指導を受けており、この対戦は師弟対決だ。内田が3年生時に有馬は都立保谷に異動しているが、この年に、後任の梨本浩司(現文京監督)の下で、甲子園出場を果たしている。
注目の師弟対決は、延長戦に突入する接戦にはなったものの、失策も多く、試合後、内田監督が「恥ずかしい試合をしてしまいました」と語るように、拙戦になってしまった。
試合は1回表都立城東の先発、左腕の兼松千春から都立足立新田打線が5安打を浴びせ、都立足立新田が2点を先制した。
その裏都立城東は、都立足立新田の先発、エースの瀧口岳に対し、安打2本に足を絡ませ1点を返した後、四球もあって続く二死一、三塁の場面で、6番・陶直史は投手後方に高く上がるフライを上げる。雲一つない青空から落ちる飛球を誰も捕球できず、記録上は内野安打となり、1人生還して都立城東が同点に追いついた。
その後は、両チーム走者を出しながらも得点はできない。3回裏には都立城東が、5番・設楽悠樹の右前安打で、二塁打で出塁していた4番の三好秀登が一挙に本塁を突いたが、これは都立足立新田の中継プレーによりアウトになった。
それでも都立城東は、4回裏に下位打線が安打3本を連ね一死満塁としたが、1番・兼松の二ゴロで三塁走者は本塁でアウト。続く2番・原川雄仁の四球で押し出しになり、1点を勝ち越した。
5回裏都立城東は四球2個と遊失で一死満塁としたところで、都立足立新田は投手を瀧口から1年生の小泉拓也に交代する。交代直後、都立城東は8番・木村海樹の中前安打で2人が還り、都立城東が3点をリードした。
しかし都立城東は、このリードでも、落ち着いた試合運びができない。投手が3回から同じ左腕の原川に代わっている。5回表も都立足立新田は、6番・藤田京介の二塁打などで二死満塁となったが、ここは無得点。
けれども6回表に、安打と死球により無死一、二塁となったところで左翼手になっていた先発の兼松が再びマウンドへ。4番・瀧口は二ゴロで併殺かと思いきや、二塁への送球が暴投になり、走者2人が還り1点差。続く5番・穐山尊のライトオーバーの三塁打で都立足立新田は同点に追いつく。さらに7番・村井一秀の右犠飛で都立足立新田が1点を勝ち越した。
都立城東は走者を出しながら得点を奪えず、9回裏も二死三塁と追い込まれた。8番・木村は遊ゴロで試合終了と思われたが、都立足立新田の村井の失策により、都立城東が土壇場で追いつき、試合は延長戦に突入した。
10回表都立足立新田は、死球と安打2本で無死満塁としたが再びマウンドに上がった原川が、穐山を遊飛、藤田京を三ゴロ併殺に抑え、得点はなし。
その裏都立城東は安打2本と遊失で一死満塁とし、設楽が四球を選び押し出し。2時間50分に及ぶ試合は、都立城東がサヨナラ勝ちした。
教え子に敗れた形になった都立足立新田の有馬監督は、「あいつ俺のこと、恩師と思っていないよ」と、冗談ぽく言ったうえで、チームとしては故障者が出たうえで、3回戦まで進出できたことは、「上出来です」と語った。あとは。投手と内野手をどう育成し、やり繰りしていくか、ベテラン監督の手腕が注目される。
一方、恩師であり、都立校野球部の指導者の先輩として有馬監督は、都立城東の内田監督について、「だいぶ落ち着いてきた」と評価したうえで、都立城東の戦いぶりについては、「あれではいけない」と語った。
その点は内田監督も思いは同じで、「ミスが多く、申し訳ない試合をしてしまいました」と語った。師弟対決については、「楽しみではありましたが、やるのは生徒なので」と語る。
都立校で唯一準々決勝に進んだ都立城東の次の相手は国士舘。この日のような試合をしていては一方的な試合になる可能性もある。ただそこはお互いに高校生であり、未熟さもある新チームだ。ちょっとしたことで、展開が変わることもある。結果を恐れず、思い切った戦いをしてほしい。