健大高崎vs富岡
目指す野球に近づいてきて、健大高崎2年ぶりの甲子園を見据えベスト8へ
昨秋も今春も、県大会準優勝で関東大会に進出している健大高崎。
しかし、その後夏を目指していく中で、もう一つ壁にぶつかっていたところもあったという。それでも、自分たちの目指してきた野球（プレー）があって、それがどれだけ出来るのかということこそ、高校野球としての目指すところというという気持ちで取り組んできた。その目指していこうという野球に近づけていけているチームはやはり強い。健大高崎は、春季関東大会以降、チームとしてもちょっと活気を失っていた時期もあったというが、夏へ向けて、自分たちの野球を確認して、そこへ向けてのベクトルは整ってきているようだ。
健大高崎と言えば“機動破壊”という言葉で、すっかり機動力の攻撃野球のイメージが定着しているのだが、この試合でもそれを初回から発揮していった。
まず、先頭の脇本君が失策で出塁すると、バントで進み、高橋洋君が右前打して先制するが、これを後逸して高橋君も三塁まで進む。1死三塁で宮下君は空振り三振だったが、ショートバウンドしたボールが一塁へ送られる間に、三塁走者がホームを陥れた。わずかに送球がそれたスキを突いたものだったが、こうした走塁こそ、健大高崎が目指してきたものだった。
青栁博文監督も、「あの場面で走る練習は、何度も練習してきたもので、まさに狙い通りでした。今年は、盗塁数だけにこだわるのではなく、もっと無駄のない走塁を仕掛けていくことをしていってこそ“機動破壊”なのだというつもりでやってきています」というプレーでもある。試合としても、これで自分たちの野球への流れを作ることが出来た。
3回には脇本君の左越二塁打と高橋洋君の右線二塁打でさらに１点を加えた。その裏に、失策絡みで走者を進めて、２番磯貝君の中前打で１点を許したものの、先発池田投手は責任イニングとしていた3回を投げ切って、中山君につないだ。
中山君は１死満塁のピンチも作ったが、思惑通りの併殺で切り抜けた。健大高崎は、さらに松野君、左腕高橋和君と小刻みにつないでリードを守っていった。「今年は投手陣には、２～３イニング、これをそれぞれがしっかり投げられるようにすればいいんだということを伝えています。4人、5人の継投で戦っていくのも持ち味です」と、青栁監督は継投でも狙い通りだったことに喜んだ。
打線も、この日は群馬富岡の力のある右腕岡田君に備えて左を並べるなど組み替えていったが、それも思惑通りに機能した。1番に起用した脇本君が2安打し、3度の出塁の内の2度が得点に絡み、2番に起用した1年生の相馬君は7回、軽いバットに代えてタイムリーを放ち追加点を挙げた。
この両校は、実は大会2週間ほど前に、ナイターの練習試合を組んでいて、その試合では群馬富岡が5対1で勝利したという。それだけに、群馬富岡としても秋春の県大会準優勝校であっても臆することなく戦えるぞという意識は出来ていたのであろう。田畑茂監督としては、エースで4番の岡田君に託したという気持ちがあったのだろうが、結果的には、健大高崎が岡田君対策も含めて、1枚上回ったという形になった。
(文=手束仁)
