試合レポート

日大鶴ヶ丘vs東海大菅生

2014.07.29

中里サヨナラ打、日大鶴ケ丘全員野球で甲子園へ

 日大鶴ヶ丘東海大菅生の一戦は、甲子園出場校を決める決勝戦に相応しい熱戦であった。

 日大鶴ヶ丘は背番号11ながら、この大会からエース格に成長した右腕の小林晃大が、東海大菅生は背番号1の左腕・小林大が先発した。
試合は、5回までは0が並んだ。ただしそれは、単なる投げ合いというよりも、いつ火を噴くか分からない強力打線を、必死で鎮めようとする守り合いのようにも思えた。その中で、チャンスが多かったのは、東海大菅生の方だった。

 2回表東海大菅生は、一死後、6番宮下航、7番仙波敦也の連続安打で一死一、二塁のチャンス。8番小川祐樹の三塁ゴロを、日大鶴ヶ丘の三塁手・樋田翔平が落ち着いてさばいて、併殺打となった。
3回表には先頭の9番小林が中前安打で出塁し、1番榊真宏が送り二塁に進んだが、2番吉永浩大の左飛に小林が飛び出し併殺になった。
4回には死球で出た4番勝俣翔貴が5番冨塚樹也の中前安打で三塁まで進んだが、続く宮下の浅い中飛に、勝俣は本塁に突っ込めず無得点。
さらに5回表には、二死一、二塁の場面で3番和田浩太朗は右翼へ大きな飛球。これを日大鶴ヶ丘の右翼手・國生将人が背走して好捕。決定的なピンチを防いだ。

 もちろん日大鶴ヶ丘にも先制のチャンスはあった。2回裏日大鶴ヶ丘は一死後、幾島康平の左前安打と國生の四球で一、二塁としたものの、9番小林がバントを空振りするや、二塁走者の幾島は飛び出しており、東海大菅生の仙波捕手が素早く送球して刺された。


 0-0の均衡が破れたのは、6回表東海大菅生の攻撃だ。この回先頭の勝俣が死球で出塁すると、冨塚が送った。続く宮下は三振で二死二塁。7番仙波は左前安打。少し浅かったが、勝俣は一気に本塁を陥れ、待望の先取点を挙げた。

 しかし、日大鶴ヶ丘もすぐに同点に追いつく。7回表日大鶴ヶ丘は、先頭の幾島が四球で出塁すると、國生は確実に送り、打席には好投の小林の代打、主将の金井浩太朗が立つ。金井は、ショートへ難しい当たりのゴロを打つ。これを東海大菅生の遊撃手・和田が必死に捕球しようとしたが、バウンドにタイミングが合わず後逸。その間に二塁走者・幾島がホームイン。記録は和田の失策となったが、金井の執念がもたらした、難しい打球だった。

 金井は、春季大会では4番で捕手。チームが準決勝に進むのに中心的な役割を果たした。今大会でも最初のうちは左翼手で先発出場していたが。5回戦からは、中里雅也が左翼手として出場するようになっていた。

 金井が相手の失策で出塁すると、東海大菅生は好投していた小林に代えて、同じ左腕の高橋優貴をマウンドに上げた。柔の小林から剛の高橋への交代である。
高橋は最初の相手である1番樋田翔平に中前安打を打たれ、一死一、二塁。続く中里は三振に倒れるが、この時、二塁走者の金井も三盗を試みたがアウト。三振併殺となって、逆転はならない。

 9回表東海大菅生の先頭打者・宮下の三塁ベンチ前に上がるファールフライを、日大鶴ヶ丘の三塁手・樋田が猛烈なダッシュをして好捕。続く仙波の強烈なゴロを、日大鶴ヶ丘の遊撃手・西ヶ谷篤がダイブしてつかみ、一塁へ大遠投ながら素早く送球して刺した。8回からマウンドに上がった背番号1の秋山翔の力投もあり、守備でリズムをつかんで日大鶴ヶ丘は、9回裏の攻撃を迎える。

 この回一死後、8番國生は、この試合両チームを通じて唯一の長打となる左翼、ライン近くに落ちた二塁打で出塁。勝負どころとみた日大鶴ヶ丘は、代走に五十嵐靖晃を送る。二死後、1番樋田は四球で歩かされ、2番中里が打席に立つ。中里は必死にファールで粘り、この打席の10球目を叩くと、打球は三遊間を抜ける。しかし東海大菅生は外野手も前進守備体型であったため、タイミングは微妙であったが、二塁走者である代走の五十嵐が生還し、2時間13分の熱戦に終わりを告げた。


 試合後、萩生田博美監督は、「うちの野球は、これしかない。出し切った」と語った。萩生田監督にしても、金井主将にしても、出てくる言葉は「泥臭く、堅実に」だった。
このチームは秋季大会の初戦で二松学舎に3-10のコールド負けであった。春季大会の初戦は都立広尾と延長15回で引き分け再試合になっている。その後は粘り強く僅差のゲームで勝利して、準決勝に進出し、夏の大会の第一シードにはなったものの、それほど力強いという感じはなかった。

 ただ秋に大敗したチームは、春には負けないチームになり、夏に勝てるチームになった。ベスト4に入った春季大会ではベンチにすら入っていない3年生の小林がエース格となって活躍するなど、チームは日々進化していた。打線も春は栗田優一を中心とした打線といった感じだったが、夏は、どこからでも点が取れる打線に様変わりしていた。これから甲子園に向けても、まだまだ進化していく可能性がある。泥臭くても、全てを出し切り、悔いのない試合をしてほしい。

 敗れた東海大菅生は、小林、高橋の両左腕に、勝俣、冨塚といった打線の破壊力は、西東京ではトップクラスであった。ただ選手個々の力が、チームとしての力につながっていなかった部分もあった。そして春季大会4回戦では日大三に12-0の5回コールド負け。この衝撃的な敗北から立ち直り、夏は準決勝日大三に逆転勝ちした。ただ甲子園にはあと一歩届かなかった。その悔しさが、来年の夏に向けてのスタートになる。特に4番で大活躍した勝俣はまだ2年生。彼を中心にどんなチームに成長するか、楽しみにしたい。

(文=大島裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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