横浜vs慶應義塾
横浜が最重量打線で慶応義塾投手陣を攻略!3年ぶりの甲子園出場へ!
決勝戦は前日の7月30日から始まっていた。決勝戦のため、ファンが徹夜で並んでいた。そして早朝になると、[stadium]横浜スタジアム[/stadium]周辺の公園は、人でいっぱいになっていた。午後1時試合開始なのに、チケット販売・開門が9時半。1時間後の10時半には、内野席がほぼ埋まってしまうほどの客入りになった。多くの決勝戦を見ていてもこれほど入ることもそうはない。改めて神奈川の野球人気の高さを実感させたが、それにしても神奈川というくくりで見ても、かなりの人入りだ。
この大観衆の前に横浜、慶応義塾の選手たちは力の限り戦い抜いた。
13時開始となった決勝戦。先制打を打ったのは横浜の3番増田珠だった。甘く入ったスライダーを豪快に振り抜いた増田はレフトスタンドへ飛び込む2ラン本塁打で先制する。まず試合の主導権を握った横浜。
この2点のあと、慶応義塾の森田晃介が、130キロ前半の直球、スライダー、カーブ、縦系の変化球を織り交ぜ、2回~4回まで無失点に抑えていたが、5回表、再び増田が本日2本目となる2ラン本塁打を放ち、2点を追加する。
増田は春先から故障に苦しんでいたが、夏前に復帰。シートノックの強肩、外野守備の守備範囲の広さ、コンパクトなスイングから長打、快打を連発する姿を見ると完全に復調したといっていいだろう。全国制覇へ向けてキーマンとなりそうな増田が決勝戦で、2本塁打を放ったことは大きな意味がある。
さらに横浜打線は森田に襲い掛かり、4番村田雄大が中前安打とセンターが処理を誤る間に二塁へ進むと、5番石川達也が適時打を放ち、5対0とリード。これで森田が降板する。
そして6回表にも一死一、二塁から2番遠藤駆が中前安打。さらに打球が後ろへ転々と転がる間に2点を追加し、7対0とする。さらに一死一、三塁から4番村田雄大の犠飛で1点を追加し、8対0とした。
横浜のエース・藤平尚真は、常時140キロ~145キロのストレートを内外角に投げ分け、冬から磨いてきたスライダーを左打者の内角へ決めたり、130キロも計測するフォークが一気に落ちて空振り三振に奪ったりと全国クラスの破壊力を誇る慶応義塾打線に6回まで0行進。完封も見える投球内容だった。この時点で試合が決したと思ったかもしれない。
だが7回裏、5番綿引達也(2年)の二塁打をきっかけに、代打・堀内一優(3年)の中前安打で、一死一、三塁のチャンスを作り、ここで巧打者・瀬戸西純(3年)の右前適時打で1点を返す。その後、二死二、三塁となって、1番下山悠介(1年)がストレートをはじき返し、中前適時打で2点を返し、3対8とする。さらに2番矢澤慶大(2年)の左前安打。二死一、三塁となったところで、投手交代。なんと打って打って藤平を降板させることに成功させたのである。2番手は石川達也(3年)を投入する。石川は、二死満塁のピンチを招いたが、4番正木智也(2年)をストレートで見逃し三振に打ち取り、ピンチで切り抜けた。
そして横浜は8回表、村田の適時二塁打で1点を追加し、9対3と突き放しに成功。点を取られたらすぐに取り返す。こういう攻撃をされると相手は嫌なものだ。2番手の石川は、135キロ前後のストレート、縦スライダー、カーブを上手く織り交ぜ慶応義塾打線を封じ、9回裏、3番大串亮太(3年)を高めのストレートで空振り三振!
その瞬間、ガッツポーズをする石川。石川のもとにナインが集まり、マウンド上で歓喜の輪を作る横浜ナイン。3年ぶりの甲子園出場を決めたのだ。
今年の横浜は、大会記録となる14本塁打を放ったように、全国トップクラスの最重量打線へ成長したが、これも昨夏の神奈川大会決勝の敗戦、昨秋の関東大会の敗戦が彼らを大きくさせたといえる。春から大きく選手が成長し、より隙のないチームになりつつある。これでもまだ伸びしろを感じさせるチームで、甲子園という舞台が横浜ナインを大きくさせることができるか。
敗れた慶応義塾も、投手陣は創意工夫をしながら、勝負をしていき、そして打線もエース・藤平から打って3点を取り返した。3対9と点差上では大きな差があったが、しっかりと横浜相手に食らいついていた。
試合が始まると空席だった外野席もすっかりと埋まり、満員となった[stadium]横浜スタジアム[/stadium]。今年の神奈川大会決勝もそれにふさわしいゲーム内容となった。
(文=河嶋宗一)
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