試合レポート

大垣工vs岐阜総合学園

2012.11.13

大垣工vs岐阜総合学園 | 高校野球ドットコム

長沢佑磨(大垣工)

快腕・長沢が完封劇 大垣工の「ミスター・ゼロ」だ 

「ミスター・ゼロ」と呼びたい好左腕が現れた。岐阜県の工業高校が集うトーナメント大会準決勝で、大垣工長沢佑磨(2年)が強豪・岐阜総合学園を相手に完封勝利を飾った。長沢は1週間前、秋季県大会に進めなかった高校によるトーナメント戦「県下選抜大会」決勝でノーヒット・ノーランを達成したばかり。県大会には出られず表舞台とは無縁のエースが、陰で着々と腕を磨き、県屈指のサウスポーに成長していた。

「実は1ヵ月ほど前にもノーヒット・ノーランを達成しているんです」。試合後にベンチ裏へ訪ねると、身長171センチの小柄な左腕から驚きの言葉が飛び出した。公式戦はこの日の好投で2試合連続完封となったが、10月の練習試合でも県上位のチームを相手に大記録を達成したというのだ。三輪武監督は「ウチのチームのスコアでは内野安打を2本打たれたことになっているんです。でも相手さんはそれをエラーと判定されたようで、安打は0本だと…」と“満場一致”でないと注釈を添えるが、その試合で17奪三振をマークしたのだから実力は本物。地区大会では大垣日大を9回1失点に抑えている。

最大の武器は右打者アウトコースへのストレートだ。バッターの目から遠く、最も打ちにくいポイントにノビのあるストレートを投げ込んで空振りがとれる。「変化球とストレートの投げ分けが上達しました。その結果、最後にストレートで決める配球も可能になったんです」と三輪監督が分析するように、8回の二死二・三塁のピンチもその“生命線”で切り抜けた。精鋭揃いの相手打線にも物怖じせず、奪った三振は10個。一方で、打たせて取るのもうまい。ボールの質がよく、バットが届くところへ投げても凡打になる。変化球も多彩だ。

グラウンド外では小柄ゆえに目立たなさそうな雰囲気だが、野球に対する熱さはある。赤坂中学で軟式野球部に入った当時、強いチームではなかったというが「顧問の先生と相談し、チームの練習量を増やしてもらいました。そうしたら結果も出て、最後の中体連では大垣市2位・西濃地区3位で県大会に出場できたんです」。取り組みの成果を実感しながら、高校でも努力と経験を重ねてきた。


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山元琢未(岐阜総合学園)

今秋東海大会を制覇した県立岐阜商藤田凌司(2年)が岐阜県のサウスポーでは筆頭格だが、長沢も肩を並べそうな勢いだ。ただし本人は「でも僕、藤田君と投げ合って負けているので…」と一歩引く。昨年夏の大会(4回戦)で1年生同士の先発対決となったが、6回零封の藤田に対し、長沢は3回4失点で早々に降板しているからだ。「まだ下半身がしっかりしていないので、もうちょっと(鍛えないと)。そうすれば130キロ台前半の球速はまだまだ伸びうる」と指揮官はにらむが、冬の取り組み次第では藤田への雪辱も十分可能だ。

試合は5回裏に大垣工が虎の子の1点を挙げた。長沢が出塁し、送りバントの後に8番星野滉平(1年)が安打で続くと、9番宇佐見剛(1年)がレフトへタイムリーを放った。ちなみに宇佐見はここまで公式戦出場がほとんどない「Bチーム」の選手。前日の練習でセンターの正選手がケガをし、自身に巡ってきたスタメン出場のチャンスを生かした。次打席でも安打を放ち、試合後のミーティングで首脳陣から「自信をもっていい」と鼓舞されていたが、こうした選手がすぐにチャンスを生かしたというのは、個人としてもチームとしても、日頃からよい練習ができている証ではないかと想像した。

敗れた岐阜総合学園は、エースの山元琢未(2年)が好素材で、130キロ台のストレートが力強い。この日はピッチャーながら1番打者で起用されたが、これについては「たまたまです。長打も出る反面空振りする粗さもあり、4番を打ったり下位を打ったりしていますが、今日は1打席でも多く回るようにと…。『0番打者』のイメージです」(増田純一監督)。3日の関商工戦では本塁打を放つなどパワー・風格は非凡。大垣工の長沢同様、今後注目の選手だ。

(文=尾関雄一朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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