試合レポート

札幌第一vs札幌新川

2011.10.09

札幌第一vs札幌新川 | 高校野球ドットコム

攻守にチームを引っ張る村田主将(札幌第一)

札幌第一9年ぶりの決勝へ

 前半の5イニング全てで、お互いが先頭打者を出塁させる珍しい展開になった第2試合。この5イニングはまさに〝耐え合い〝だった。
先に攻める札幌第一はその5イニング全てで送りバントを成功させている。札幌新川の新井田猛監督が、「試合巧者」と相手を讃える要因になったのは、このバント成功がミソになっている。

3回、札幌第一の先取点は3番高石大全(2年)のセカンドゴロの間。そして4回の追加点は、2死1、3塁から一塁走者が牽制で挟まれる間に三塁走者がスタートを切るトリックプレー(記録は野選)。
耐え合いの中で、こういったタイムリーのない得点がまさに試合巧者ぶりを示している。
「トリックプレーに対応する練習はやっていたんです。でも、この(大きな)舞台でできなかった。三塁走者のスタートも早かった」と新井田監督は唇を噛みしめた。
一方で、札幌新川も毎回チャンスを作っていたわけである。

こちらも一度だけバントを失敗した以外は全て走者を進めた。しかしあと1本が出ない。いや、札幌第一サイドが出させなかったというべきか。

札幌第一の菊池雄人監督がこの日のゲームで先発に起用したのは、今大会初登板となる菊田七生(1年)だった。「中々登板はなかったが、最近の練習でも一番ゲームを作れていた」と意図を話した菊池監督。その裏には、『投手総力戦』の意図も隠されていた。

先発した菊田を献身的に支えたのが主将でキャッチャーの村田皓大(2年)。1回、1死2塁から3番の川中拓摩(2年)を三振に取った時、すかさず村田はマウンドに向かった。
2回に8番渡邊康介(2年)に対してボールが2球続いた時も同様だった。話の中で、ポンポンとお尻を叩く村田。
「1年生ですし、緊張しているのをほぐすためもあった」とピッチャーを気遣った村田。3回のピンチで代わった横内雅樹(1年)がコントロールに苦しんでいた時も迷わず駆け寄った。


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エース・知久将人(札幌第一)

札幌新川打線にあと1本を出させなかった札幌第一守備陣。主将の檄に応え、投手も見事にゲームを作った。
6回表、その主将がゲームの流れを決める一打を放つ。このイニングも先頭を出した札幌第一だが、初めて送りバントを失敗し、2死走者なしとなって村田が打席に立った。
札幌新川のエース・深尾翔斗(2年)は1球目でストライクを取る。直後の加藤球審がマウンドへ駆け寄って、一言注意を受けた。
「セットポジションのことでした」とこの場面を話した深尾。

タイムが解けて、2球目を村田は叩いた。ライト前へのヒット。さらに8番牧野堅哉(1年)の3球目で盗塁を決める。
そして4球目。牧野が放った打球はレフトの頭上を越えた。札幌第一にとって待望のタイムリーとなる三塁打。
「流れを悪くしたくなかった」と話したのはホームを踏んだ村田。打たれた深尾は注意による影響は否定したが、ここで浴びた一本は痛かった。

その裏からはエースナンバーを背負う知久将人(2年)がマウンドへ。

9回に1点を失うものの、ヒット2本に抑える好投で勝利に繋げた。
菊池監督が話した通り『投手総力戦』で制した札幌第一。その影に、マスクを被る主将がしっかりバックアップしたことも大きい。
決勝は2002年以来ぶり。前回は駒大苫小牧に0対12で大敗。その前の1999年には北照に10失点で敗れた。「明日も投手陣で勝ちたい」と話した菊池監督は初の全道頂点を見据えた。

一方、敗れた札幌新川の新井田監督は「粘りのあるチームというのはかっこいいけど、力のあるチーム相手ではそうはいかない。ここから勝つのが難しい。カベですね」と痛感した様子。ただ点差があったこともあるが、9回のピンチではバックホームシフトではなく、1つのアウトをしっかり取ることにこだわった。さらにその裏には先頭の7番菅原康平(2年)の二塁打から、1点を返すなど最後まであきらめず一矢報いたのは見事だった。
「(両校全校応援の)この雰囲気を経験できたのは、次に繋がる」と話したのはエースの深尾。秋全道初勝利からベスト4まで勝ち上がった札幌新川。この経験をどう来年に生かせるか。

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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