三重vs乙訓
三重、一点差の接戦を制しセンバツ8強へ!
先発で好投をした福田 桃也(三重)※写真提供 共同通信社
花巻東対彦根東戦同様、この試合でも継投策が見られた。3回裏、先発の富山太樹が2番浦口輝(3年)に勝ち越しのホームランを打たれると、乙訓ベンチは2番手に、川畑大地を送った。初戦のおかやま山陽戦では2対2に追いついた5回に川畑を送っているので、1対2になった3回途中からの川畑投入は予定外の早さだったかもしれない。
三重は1回裏、浦口が内野安打で出塁したあと盗塁で二塁に進み、4番大川翔也(3年)のセンター前ヒットで生還、早々と先制点を挙げた。3回裏には乙訓が反撃に転じる。1番大上翔也(3年)の内野安打、2番大西陽大(3年)のバント安打のあと3番打者がバントで送り二、三塁とし、4番宮田康弘(3年)が投手ゴロに倒れて2死となるが、三塁走者の離塁を見て焦った一塁手がホームに悪送球して1対1となる。
同点にされた三重はすぐ反撃に転じる。1番梶田蓮(3年)がレフト前ヒットで出塁すると浦口との間で2回ヒットエンドランを敢行し、いずれもファールとなる。9球目に梶田が二盗を企図するのだが薪谷宗樹(3年)の肩が勝ってアウトとなり、その直後、無走者となった場面で浦口のホームランが飛び出す。点を取り合うもつれた展開になればこのときの二盗失敗が悔やまれそうだが、試合は2対1のまま膠着状態に陥った。
乙訓の2番手、川畑のピッチングから紹介しよう。3回途中からマウンドに上り、16人の打者と対して打たれたヒットはゼロ。わずかに7回に四球を与えたが、その走者も併殺で殺しているので残塁はゼロ。ストレートの最速が144キロを計測したおかやま山陽戦にくらべこの日は142キロにとどまった。それでもストレートが高めによく伸び、斜め変化のスライダーもキレて、3回途中まで6安打をつらねた三重打線を沈黙させた。
広いステップが示すように下半身が先行して上半身があとをついていくピッチングの流れがいいのに対して、ヒジを十分使い切れていない上半身の使い方に不安がある。前で「ストレートが高めによく伸び」と書いたのは、このアーム式に近いヒジの使い方を暗示したかったからだ。このフォームは高低だけでなく内外角のコントロールも安定しないのが普通だが、川畑は四球1が示すように予想外にコントロールが安定している(おかやま山陽戦も四球1)。フォームの見直しは夏に向けて徐々に、くらいの感覚で進めていただきたい。
三重の先発、福田はサイドスローから120キロ台のストレートと逆方向に変化するスライダーとシンカーを操る技巧派だ。サイドスローとかアンダースローは前肩が早く開くのが普通だが、福田は上体が横振りでなく縦に振れるので早い開きがない。球が遅くてもボールの出所が見えづらく、さらに厳しく内角を攻める攻撃的精神があれば打者を抑えられるということを福田はよく知っている。
(文=小関 順二)