多摩大聖ヶ丘vs実践学園
夏は守乱から2回戦コールド負けの多摩大聖ヶ丘。秋は堅守で2試合連続完封勝利!
完封勝利の藤森(多摩大聖ヶ丘)
夏2回戦負け。しかも7回コールド負けの多摩大聖ヶ丘が夏ベスト16の実践学園を破った。しかも日大桜丘、実践学園と近年でも勝ち進み、打力があるチームを完封勝ちしての成果だ。
一つ特徴を挙げると、多摩大聖ヶ丘は守備が堅かった。ポジショニング、基本的な打球処理といい、しっかりと鍛えられていた。多摩大聖ヶ丘を率いる本村哲郎監督は、「夏では5失策。それが負けにつながりました。彼らにはあの負けは絶対に忘れないようにしよう」と選手たちに言い聞かせ、球場を借りて、それぞれのポジションで守備練習をするなど守備を磨いてきた。
そしてエース・藤森太一は球速は120キロ~125キロ前後と決して速くない。だが、テークバックが非常に小さく、そこからピュッと振り出す感覚でボールが来るので、打ちにくい。スライダーも低めに決まり、打たせてとる投球を実現できていた。藤森に、なぜこのフォームになったのかを聞くと、「小学校の時、自分はクイックが苦手で、どうにかしようと思っていたら、あのフォームになって、それが染みついて今に至ってます」と説明してくれた。小さい動きでありながら、手元でグッとくるボールがあるので、想像以上に打ちにくい。長打力のある打者が多い実践学園の各打者が打ちあぐむ姿があった。
一方、実践学園の山口了汰もだいぶ成長が見えていた。夏よりも、沈み込みが深くなり、体重移動の送りもよくなり、打者よりでボールを離すことができるようになったことで、手元で伸びるストレートを投げることができていた。常時120キロ後半~133キロと夏と比べるとアベレージが2,3キロ速くなっており、だいぶ強いボールを投げることができていた。さらに120キロを超えるカットボール、115キロ前後のスライダーの切れもよく、本村監督は「これは打てないなと思いました」といえば、藤森は、「本当に良い投手で、負けられない気持ちが強くなった」と気合を込めた。
試合は5回まで0対0で折り返し、6回表、多摩大聖ヶ丘は二死一、三塁のチャンスから5番田中 裕貴が甘く入ったスライダーを逃さず、レフト前タイムリーで1点を先制。この場面について田中は「本当に良い投手でしたが、一打席目にボールを見て、絶対に打てない投手ではないと思っていました。あの場面はとにかく打つこと。良いイメージをして、打席に立つことを心がけました。それが良かったと思います」と振り返った。8回表にもインターフェアで1点を追加すると、6番森幹太の犠飛で1点を追加し、3対0とリードする。
そして藤森、田中のバッテリーで実践学園を6安打完封。日大桜丘戦に続き、連続完封で都大会出場を決めた。田中は「いつも通り、あいつ(田中)の持ち味を出すことができたと思います」とさらりというが、好リードの裏には夏から感性が鋭くなったことに影響している。大阪桐蔭の正捕手・福井 章吾が本塁付近に落ちている落ち葉、ごみを拾って、感性を磨いている話を聞いて、試したところ。
「夏休みから続けてみたんですけど、本当にそうなんだなと驚きまして、自分でも感性が鋭くなったかなと思います」と効果を実感している様子。
本村監督は「うちはいろいろな戦い方ができるチームではないので、とにかく目の前のボールを全力で追う、全力疾走を怠らずやることがうちのスタイルですので、都大会でもそれは引き続き続けていきたい」と本大会へ向けての意気込みを語った。
夏は3年生の最後の大会であるが、経験した1、2年生はそれを秋に生かす機会がある。それが下級生から夏を経験できる強みだ。多摩大聖ヶ丘ナインは夏の負けをしっかりと秋の大会につなげている。
(文=河嶋宗一)
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