試合レポート

東海大菅生vs高岡商

2017.08.14

「未完の大器」2年生左腕・山田龍聖の今後に期待

東海大菅生vs高岡商 | 高校野球ドットコム

高岡商(富山)vs東海大菅生(西東京)

 この試合で最も見たかったのはストレートが最速148キロを計測したという高岡商の2年生左腕、山田 龍聖だったが、高岡商の先発は山田でなく同じ左腕の土合 伸之輔(3年)。富山大会では土合が4試合、山田が3試合に登板しているのでどこかで登板するだろうと思っていたが、少しがっかりした。

 いきなり無死二塁にされた土合だが、いい出来だった。ストレートの最速は私が確認した限りでは135キロでけっして速くはない。出来がよかったのは技巧の部分だ。まず注目したのはボール球で入ることが多かったこと。7回限りで降板するまで27人の打者に対し、1球目がボール球だったのが15回。強力な東海大菅生打線の好球必打の気持ちを殺ぐ効果は十分あったと思う。

 そしてもう1つの特徴は執拗な内角攻め。右左に関係なく、打者の内角をストレートで厳しく突いて、主要武器のスライダー、カーブ、チェンジアップをより効果的に使い回すことができた。高めのストレートを振らせることも多く、考えられるありとあらゆることをやり尽くして強力打線を封じる、そんな思いに溢れていた。この頃には山田を見たいという思いが試合前より小さくなっていた。

 先制したのは東海大菅生。2回表、先頭打者の6番佐藤 弘教(3年)が4球目の117キロを捉え、レフトスタンドに放り込んだ。この時点では土谷の技巧に注目していなかったので、これで山田の登板が早まるぞと思っていた。それが3回から5回まで土谷は1安打に抑え、ここで私は土谷の投球に見入ることになった。

 東海大菅生の先発、松本 健吾(3年)はあまり調子がよくなかった。左肩上りの投球フォームはリリースでボールを押さえ込めればボールに十分な角度が生まれ追い風になるが、この日の松本は押さえ込め切れずボールが高めに抜けることが多かった。2回裏は二死後、8、9番打者に連続四球を与え、9番谷内 遥紀(3年)にセンター前に運ばれ同点にされた。それでもこのイニング以外は1点も与えていないので、西東京大会で早稲田実を2失点完投に抑えた力は本物である。ストレートは最速142キロを計測、変化球は斜め変化のスライダーにフォークボールのキレがよく、ストレートの高低のばらつきを十分に補っていた。

 1対1のまま膠着していた試合が動いたのは6回表だ。東海大菅生は先頭の2番松井 惇(3年)が右中間に三塁打を放つと、3番小玉 佳吾(3年)が犠牲フライを打って2対1と勝ち越した。7回表には先制ホームランを放っている佐藤がライト前に運んで出塁、二死後に9番松本がライト前にヒットを打って3対1と差を広げた。

 私が見たかった山田が登板したのは8回表からだ。182センチ、78キロの体格から繰り出すストレートは見応えがあったが、山田を最も適切に表現すれば〝未完の大器″。とくに投球フォームがよくなかった。

 低い体勢のテークバックまでの流れが、投げにいくとき上体がスッと立ってしまう。ボールに角度をつけたいとかそういう理由だと思うが、高低のコントロールが乱れる一因になっているのはまことに惜しい。8回には1点を失い、9回には7失点のほとんどの原因を作って降板。終わってみれば東海大菅生の強さばかり印象に残った試合だった。

(文=小関 順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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