市立岐阜商vs津商
力投する市立岐阜商・越渡
市立岐阜商快勝 昭和風情のエースが力投
秋季東海大会が幕を開け、各県2位校と3位校が1回戦で顔を合わせた。[stadium]清水庵原球場[/stadium]では、岐阜県2位の市立岐阜商が、エースの力投に打線がこたえて快勝。2回戦へ駒を進めた。
昨秋の東海大会では準決勝で敗れ選抜大会を逃した市立岐阜商が、リベンジへ向けて快調な船出だ。今秋から背番号1をつける越渡俊太(2年)が3被安打11奪三振の完封劇。エースの好投は「先輩越え」を予感させた。
平成の時代に、どこか“昭和チック”な140キロ右腕が現れた。越渡は投球フォームでややガニ股気味に左足を上げて始動し、勢いよく投げ込んでくるのだが、そのフォームたるや、一昔前の野球選手のよう。本人は「重心が後ろに傾きすぎないよう、左足の上げ方で調整しているんです」と説明するが、投げる姿は“ちぎっては投げ”に映る。しかも「投げ込むほどに調子が上がり、連投も苦にしない。疲れとかは関係ないタイプ」(秋田和哉監督)というから、そのタフネスさも往年の好投手像と重なる。県大会準決勝は延長13回に及んだが、このときも一人でマウンドを守った。
市立岐阜商の選手に聞いてみると、越渡は同級生に対しても敬語を使って喋ることが多々あるそうだ。本人も「小さい頃から(性格的に)弱々しいところがあって…。自分から周囲を引っ張るタイプでもないですし…」と、腰の低さは自覚している。だがマウンド上ではそのチャームポイントも一変。弱気どころか、相手を寄せつけない強気のピッチングで、堂々9イニングを投げきった。
打線もつながり、チャンスでタイムリーが出た。特に、5番を打つ高井悠生(1年)は3安打と活躍。この高井、今年の甲子園で春夏連覇を達成した大阪桐蔭・高井洸佑(3年)の弟にあたる。大阪へ進んだ兄に対し、弟は進学を「兄が当初、寮生活に戸惑ったようなので、僕は県内にしようと…。それに、中学まで父のアドバイス効果が大きかったので、高校でも親元でやりたい」と県内の強豪校に絞った。1年時から活躍し、ここまで既に「高校通算で5~6本」(本人談)のホームランを放っている。この日、第二、第三打席でレフト前ヒットを放ったが、その打席で使用したバットは、兄が10月のぎふ清流国体で2本塁打をマークした縁起よいバットを借り受けたもの。「県大会では不振だったが、切り替えて臨めた。持ち味はフルスイング」と語る長距離砲候補が、「兄越え」を狙う。
試合は市立岐阜商が初回、4番駒瀬大武(2年)がライトへタイムリー二塁打を放ち先制すると、2回裏には1番安田世成(2年)、7回裏には2番坪井大和(2年)のタイムリーで加点。一発長打・大量得点が狙えた旧チームとカラーは異なり、足や小技を絡めて一つずつ走者を進める野球を展開した。
敗れた津商は相手投手が不安定だった立ち上がりと、終盤にチャンスを作ったが、あと一本が出ず流れをつかめなかった。先発した森山拓磨(2年)はほぼ毎回ランナーを許したが、与四球1なら責められない。変化球を駆使して粘った。昨秋は県大会でベスト8に入り、センバツ「21世紀枠」三重県推薦校に選ばれた同校だが、それを大きく上回る成績を残した今秋も、是非推薦されてほしいチームである。
(文=尾関雄一朗)