桜丘vs瀬戸
桜丘・長井
桜丘、辛勝で初戦突破 2回戦で宿敵対決へ
愛知県内の注目校のひとつに愛知桜丘が挙げられる。近年はずっと上位グループの一角を形成し、今年の春の大会でもベスト8入りして夏はシードされた。5回戦では中京大中京に一時6点リードされたが追いつき、延長11回の大接戦を演じている。大学や社会人で野球を続ける好選手も続々輩出中だ。
だが新チームで迎えた秋の県大会初戦は、苦しい展開を強いられた。公立の愛知瀬戸に苦戦し、7回までは無得点。8回裏にようやく相手ピッチャーの暴投で同点に追いついた。10回裏、一死満塁で5番田中寛也(1年)の打球は三塁前へ緩く転がるゴロとなり三塁走者がホームを陥れ、辛くも2回戦進出を決めた。
「今度の新チームは、まだまだ力がない。『終わってみたら勝っていた』という形でいい」とは、試合後の杉沢哲監督の談だ。旧チームのレギュラーは8人が3年生だった。主力が抜け、新メンバーの経験の浅さは否めない。この日、送りバントのミスは3度を数えた。
「地区大会ではバントが決まっていたが、県大会では決めさせてくれないもの。だから練習で『そんなバントでは駄目だ』と言っていたが、今までは成功していて、選手はピンときていなかったようだ。だが今日の試合のミスで身をもって分かったはず。試合をしながら、反省を重ねながら、覚えていくしかない」と、ナインを引き締めた。
劣勢だった桜丘にあって、エース長井良太(2年)の好投は光った。立ち上がりこそ失点したが、威力のあるストレートとスライダーを駆使して2回から8回までは安打を許さず、凡打の山を築いた。「自分の学年の代になって、ようやく気持ちが入ってきたようです」と杉沢監督は笑いながらも、「元々は期待していたピッチャー。気持ちで投げられるし、ふてぶてしさは投手向き」と、完投勝利の右腕に期待を込めた。
野手にも好素材はいる。4番で捕手の鳥居ゆうじ(2年)は低目の球もヒザを使ってうまく打ち、3安打をマーク。1番の横田創(2年)もミート感覚に長け、スピードを生かして三塁打を放った。6番大苫創平(1年)は体躯がよく、スケールの大きさを感じさせた。
2回戦では強敵・愛工大名電が待ち受ける。昨秋は相手エース・浜田達郎(当時2年)にノーヒットノーランを喫し、苦汁をなめた。この日、スタンドには名電ナインが陣取り、愛知桜丘は“敵情視察”を受ける形となったが、指揮官は「相手は横綱。思い切っていくしかない。失敗をおそれず、失敗してナンボだという気持ちでぶつかりたい」とチャレンジャー精神を強調した。
愛知瀬戸は惜敗したが、戦いぶりは見事だった。特に背番号 1の阪本大明(2年)が投打に活躍した。投げては4回表途中からリリーフし、ピンチを三振やゲッツーで切り抜けるなど好投。真上からの威力あるストレートで打者を差し込み、スライダーで翻弄した。打ってもヘッドスピードがあり打球が強烈で、非凡な才能を見せた。打線は初回、四死球や安打で満塁とし、5番中尾啓夢(2年)の内野安打で先制。先発した左腕・中島健登(2年)もよく粘った。
(文=尾関雄一朗)