試合レポート

藤枝明誠vs東海大静岡翔洋

2016.10.01

“最強のヘボ軍団”を目指す藤枝明誠、2年連続の東海大会進出決める

藤枝明誠vs東海大静岡翔洋 | 高校野球ドットコム

藤枝明誠・久保田君

 昨年秋に、3位で初めて東海大会進出を果たした藤枝明誠。この秋は2年連続を目指すチャンスで挑んだ準決勝となった。また、東海大静岡翔洋は、今春から東海大系列校はいずれも学校名として土地名をつけるということで、東海大翔洋から東海大静岡翔洋となった。その、新校名を広く知らしめるためにも、より上のステージへ向かいたいところである。

 そんな両校の対決は、藤枝明誠は右変則気味のサイドスロー久保田君、東海大静岡翔洋は左の本格派飯澤君の先発で始まり、序盤は投手戦の様相となった。0対0の均衡を破ったのは藤枝明誠だった。

 4回、藤枝明誠は先頭の5番小野君が死球で出ると、送りバントが犠打失策となり無死一二塁。その後、バント失敗もあったのだが相手失策もあり二死満塁という場面を迎える。ここで1番常盤君が右前へ、この日、自身で3本目の安打を放って2者を迎え入れる。藤枝明誠としては、貰った形の好機で、一番信頼のできる打者がきちっと結果を出すといういい形の得点だった。

 このリードで、久保田君の投球はますますリズムに乗ってきた。5~8回は東海大静岡翔洋の強力打線を、3人ずつできっちりと押さえていた。元々は、右のオーバースローだったのだが、入学して半年くらいで、このままではスピードがそれほどあるわけでもないので打たれるということに気付いた。そこで、いろいろ投球フォームを研究してきた。そして、最終的に、足をピンとはね上げてから、くるっと腰の回転を生かしてクセ球を投げ込んでいくという今のフォームにたどり着いた。スピードは増すことはなかったが、スライダーとチェンジアップを持ち球として、この使い方でストレートも早く見せられるようになったという。ことに、東海大静岡翔洋のような、強力でパワーのある打線にはうまくはまると、この日のような好投となるようだ。


藤枝明誠vs東海大静岡翔洋 | 高校野球ドットコム

東海大静岡翔洋・飯澤君

 そして8回、藤枝明誠はまたも死球からチャンスを作って、二死三塁から内野失策で追加点を奪う。なおも、途中出場の河合君と一戸君の連打でダメ押しともいえる4点目を加えた。

 東海大静岡翔洋は、9回に二死走者なしから2番中島君と続く奥村君の短長打で1点を返して一矢を報いたものの、そこまでだった。死球と失策がことごとく失点に結びついてしまったのも東海大静岡翔洋としては痛かった。原 俊介監督としても、いささか悔いの残るところではあろう。まずは、気持ちを切り替えて東海大会を目指していくことがテーマとなるだろう。

 これで、2年連続で東海大会進出を果たした藤枝明誠。光岡 孝監督は、「去年は、とにかく東海大会に出場しようと狙っていました。それが果たせたのですが、そこで満足してしまったところがあったのかもしれません。逆に今年のチームは、力はそれほどありませんけれども、“へボ軍団”でもここまで来られました。選手には“最強のヘボ軍団”になれと言っています」と笑う。確かにドカンと一発を放り込めるようなパワフルな打者もいない。力でぐいぐいと抑え込んでいくような投手でもない。だけど、自分たちの持てる力をどのようにして発揮していかれるのか、そのことを考えながらのチームが、着実に成果を挙げている。光岡監督もそのことを実感しているようだ。

 「本気で甲子園を狙っていくという気持ちで戦っています。そのためには1位で県代表にならなくてはいけません」と、中京大中京出身の光岡監督は、ここへきて強いチームの意識を改めて選手たちに植え付けていこうという意識である。

 目指す“最強のヘボ軍団”へ、ムードは盛り上がっている。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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