試合レポート

東海大菅生vs日大三

2014.07.27

日大三4連覇ならず、東海大菅生怒涛の大逆転

 野球は過去の実績は必ずしもあてにならないし、試合中もどんな展開になるか分からないので、油断も、諦めもしてはならない。そんなことを、改めて実感させられた一戦だった。

 日大三東海大菅生の試合は、4月13日に春季都大会4回戦でも行われている。この試合も、ある意味衝撃的な試合だった。
1回裏に日大三が、稲見優樹廣谷真也らが高橋優貴小林大といった東海大菅生投手陣を滅多打ちにし、初回だけで10点を入れ、12対0で日大三が圧勝している。

 あれから3か月余り、準決勝まで勝ち上がった東海大菅生にしてみれば、もう過去のことだろう。ただ、頭の隅に、あの時の恐怖心が残っている可能性も否定できない。

 今回の日大三東海大菅生の一戦も、立ち上がり、日大三東海大菅生に襲いかかった。

 1回裏日大三は1番稲見が、東海大菅生の先発・小林の2球目を叩き、ライト線ギリギリの二塁打。間髪入れず、2番の新井仁盛の中前適時打で早くも1点先制。さらに日大三の先発投手でもある3番の釘宮光希の送りバントは、東海大菅生の小林のエラーを誘う。

 この時点で、東海大菅生の先発・小林の動揺を感じられた。それでも廣谷の犠打で一死二、三塁とした後、5番伊藤裕季也の三塁ゴロで、三塁走者の新井を刺したことで、1回裏は1点止まり。
日大三の一方的な流れになるのを食い止めた。


 東海大菅生は、5回表に同点に追いつく。
この回先頭の6番宮下航の強い打球は、日大三の先発・釘宮の足に当たる内野安打。打球を受けたことは、釘宮の投球には影響がなかったものの、宮下は犠打と、内野ゴロにより三塁に進んだところで、釘宮の暴投によって生還している。

 接戦になるかと思ったのも束の間、6回裏日大三は、6番田村孝之介の二塁打など、安打5本が集中し、一挙4点を挙げて、突き放した。
スタンドでは、席を立つ人もいるなど、この4点は決定的かと思えた。

 ところが7回表の東海大菅生、この回先頭の4番勝俣翔貴が振り抜いた打球は、右中間の深いところに飛び込む本塁打。俄然反撃ムードが高まる。
しかも一死後、宮下が打った一塁への不規則バウンドを、日大三の一塁手・廣谷が捕りそこない出塁。東海大菅生は、運も味方するようになってくる。

 二死後、準々決勝で決勝打を打った小川祐樹と、6回途中からマウンドに上がっている高橋による連続安打でこの回2点目。榊真宏が死球で出た後、2番吉永浩大の中前安打で2人が還り、同点に追いつく。

 ここで日大三は投手を釘宮から佐渡俊太に交代する。
同点という危機的状況においても、プロ注目の速球投手・三輪昂平を投入できないところに、今の日大三の悩みがある。


 3番和田浩太朗は、佐渡から二塁打を放ち、東海大菅生は、逆転に成功した。
もっとも得点は7対5と2点差。日大三打線の破壊力なら、十分逆転可能である。

 しかしながら東海大菅生は、9回表に神がかり的な攻撃をする。

 一死後、1番榊が二塁打、続く吉永は中前安打を打つものの、榊は三塁でストップ。しかし、不用意に本塁に送球されたため、吉永は二塁へ進む。今日は、こうした無駄なプレーで、余計な塁を与えたところが、日大三らしくなかった。
一死二、三塁となったところで、ようやくマウンドには、三輪が上がった。ところが、ストレートで四球を出したところで、三輪の状態がよほど悪いのか、日大三の投手はすぐに安田颯に代わった。

 そこで登場した勝俣の打球は一塁へのゴロ。これを廣谷が捕球できず安打に。さらに5番冨塚樹也のボテボテの当たりは一塁手と二塁手の間を抜けて安打になる。さらに宮下の遊撃手への打球を、守備がうまい船山貴大が捕れずにエラーに。
信じられないようなプレーが続出して、あっという間に5点が入った。

 9回裏日大三は、岡部壮太の二塁打などで1点を返したものの、反撃もそれまで。12対6。
日大三の4連覇の夢破れる試合終了のサイレンが鳴った。

 それにしても、あまりに一瞬の出来事で、日大三は敗れた。
もっとも、秋も春も日大三は、一瞬の集中打で敗れ去っている。
強さの一方で、受け身になった時の脆さ。その課題を、夏も克服できなかった。実力的には、西東京で頭一つ飛び抜けた存在であった。今後どのようにチームを立て直してくるのか、注目したい。

 東海大菅生は、14年ぶりの甲子園を目指して、決勝戦に進出する。日大鶴ヶ丘も打撃がいいチームだが、それだけに、投手を中心とした守りがどこまで安定するかが、カギとなるのではないか。

(文=大島裕史

【野球部訪問:第23回 小倉全由監督に聞く チームの徹底力の生み方】

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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