樟南二vs松陽
9回、勝ち越しとなる5点目をあげた樟南二
一か八かの思い切り・樟南二
樟南二が劇的な勝利でうれしい県大会初の8強入りを決めた。迫田清仁監督は「子供たちの力は本当にすごい。こんなことがあるから高校野球は面白い」と目頭を熱くさせていた。
勝利を手繰り寄せたのは「一か八かの思い切り」(迫田監督)だった。序盤からワンチャンスをものにして、リードするも終盤の八回裏に同点に追いつかれる。九回表の攻撃はあっさり二死になり、七回から3年生エースを登板させて追い上げた鹿児島松陽に、流れが一気に傾くかに思われた。
「思い切っていけ!」
迫田監督は次打者の1番・池畑義季を送り出す。二回に同点の二塁打を放っていた池畑だったが「七回に送りバントを失敗したミスを取り返したかった」。初球を迷わず振り抜くと、打球は左中間の最深部へ。余裕で三塁打のケースだが、迫田監督は「一か八かホームまで突っ込め!」とベンチから発する。「中継のボールが転がった」のを目でとらえていた池畑は50㍍6秒の俊足を飛ばし、一気にホームへ駆け抜けた。
その裏の守備でも、迫田監督の「思い切り」采配が生きる。二死一三塁と一打同点、サヨナラのピンチに、八回途中で降板して一塁を守っていたエース林湧茉を再びマウンドに送る。林は次打者を遊飛に打ち取り、厳しい接戦をものにした。
初戦の鹿児島東戦は、5点のビハインドを終盤追いついて、辛うじて延長十一回のサヨナラ勝ち。3回戦の出水工戦は2点のビハインドを逆転勝ちと、一戦一戦勝ち上がるごとに内容が良くなってきた。「一戦一戦、みんなの勝ちたい気持ちが高まっている」と殊勲打の池畑は言う。先日は徳之島が強豪・樟南を破り、この日は樟南二がベスト16の壁を初めて超えた。「闘牛の島」の野球が、この春の鴨池を熱くさせている。
(文=政純一郎)