試合レポート

智辯和歌山vs創成館

2018.04.02

最後まで白熱の展開!智辯和歌山vs創成館

智辯和歌山vs創成館 | 高校野球ドットコム
黒川 史陽(智辯和歌山)※写真提供 共同通信社

 衝撃の試合となった。思い出すのは今から12年前の2006年夏の甲子園大会、智辯和歌山帝京戦。最終回に帝京が8点取って12対8とし、その裏に智辯和歌山が5点取って13対12のスコアでサヨナラ勝ちした。〝激戦″というと高校野球ファンならこの試合が思い出されると思うが、この智辯和歌山創成館はそれに匹敵する激戦になった。

 試合は常に創成館が押す形で進んだ。1回表に打者9人を送る猛攻で3点奪い、3回には1点加点し、なおも2死一塁の場面でチャンスが続く。ここで智辯和歌山ベンチは先発の小堀颯(3年)を降ろし2番手に池田陽佑(2年)を送る。智辯和歌山には3回戦の国学院栃木戦で完投勝ちした平田龍輝(3年)という切り札がいるが、2日後の準決勝を睨みながらどのタイミングで平田をマウンドに送るか、名将・高嶋仁監督にしても難しかったと思う。

 2番手の池田は4回に内野手の走塁妨害で1点、5回には自らの野選も絡んで2点失い、スコアは創成館の7対2となった。5回裏に智辯和歌山が打者9人を送る猛攻で6対7の1点差に迫り、6回から智辯和歌山ベンチは平田を3番手としてマウンドに送った。これで試合は少し落ち着くかと思ったが、火の付いた両校打線は収まらない。

 7回表、創成館は1番峯圭汰(3年)が内野安打で出塁すると2番藤優璃(3年)が内外野の間に落ちる左前打で続き、3番打者の一塁ゴロで二、三塁とし、2死後、5番野口恭佑(3年)が140キロストレートをセンター前に運び2者を迎え入れる。その裏、智辯和歌山は先頭の冨田泰生(3年)がセンター前ヒットで出塁、6、7番が凡退して2死二塁となるが、8番東妻純平(2年)が2ボールからの3球目をレフト前に運んで7対9と迫る。12年前の大逆転劇があるだけに創成館ベンチは背後に迫る気配を常に受けていたと思う。

 9回裏、智辯和歌山は2死満塁のチャンスに9番平田が3番手、川原陸(3年)の135キロのストレートをレフト前に運んで待望の2点を入れて同点、試合の行方はいよいよわからなくなった。

 この展開を見て、私は智辯和歌山の勝利を予想した。「野球は技術の優劣が勝敗を決する」というのが私の哲学だが、最後の場面で重要なファクターになるのが「精神」である。智辯和歌山の高嶋仁という監督には選手を奮い立たせる雰囲気がある。何度か取材で話を伺ったとき、私も高嶋氏の話に引き込まれていく不思議な感覚を味わったことがある。

 10回表、1死後に創成館が5番野口のヒットで出塁、二盗と捕手の悪送球で三進し、6番鳥飼悠斗(3年)が外野フライを放って再び1点をリードする。その裏、智辯和歌山は2番西川晋太郎(2年)が死球で出塁し、2死後、冨田が四球で歩き一、二塁。ここで2回にソロホームランを放っている6番黒川史陽(2年)がレフト方向にフライを放つと、打球は少し前から吹いていたライト方向からの浜風に乗ってレフトの頭を越えると2人の走者が生還、奇跡の大逆転劇が再現された。

 

(文=小関 順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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