飛龍vs豊川
竹村君（飛龍）
我慢した飛龍、８回一挙に逆転で次へ進出
7回までの飛龍は、ほとんど毎回のように走者を二塁、三塁と進めながら、残塁の山を築いていて、拙攻というか歯がゆい展開だった。そして、このまま行ってしまうのではないかと思われるような展開でもあった。
ところが8回、打線が一気に爆発してひっくり返した。
ベンチでは、濱野洋監督が、「いつか流れは来るのだから、取られた点は気にしないで、とにかく今を我慢しよう」ということを言い続けてきたというが、それが実を結んだ形となった。
5回を終わって3点のビハインドの飛龍。6回にやっと、4番京井君と竹村君の連打から、相手失策も絡んで1点を返す。そして8回、この回先頭の京井君が右中間への三塁打で出ると、続く竹村君も左中間へ二塁打を放ち1点差とする。これでにわかに活気づいた飛龍は、さらに攻め続ける。
バントで1死三塁として同点機を作ると、飛龍ベンチは迷うことなくスクイズで同点。しかも、送球が走者に当たったということもあって、さらに好機が広がっていった。このスクイズに関しては、澤田祥君が、「必ず決めますから、サインを待っています」という気持ちが伝わって、濱野監督も自信を持ってのものだった。
この同点で、試合の流れは完全に飛龍に移った。
2死二塁から、カウントは0ボール2ストライクと追い込まれながらも、9番河村君が三遊間を破ってついに逆転。さらに、小豆澤君もファーストの横を強烈に破る三塁打でもう1点追加した。
結果的には、この1点が効くことになるのだから、まさに飛龍としてはこの回の勢いが、いかに大きいものだったのかということである。
その背景には、飛龍の濱野監督が、「なんとか我慢していれば、きっといつかは流れが来るのだから、とにかく我慢しよう」ということを言い続けてきたことも大きい。その思いが選手たちに伝わって、一気の爆発につながっていったのだった。
豊川・森口君
それでも食い下がろうとする豊川は、その裏に安打3本を集めて１点を返してせまっていった。試合をあきらめていない姿勢を十分に示した。
しかし、179cm72kgというバランスのとれた体で、しっかりと腕を振った投球の出来る堀田君は、「今日は、ブルペンから、ちょっと気合が入りすぎて空回りしていたところもあった」というところもあったかも知れないけれども、むしろ、3点を先制されてからは自分の持ち味を出したいい投球をすることが出来ていた。
豊川は、3回に2死一、二塁から、2番永坂君のライト線二塁打で二者を返して先制。さらに、4回にも四球の走者を進めると、氷見君の内野安打で3点目。森昌彦監督としても、ここまでの展開であれば、目論見通りだったというところであっただろう。
エースの森口君も力強い投球で、捕手のミットにドスーンと叩きつけられるストレートはかなり重そうな印象だった。7回までは、安打こそ7本を許していたが、1失点のみで抑えていたということは、いい投球だったと言えよう。それが、8回は突如として崩れたというよりも、いくらか不用意に投じた1球から、崩れていくことになってしまった。
森口君としてもこういうところが、今後の投球の組み立てにおいて、次への糧にしていくことになれば、それが次へつながっていくということになるのではないだろうか。
（文＝手束仁）
