常葉菊川vs大垣日大
常葉菊川、大西君のスクイズで2点目
フルスイング健在、常葉菊川5年ぶりの東海大会初戦突破
東海地区代表校同士で決勝を争った2007年の選抜大会。
その時の、両校である。
当時、大垣日大は守備力を買われた希望枠での出場だったが、甲子園でも着実な試合運びで、言うならば大垣日大旋風を巻き起こした。その大垣日大を決勝で下したのが、ピンストライプのユニフォームも強烈な印象を残した常葉菊川だった。その年は夏も両校は甲子園で対戦し、常葉菊川が返り討ち。常葉菊川は翌年の夏も準優勝を果たすなど、その2年間は静岡県としては常葉菊川のみが甲子園に出場を果たして甲子園を席巻した印象があった。
以来、今度は系列校の常葉橘の躍進もあって、若干成りを潜めていた印象があったが、5年ぶりに秋季東海大会に進出してきた。
練習試合はともかく、公式戦では2007年の対戦を含めて常葉菊川に勝てていない大垣日大としては、何とかここで一つ勝っておきたいところでもあろう。
その期待を担って先発マウンドに登ったのは、一昨年のエースとして甲子園でも一世を風靡した葛西侑也投手(現東海REX)を思わせる、左サイドハンドの和久田君だ。
秋季県大会前は、いくらか調子を崩し気味でもあったというが、阪口慶三監督も、「ここへきてすっかり調子も上向いてきたので大丈夫」ということで先発を任せた。
実は、新チーム結成直後に、常葉菊川と大垣日大は練習試合を組んでいるのだが、その時の和久井君はまだ正式には投手になっていなかったということもあって、常葉菊川にはデータとしてはインプットされてはいなかった。そんなところにも、阪口監督としては期待感も高かったのではないだろうか。
しかし、その和久田君は立ち上がりから制球がもう一つということもあって、打者一巡した2回途中でスパッと切り替え、代わって182cm76kgという、1年生ながら恵まれた体格の高田君がリリーフすることになった。高田君は交代早々の2回は抑えたものの、3回に先頭の2番前川君がライトオーバーの二塁打を放つと松木君が一、二塁間を破るヒットで一、三塁。続く菊池君のライト前ヒットで先制すると、常葉菊川としては珍しく、スクイズで2点目を追加した。
8回に2ランを放った桒原君
さらに、4回には9番今坂君が思い切りのいいスイングで三塁打を放つと、遠藤君がレフトへ犠牲フライ。常葉菊川らしい追加点を挙げた。6回にも二塁打の大西君をバントで三塁へ進めると、今坂君の犠牲フライで加点している。そして、8回には7番桒原君が、まさにフルスイングでライトスタンドへ2ラン。結果的にはこれが決勝ホームランとなった。
この桒原君に代表にされるように、9番今坂君もそうだが、下位打者も思い切りよく振ってくるというスイングは、やはり常葉菊川のものだ。そして、思い切りの良さが、打球の強さを生み出し、野手に対してもプレッシャーを与えていくのである。若干、間があいてしまっていたが、こういう場へ出てきてみたら、やはり常葉菊川の新たな伝統のフルスイングは生きているということである。
大垣日大も、1対6から8回には3番田中健君のライト線二塁打などで3点を追い上げ、9回にも無死で8番立野君が右中間へ二塁打、相手悪送球もあって、1点差まで迫った。さらに、再度マウンドに登った和久田君は好投もした。しかし、結果的には、常葉菊川の堀田君が踏ん張って1点差で常葉菊川が逃げ切った。
常葉菊川の森下知幸監督は、「たまたま、あの年(2007年)は、(大垣日大と)公式戦で当たることが多く、勝たせてもらっていましたが、阪口先生は、私が指導者になった時から、まるで恩師のようにいろいろ面倒を見てもらっていました。練習試合も、多くやらせていただいていましたけれど、今回も、組み合わせが決まった時から、とにかく目標とさせていただいていました」と、結果的には辛勝となった試合だったが、相手のベテラン指揮官に対ししてはしきりに恐縮していた。
(文=手束仁)