神村学園vs大島
6回表神村一死一塁、代打・山﨑が中越え二塁打を放ち、4―3と勝ち越す
引き継がれる遺伝子・神村
九州を制した2年生チームの「遺伝子」が1年生にも引き継がれている。そんなことを感じさせた神村学園の鮮やかな逆転勝利だった。
三回までは完全な大島ペースで3点を先取された。神村は、チャンスを作りながらも走塁ミスや適時打が出ず無得点。「並」のチームなら一気に押し切られてもおかしくない展開だ。だが神村はそこから試合をひっくり返す。ちょうど九州大会で、本チームが3点先制されながら動ぜず逆転勝ちした準々決勝の大分戦のように。
「緩いボールに対して、待ちきれずに自分のスイングができていなかった。十分に引きつけて自分のスイングをすることを心掛けた」
大坪直希主将は四回以降、流れを切り替えたポイントをこう表現する。四回に相手のエラーや判断ミスを足掛かりにして瞬く間に同点に追いついた。六回代打・山﨑の中越え二塁打で逆転に成功すると、八回は打者11人8安打を集中して6点を挙げ、一気に勝負を決めてしまった。終わってみれば22安打14得点の快勝だった。
守備では2失策を喫し、けん制アウトや先の塁を狙ってアウトになるシーンが4回あるなど、試合経験の乏しい1年生チームらしい「荒削りぶり」は当然ある。ただ「先の塁でアウトになるのはOK。拍手でベンチに迎えることを心掛けた」と大坪主将は言う。そういう「失敗」を数多く経験することで、神村の持ち味「積極的に先の塁を狙う」野球は磨かれていくのだろう。
2011年は春の県大会から始まって、NHK旗、夏、秋と県大会はすべて制しており、今大会で優勝すれば、県大会の「完全制覇」になる。実力未知数の1年生チームだが、大坪主将は「3年生、2年生が良いプレッシャーを与えてくれた。自分たちも優勝したい」と完全制覇に意欲を燃やしていた。
大島にとって悔やまれるのは四回の守備だった。前日の加治木工戦は13安打されながら無失策で守り切った守備が初失策を喫し、一死一三塁で、投ゴロを松下がなぜか二塁併殺を狙わず、三塁に投げてしまった。挟殺でアウトひとつはとったものの、走者を残してしまいこれが同点劇につながった。「リードしてから逆に動きが硬くなった」と渡邉恵尋監督。四回以降は打球の質の違いや、試合巧者ぶりなど個々の力の差をまざまざと見せつけられた。
だが渡邉監督は「九州覇者を相手に戦える『手がかり』は残してくれた」と悲観はしていない。ファーストストライクから積極的に打っていく打線は、神村が相手でも点が取れたことは自信になった。「あとは勝負どころでしっかり抑えられる守備を鍛えること」と課題が明確になった。
(文=政純一郎)