試合レポート

鹿児島実vs神村学園

2021.07.25

「3年力」で苦境跳ね返す!・鹿児島実

鹿児島実vs神村学園 | 高校野球ドットコム
鹿実サヨナラ勝ち・板敷

 鹿児島実神村学園。県下屈指の強力打線を擁する両者の対戦は互いの持ち味を出し合いながら、3時間に及ぶ熱戦を繰り広げ、最後は劇的な幕切れが待っていた。

 先手を取ったのは鹿児島実。初回に4番・井戸田直也(3年)のセンターオーバー二塁打で先制し、2回は4つの四死球、押出しで追加点を挙げた。

 神村学園は初回から走者を出して押し気味に試合を進めるも、併殺や相手の好守に阻まれ得点できない。

 それでも3回表に今大会絶好調の1番・甲斐田紘整(3年)のライトオーバー二塁打で1点を返す。6回は一死から連打、四球で満塁とし、7番・長谷杏樹(3年)、8番・松岡輝(3年)の連続長打で計4点を返して一気に逆転に成功した。

 神村学園先発のエース泰勝利(3年)は3回以降、制球が安定し140キロ超の球威で鹿児島実打線に追加点を許さず、このまま神村学園が勝ち切りそうな雰囲気を感じた。

 だが鹿児島実が終盤意地を見せる。6回途中から右腕エース大村真光(3年)を投入。失点を食い止めると7回裏は3番・城下拡主将(3年)、8回は9番・福﨑浩志郎(3年)がいずれも二死からタイムリーを放って1点差に詰め寄る。

 9回裏は一死一二塁から5番・板敷昂太郎(3年)がライトオーバー二塁打を放って土壇場で同点に追いついた。
 なおも二三塁と一打サヨナラのチャンスだったが、泰が踏ん張って後続を断ち、試合は延長にもつれた。

 10回表、前の回で大村に代打が出たため鹿児島実は先発の赤嵜智哉(2年)を再びマウンドへ。7回以降追加点がなかった神村学園打線が一死から火を噴く。4番・前薗奎斗主将(3年)、5番・中島悠登(3年)が連打で出塁。途中出場の6番・上迫稜弥(2年)の送りバントが三塁悪送球を誘い満塁。6回に逆転打を放った7番・長谷がライトオーバー二塁打。長谷が二三塁間で挟まる間に一走も生還し、3点を勝ち越した。

 これで神村学園が勝機をつかんだかに思われたが、鹿児島実の底力は計り知れない。

 その裏、一死から連続四球、エラーで1点を返し、3番・城下、4番・井戸田の連続タイムリーで同点。最後は9回に同点打を放った5番・板敷がセンターオーバーの勝ち越しタイムリーを放ち、逆転サヨナラ勝ちで3年ぶりの決勝進出を決めた。



鹿児島実vs神村学園 | 高校野球ドットコム
神村円陣

 鹿児島実は2度の3点差を跳ね返し、難敵・神村学園にサヨナラ勝ち。城下主将は「3年力の勝利」と3年生を中心にしたチーム力を勝因に挙げた。

 先手を取りながらも、神村学園のエース泰の140キロ超の球威に押され、畳みかけられない。6回は先発の2年生左腕・赤嵜がつかまり、集中打を浴びて4失点で逆転された。

 相手の持ち味を出されて一気に劣勢に立たされたが「1点ずつ返していこう!」と宮下正一監督。3年生エース大村が6回途中からリリーフして後続を断ち、7回以降を無失点で抑える。打線は7回に3番・城下、8回は9番・福﨑、9回は5番・板敷、いずれも3年生が適時打を放って9回土壇場で同点に追いついた。

 10回はマウンドに戻った赤嵜が、神村学園打線に集中打を浴び、守りのミスも重なって3点差をつけられた。

 再び土俵際に追い込まれたが、鹿児島実の闘志は緩まない。表の守備でバント処理をミスした板敷は「絶対、俺まで回ってこい」と念じていたという。エラー、3番・城下、4番・井戸田のタイムリーで同点に追いつき、チームメートが名誉挽回の好機をお膳立てしてくれた。2ストライク追い込まれたが「外野フライでいい」とリラックスして、真ん中低めの変化球を左手一本ですくい上げ、センター頭上を越える値千金の決勝打を放った。

 5月のNHK旗では準決勝で鹿児島城西に敗戦。昨年の夏季大会、昨秋と3度同じ相手に完敗しており「点差が開くとあきらめの雰囲気が漂ってしまう」(板敷)弱点を痛感させられた。NHK旗以降は「3年生が先頭に立ち、下級生がミスしても3年生が挽回する」意識を練習から徹底していたと城下主将は言う。

 3点差をつけられた10回でも「ベンチの雰囲気は全くあきらめていなかった」と板敷。「監督の采配ミスを選手たちが挽回してくれた」と宮下監督も驚く執念を3年生たちが見せてくれた。決勝の相手は宿命のライバル樟南。城下主将は「最後に勝つのは鹿実」と3年ぶりの大旗奪取に自信をのぞかせていた。

(文・写真=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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