試合レポート

桜美林vs都立武蔵

2012.09.29

桜美林vs都立武蔵 | 高校野球ドットコム

長縄 俊吾(都立武蔵)

来春楽しみな都立武蔵10人衆

第7ブロック代表決定戦。
桜美林に立ち向かった都立武蔵の部員は僅か10人。ただこの中に荒削りだが、ひと冬越していけば楽しみな選手がいた。

1番サード長縄 俊吾(右/右 183センチ81キロ)
4番ファースト 足立 舜(右/左 171センチ76キロ)
7番ピッチャー 西崎 陸(右/右 181センチ83キロ)

3人は私立の選手にも負けない体格。長縄は一生懸命なプレースタイルに、常にフルスイングを心掛ける豪快な打撃が持ち味。足立は恵まれた体格をしているが、バットコントロールが柔らかく、ボールを上手く遠くへ運ぶことが出来る打者。西崎は地肩が強く、フォームは荒削りだが、中々威力あるストレートを投げている。見所のあるチームだった。

2回表、都立武蔵はその4番足立が右中間を破る二塁打を放つ。速い打球があっという間に外野手の間を抜けていくものだった。二死三塁となって7番西崎がレフト前ヒットを放ち、1点を先制する。桜美林のエース末藤のストレートにしっかりと付いていくことができている。

都立武蔵はこのまま流れを掴んでいきたいところだったが、そうは甘くなかった。
2回裏、6番吉藤がライト前ヒットを放つと、位置死一塁から8番田口の一塁ゴロを足立がファンブル。一死一、三塁のピンチを招く。9番岩渕は高めのストレートで空振り三振に取ったものの、1番小林に四球。2番河合に押し出し四球を与え、同点に追いつかれてしまう。さらに3番田口に高めに抜けたストレートを強振され、フェンス直撃の走者一掃の二塁打で、4対1と勝ち越される。

だが都立武蔵も意地を見せる。
3回表、一死から1番長縄が打席に入った。長縄は高めのストレートを強振し、田口の弾道の上を行く豪快な本塁打を放った。長縄は驚きを隠せない表情で、ダイヤモンドを一周した。

長縄はクリーンナップを打っていてもおかしくない力を持っているが、核弾頭を打っている。
その理由を都立武蔵・池上茂監督を聞いてみた。
「本当は3番を打っているのですが、前回の京華商戦で気負いが見えていたので、気楽なところで打てる一番を打たせました」
起用がズバリと当たった一打だ。性格的にも彼は核弾頭に向いているかもしれない。彼は第1打席で初球から打っていった。結果はサードゴロだったが、積極果敢な打撃スタイルは投手にとっては怖い。このスタイルが嵌って彼が本塁打を量産出来る一番打者になったら、私学の投手にとっては脅威になる存在かもしれない。


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4番足立 舜(都立武蔵)

試合の方は、都立武蔵の先発・西崎が中々桜美林打線の勢いを止めることができない。3回裏にもタイムリーが3つと犠牲フライで一挙4点を失い。3回8失点で無念の降板。4回裏からサードを守っていた長縄が登板したが、4回裏に8番田口のレフト前タイムリー。そして5回裏に4失点。最後は押し出し四球を与え、5回コールドゲームとなった。

桜美林は大量点を取っても、バントで手堅く進め、ランナー三塁の場面では犠牲フライで着実に点を積み重ねていく好チームだ。大振りにならず、自らの役割に徹する堅実な野球は本大会でも貫いてほしい。

都立武蔵は無念の5回コールドとなったが、6安打3得点。桜美林の末藤にしっかりと喰らいついていっている。長縄、足立を中心に振れていた。

「本当はこの試合は23日でしたが、雨で延びたので、この1週間、マシンでいつもより速度を速めたり、投手をいつもより近い距離から投げさせて対策をしてきたのですが、それが良かったかもしれませんね」
桜美林・吉藤に向けてしっかりと対策を取ってきたようだ。打線ではそれなりにやれる手応えを掴んだ。

今後の課題は、やはりディフェンス面となるだろう。
「今日は無駄な四球を与えたり、大事な所でエラーをしたりとそこが大量点につながりました。西崎、長縄ともに体格が良いですから、威力あるストレートを投げますし、都立の投手としては良いです。ただ強豪校に渡りあえるには、この冬に追い込めるかにかかっています。この秋は10人しかいなかったので、怪我をさせないように、あまり追い込む練習ができなかったのが反省点です。この冬は追い込んで練習をしていきたいですね」と池上茂監督も話す。

 
彼ら素材としては強豪校に劣るわけではない。ただ強豪校の選手に比べるとまだ追い込みが足りないようにも感じた。10人しかいないので、個々の能力アップがそのままチーム力アップにつながっていく。長縄、西崎、足立を中心に各選手が自分から追い込んで練習を重ね、来春は中身の濃い10人衆になることを期待したい。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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