県立岐阜商vs常葉菊川
県立岐阜商・藤田
県立岐阜商、久々の「春」前進
秋季東海大会は準決勝を迎え、第1試合では菰野が市立岐阜商を10対2(7回コールド)で、第2試合では県立岐阜商が2対1で常葉学園菊川を下した。
県立岐阜商が選抜大会出場となれば、平成7年春以来のこと。エース藤田凌司(2年)は「自分が生まれるくらいのころですね」と話し報道陣を笑わせたが、伝統校にとって久々に期待に満ちた冬を過ごすことができる。エースの父でもある藤田明宏監督は「まだチーム全体として気持ちが弱い。堂々と野球がやれる集団になってほしい。一冬越えて見違えた状態でセンバツに出たい。もちろん(翌日の)決勝に勝ち、神宮大会にも出て経験も積みたい」と抱負を口にした。
エース藤田は2回戦での7回零封に続き、この日も安定した投球だった。夏の甲子園は苦いマウンドだったが、新チーム結成以後、球速が3~4キロアップし、スライダーもマスターした。
桐光学園・松井裕樹投手(2年)を見て影響を受け、自身の投球に「躍動感」も加えた。心理的にもよい状態でマウンドに立てていて、「夏はフォームを気にしすぎていたけれど、今はテンポよく投げ、リズムをつくることを心がけています。『絶対抑えてやる』という強い気持ちで相手に向かえたし、今は投げていて楽しいです」。
県立岐阜商の2得点はともに、甲子園への思いが人一倍強かった河村蓮志(2年)が演出した。4回裏は三塁打で出塁し、5番藤田の犠牲フライで先制のホームを駆け抜けた。同点で迎えた9回裏は二塁打でチャンスを作ると、6番神山琢郎(2年)のポテンヒット気味の打球に相手センターが飛びつくも捕れず、その間にサヨナラのホームインを果たした。河村は昨秋はレギュラー級だったが、徐々にスランプに陥り、チームが甲子園出場した今夏はベンチ入りを外れた選手。「ベンチに入れず悔しかった。センバツに出たいと振り込んできた」成果が大一番で出た。
殊勲打は、打撃改良によるスランプ脱出の証でもある。河村自身も「監督から『軸足が地についていない(体重が乗っていない)、体が突っ込んでいる』と指摘され、フォームを矯正してきたんです」と表情は明るい。懐に球を呼び込むような大きな神主打法は中学時代からだといい「バットを立てていたほうが、ボールを上から叩く感覚で振れる。今日もしっかりボールを叩けました」と手ごたえ十分だ。
県立岐阜商と常葉学園菊川は、年に2回ほど練習試合をする間柄だ。この試合、5回終了後のグラウンド整備の最中に、両校のベンチ外部員がスタンドで「ゆず」の『栄光の架橋』を一緒に歌い上げ、一般ファンを沸かせたシーンもあった。藤田監督は「(両校合唱について、特別な交流は)ないです」と言いながらも、常葉学園菊川について「練習試合で見ていた旧チームと同様、振ってくる・走ってくるチームだったし、そういうことの必要性を教えてくれたチームでもある」。切磋琢磨が垣間見えた一戦でもあった。
敗れた常葉学園菊川は先発堀田達也(2年)が好投し、8回表に4番松木大輔(2年)の一打で追いついたが、序盤の好機を逸するなど一歩及ばなかった。
(文=尾関雄一朗)