試合レポート

市立岐阜商vs津商

2012.10.21

市立岐阜商vs津商 | 高校野球ドットコム

力投する市立岐阜商・越渡

市立岐阜商快勝 昭和風情のエースが力投

秋季東海大会が幕を開け、各県2位校と3位校が1回戦で顔を合わせた。[stadium]清水庵原球場[/stadium]では、岐阜県2位の市立岐阜商が、エースの力投に打線がこたえて快勝。2回戦へ駒を進めた。

昨秋の東海大会では準決勝で敗れ選抜大会を逃した市立岐阜商が、リベンジへ向けて快調な船出だ。今秋から背番号1をつける越渡俊太(2年)が3被安打11奪三振の完封劇。エースの好投は「先輩越え」を予感させた。

平成の時代に、どこか“昭和チック”な140キロ右腕が現れた。越渡は投球フォームでややガニ股気味に左足を上げて始動し、勢いよく投げ込んでくるのだが、そのフォームたるや、一昔前の野球選手のよう。本人は「重心が後ろに傾きすぎないよう、左足の上げ方で調整しているんです」と説明するが、投げる姿は“ちぎっては投げ”に映る。しかも「投げ込むほどに調子が上がり、連投も苦にしない。疲れとかは関係ないタイプ」(秋田和哉監督)というから、そのタフネスさも往年の好投手像と重なる。県大会準決勝は延長13回に及んだが、このときも一人でマウンドを守った。

市立岐阜商の選手に聞いてみると、越渡は同級生に対しても敬語を使って喋ることが多々あるそうだ。本人も「小さい頃から(性格的に)弱々しいところがあって…。自分から周囲を引っ張るタイプでもないですし…」と、腰の低さは自覚している。だがマウンド上ではそのチャームポイントも一変。弱気どころか、相手を寄せつけない強気のピッチングで、堂々9イニングを投げきった。

打線もつながり、チャンスでタイムリーが出た。特に、5番を打つ高井悠生(1年)は3安打と活躍。この高井、今年の甲子園で春夏連覇を達成した大阪桐蔭高井洸佑(3年)の弟にあたる。大阪へ進んだ兄に対し、弟は進学を「兄が当初、寮生活に戸惑ったようなので、僕は県内にしようと…。それに、中学まで父のアドバイス効果が大きかったので、高校でも親元でやりたい」と県内の強豪校に絞った。1年時から活躍し、ここまで既に「高校通算で5~6本」(本人談)のホームランを放っている。この日、第二、第三打席でレフト前ヒットを放ったが、その打席で使用したバットは、兄が10月のぎふ清流国体で2本塁打をマークした縁起よいバットを借り受けたもの。「県大会では不振だったが、切り替えて臨めた。持ち味はフルスイング」と語る長距離砲候補が、「兄越え」を狙う。

試合は市立岐阜商が初回、4番駒瀬大武(2年)がライトへタイムリー二塁打を放ち先制すると、2回裏には1番安田世成(2年)、7回裏には2番坪井大和(2年)のタイムリーで加点。一発長打・大量得点が狙えた旧チームとカラーは異なり、足や小技を絡めて一つずつ走者を進める野球を展開した。

敗れた津商は相手投手が不安定だった立ち上がりと、終盤にチャンスを作ったが、あと一本が出ず流れをつかめなかった。先発した森山拓磨(2年)はほぼ毎回ランナーを許したが、与四球1なら責められない。変化球を駆使して粘った。昨秋は県大会でベスト8に入り、センバツ「21世紀枠」三重県推薦校に選ばれた同校だが、それを大きく上回る成績を残した今秋も、是非推薦されてほしいチームである。

(文=尾関雄一朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.02

【茨城】常総学院、鹿島学園、水戸一、つくば秀英が4強入り<春季県大会>

2024.05.02

激戦必至の春季千葉準決勝!関東大会出場をかけた2試合の見所を徹底紹介!

2024.05.02

【長野】松商学園、長野日大、東海大諏訪などが県大会出場へ<春季県大会支部予選>

2024.05.02

【四国】高松商、33年ぶりの決勝進出の立役者は茨城の強豪シニア出身の1年生右腕!<春季地区大会>

2024.05.02

春の神奈川準決勝・東海大相模vs.横浜の黄金カード実現! 戦力徹底分析、試合展開大胆予想!

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【長野】上田西、東海大諏訪、東京都市大塩尻が初戦突破<春季県大会支部予選>

2024.04.28

【鳥取】鳥取城北が大差でリベンジして春3連覇<春季県大会>

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>