試合レポート

春日部共栄vs龍谷大平安

2014.08.12

流れをつかんだ1回表の猛攻&流れを切った金子大地の力投

 ついに始まった第96回全国高校野球選手権大会
開幕戦は選抜覇者龍谷大平安春日部共栄の一戦。

 開幕戦はどんなチームでも難しい。独特の緊張感により、本来の野球ができない。開幕戦で主導権を握るには、いかに先制点を取るかが大事になる。その大事な先制点を挙げたのは、春日部共栄だった。

 1回表、春日部共栄は1番清水 頌太が左前安打で出塁。さらに佐野 尚輝の犠打で手堅く進めると、龍谷大平安先発・元氏 玲仁(2年)の悪送球が飛び出し、無死一、三塁のチャンス。いきなりの安打が、元氏のリズムを狂わせたといってもいい。

 そして3番守屋 元気(3年)が中犠飛を放ち、1点を先制。攻撃の手を緩めることなく、4番原田 寛樹(3年)の左前安打で、一死一、二塁。続く5番平塚 大賀(3年)が死球で出塁し一死満塁とすると、6番金子 大地(3年)の左前適時打で1点を追加し、2対0。長岡 大智(3年)の中越え二塁打で、二者生還し、4対0と点差を広げ、そして8番小林 慎太郎(3年)の左前適時打で、5対0。ここで先発の元氏は降板した。

 元氏も好調時は130キロ後半の速球、キレのある変化球で圧倒する本格派だ。しかし春夏連覇の重圧に加え、開幕戦のマウンド。内容から見れば分かるように精神状態はかなり苦しいものであったと感じられた。


 春日部共栄にとっては初回の5点が大きかった。
元氏の後を次いで投げた高橋 奎二(2年)の投球が素晴らしく、攻略困難な左腕だっただけに、初回に取りこぼしすることなく点を取ったことで、一気に試合の主導権を握ったといってもいい。

 ただもう一方で、高校野球における5点差というのはセーフティリードではないのもまた事実だ。打線がつながれば、あっという間に返せる点差である。
春日部共栄の金子-守屋のバッテリーが龍谷大平安打線を如何に凌ぐかが、この試合のポイントとなった。

 この日の金子は、龍谷大平安に流れがいきそうになる場面でしっかりと抑えることが出来ていた。
まず1回裏、二死二塁で、河合 泰聖(3年)を三ゴロに打ち取った場面。もし1点返されていれば、龍谷大平安の反撃ムードでその後、試合展開も違ったであろう。
また3回裏、一死二塁のピンチでは1番徳本 健太朗(3年)を二ゴロ、大谷 司(3年)は遊ゴロに打ち取り、うるさい1、2番を打ち取ったのも大きかった。そして5回裏、二死二塁で再び1番徳本を左飛に打ち取った。

 そしてこの試合一番のピンチが迎えたのが7回裏。一死一、三塁の状況で、2番手で好投をしていた9番高橋に代えて、代打・西川 寛崇(2年)。西川は中犠飛を放ち、1点を返され、なおも二死一塁の場面で打席には1番・徳本。金子は全力投球で、2ストライク2ボールから最後は外角ストレートで見逃し三振に切って取った。

 さらに8回表、再び無死一、二塁。打者は4番河合。河合はストレートを引っかけ三ゴロ併殺で二死三塁。続く5番髙橋 佑八を得意のインコースストレートで空振り三振。主力打者を凡退に打ち取り、またもピンチを切り抜けた。

 この瞬間、春日部共栄が勝利をつかみ取ったといっても良い。


 9回裏、金子はスイスイと打者を打ち取り、最後の打者・常 仁志(3年)を本日最速135キロのストレートで空振り三振に打ち取り、試合終了。

 王者・龍谷大平安は開幕戦で姿を消した。

 春日部共栄の勝因としては1回に「5点」を取ったことがクローズアップされるが、見事勝利出来たのは5点を守ることのできるエース・金子の存在があったからに他ならない。

 金子は埼玉大会に比べ投球術により円熟味が増している。金子の球速は130キロ前半。速球で押していける投手ではない。コントロールに磨きをかけ、内外角、低めにしっかりと投げ分け、フルスイングをさせない。さらに金子は投球フォームを足上げを行ったり、クイックをしたり、タイミングを狂わせ、速球中心で投げていたところで、100キロのカーブを交え目先を変えたりするなど、緩急自在な投球で龍谷大平安打線を牛耳った。

 速球で押せないならば、コンビネーション、コントロールで勝負する。そして龍谷大平安打線に物おじせず、投球が出来た度胸も見事であった。

 初回で流れをつかみ5得点、龍谷大平安の反撃の芽を摘み取った金子の快投、そして無失策を記録した守備陣。格上の相手を破るお手本のような戦いぶりだった。

(文:河嶋 宗一)

【野球部訪問:第142回 龍谷大学付属平安高等学校(京都)】

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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