指宿商vs鶴丸
「目指す野球」に近づけた・指宿商
指商・村山
15人チームの指宿商が接戦をものにして31季ぶりの4強入りを果たした。
苦しい試合だったが「目指している野球」(内村文彦監督)に近づけた手応えを感じる。この夏から監督に就任した内村監督が取り組んでいるのは、どんな状況でも自分を見失わず、自然体でプレーができること。取り組み始めたばかりで、まだまだ確実に身についているとは言い難いが、この試合でもその成果は随所に見ることができた。
エース村山孝輔(2年)は制球に苦しみ、決して本調子とは言えなかったが、ここぞという勝負どころでは自分を見失わなかった。
8回、1点差に詰め寄られなお一死二三塁と一打逆転のピンチの場面で「自分の間合いを大切にする」ことを忘れなかった。相手は8番・濵﨑貴介(2年)。今までなら力んで投げ急いで打たれていたが、度々プレートを外してけん制を入れたり、屈伸をするなど十分に間合いを取ってから勝負した。最後に空振り三振をとったボールも「ミットに届かせるぐらいの気持ちで、8割ぐらいの力で投げた」という。
今大会はこれまで村山を中心とした守備で勝ち上がってきたが、この試合では4回に先頭の2番・上吹越凌(2年)からの4連打で2点、7回は二死から1番・久永洋輔(1年)からの4連打で2点と、打線が奮起した。
各打者は打席に入る前に必ずバットを下げ、肩を揺する動作をしている。4回は反撃の口火となる1点目のタイムリー三塁打、7回はリードを広げる5点目のタイムリーを放った3番・永谷謙斗(2年)は2、3回といずれも失点につながるエラーをしている。「下を向いていても仕方がない。仲間がきっと取り返してくれる」と信じて打席でも平常心で自分の仕事をすることを心掛けた。
「ミスをしたから何とか自分で取り返そうとすると力んで力が発揮できない」と内村監督は言う。
永谷も打席に入る前はリラックスする動作をしていたが、塁上で歓喜を爆発させた姿には、ミスを挽回できた安堵感があった。「やっぱり相当な思い入れで力が入っていたのでしょうね。この辺がまだまだなところです」と内村監督は苦笑する。
決して能力の高い選手がそろっているわけではない。8月の南薩地区大会では初戦で川辺に敗れた。それでも個々の力を最大限に引き出し、それらを組み合わせることができれば大きなことができるかもしれない。その片鱗を垣間見せてくれたことに内村文彦監督は「すごいぞ、この15人!」と思わず賛辞がこぼれた。
(文=政 純一郎)