試合レポート

春江工・坂井vs松本第一

2014.06.09

多彩な攻めの策を繰り出す!

春江工・坂井vs松本第一 | 高校野球ドットコム 

2回裏、8番出蔵が初球でスクイズを成功させて春江工業・坂井が追加点

 1回裏、1番忠谷弦汰(3年)の先頭打者本塁打で先制した春江工・坂井。2回以降は、川村忠義監督が繰り出す策が、松本第一陣営に深く考え込ませる要因になっていった。

 2回、春江工・坂井は先頭の6番宮脇信吾(3年)がライトへ二塁打を放つ。続く7番濱出翔太(3年)が1球目で送りバントを決め、一死三塁となった。そして、8番出蔵将吾(3年)も1球目にバント。抜群のスタートを切った宮脇が本塁を踏み、見事なスクイズとなった。

 この場面を川村監督は「3球で(1点を)決めるぞと思った」と、してやったりの様子で話した。

 春江工・坂井は4回にも先頭の5番竹内爽(3年)が三塁打を放ってチャンスを作る。打席は6番宮脇。2回の守りでスクイズを決められただけに、松本第一立石潤太田翔の2年生バッテリーは、相手・川村監督の策を警戒した。特にキャッチャーの太田は、松本第一の櫻井正孝監督の方を何度も見て、自らの守りの策を確認する。しかしここで宮脇に大きな策はなし。結局、四球で一塁に歩くことになった。

 無死一、三塁となって前の打席で送りバントを決めている7番濱出。だがここでの川村監督の策は強攻。濱出は2球目を振り抜くと、打球は左中間を破って、二者が生還。濱出は二塁の悠々と達した。


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4回裏、見せかけスクイズをする9番久保

 痛い失点となった松本第一を横目に、春江工・坂井の川村監督は更なる策を繰り出す。8番出蔵が送って一死三塁とすると、9番久保拓矢(2年)は1ストライクからの2球目でスクイズの構え。ところが、スタートを切ったはずの三塁走者・濱出はすぐに帰塁し、打席の久保もバットを引いた。いわゆる、見せかけスクイズである。

 そして直後の3球目、今度は本当にスクイズをしてこのイニング3点目をもぎとった。
「多分相手は(春江工・坂井が)そういう戦略をしてくると聞いていたと思うので、守備位置も対策してきていた。ただ、ウチはそういうシフトできてくれても、平常心でやれる」と話した川村監督。

 点を取られる方にはたまらなく、ゲームを見ている方には野球の面白い部分を感じる、春江工・坂井の多彩な攻めの策であった。

 守る方では、大黒柱である主将でキャッチャーの栗原陵矢(3年)が、2年生左腕・久保をしっかりとリードした。今大会は、本来エースナンバーをつける予定だった野村佳久(2年)がケガをして直前に登録変更でベンチを外れた。

 苦しい投手事情の中、「何とか自分が試合を作ります」と栗原は川村監督に話したそうである。

 久保のコントロールの良さもプラス材料となって、松本第一を1点に抑えて、見事に完投させた。

 さらに栗原の極めつけは、8回に盗塁を刺して三振ゲッツー(ダブルプレー)を取った所だ。相手打者が三振したため、前のめりになって、栗原の送球路を少しふさぐ形になったのだが、しっかりと送球路をこじ開けて、走者を二塁で刺した。今年の高校生でNO1クラスの片鱗を見せた場面であった。

(文=松倉雄太

 


エキサイティングプレイヤー 濱出翔太(遊撃手・春江工・坂井)

 日本の野球界はとりわけ、打者よりも投手に注目が集まる傾向にあるが、大リーグでは遊撃手が花形だという話を聞いたことがある。横浜高校時代の松坂 大輔のプレーの映像を大リーグ関係者が見た時、「なぜ彼をショートにしないんだ?」と驚かれたという逸話が、それを物語っている。カル・リプケン、デレク・ジーター、アレックス・ロドリゲスなど人気実力を兼ね備えた選手の華やかなプレーで観客を魅了しているのも、遊撃手こそ花形という考えの根底にあるのだろう。

 話を今日の試合に戻そう。第一試合の試合前、春江工・坂井のシートノック、1人の選手の動きに目を奪われた。軽やかなステップと軽快なグラブさばきは華やかさというより堅実。その姿は松井 稼頭央中島 裕之坂本 勇人ら近年の日本の攻撃的な遊撃手というよりは、井端 弘和宮本 慎也ら職人的な遊撃手の系譜をたどるタイプ。実際、7番で先発出場した第一打席では、初球をきっちり送りバントを決め、2点目のアシストをするなど、この試合4打席で2犠打。だが裏方に徹するばかりではない。四回裏、無死一、三塁で迎えた第2打席にはボールをしっかり見極め、右中間へ貴重な2点タイムリー。安定した守備に加え、打席のシチュエーションに応じて、変幻自在に役割を変える。華やかさと堅実さを兼ね備えた春江工・坂井の安定した強さを支える背番号6に今後も注目したい。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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