試合レポート

大阪桐蔭vs清水谷

2012.04.09

大阪桐蔭vs清水谷 | 高校野球ドットコム

先発した澤田圭佑(大阪桐蔭)

大阪桐蔭と清水谷、それぞれの春

 春の選抜大会決勝から4日。紫紺の大旗を手にした大阪桐蔭が、早くも春季大会初戦を迎えた。5日に学校に戻り、6日は始業式と大阪府庁訪問、7日には授業が始まり、水本弦主将(3年)によれば「自主練習中心で合わせて3時間程度」という練習時間での大会突入となった。
 ただ、生活は甲子園のけん騒から日常に戻り、西谷浩一監督も「学校があっての高校野球ですから」と日程は言い訳にならないこと強調していた。

 この春初戦のマウンドを託されたのは背番号10の澤田圭佑(3年)。甲子園では準々決勝浦和学院戦で先発し5回1失点と好投した右腕。そしてスターティングメンバーも4番に甲子園ベンチ外だった辻田大樹(2年)が入った以外は、ほとんど変わらずに臨んだ。

 澤田は、立ち上がりの1回表をヒット1本で切り抜けると、その裏には1番森友哉(2年)が先頭打者本塁打であっさりと先制。甲子園同様に打撃の好調さを維持しているかに見えた。

だが、3回に清水谷の2番中嶋駿(3年)のタイムリーで同点となると、4回には、2死3塁から9番瀬戸川大喜(3年)にレフト前へ運ばれ、勝ち越しを許した。

 「澤田さんは調子が良くなかった」と感じていたキャッチャーの森。
さらにこの2点はどちらもエラーが絡んでのもので、「気の抜けたようなプレーが見られた」と水本主将は険しい表情になった。
 4回裏、6番安井洸貴(3年)が同点本塁打を放つと、ようやく打線が繋がりだす。9番澤田のタイムリーで勝ち越し、5回には5番小池裕也(3年)のタイムリーと安井の犠牲フライで2点を追加して流れを取り戻した。
 結局7回には2番大西友也(3年)からの5連続長短打などで一挙4点を奪ってコールドに持ち込んだ大阪桐蔭。夏へ向けての第一歩目で、あらためて厳しい山の頂に挑む難しさを味わったようなゲームだった。
甲子園後、「日常に戻りましたが、選手たちがどうなるかなと思って、あえて多くの言葉をかけなかった」という西谷監督。水本主将は、「これまで、できていた全力疾走などができなくなってはダメだ」とチーム声をかけたという。

 ただ主将や森の言葉からは、『頭では夏へ向けて切り替えるとわかっているが、気持ちがまだついてきていない』という思いが見て取れた。甲子園で優勝したとはいえ、彼らもまだ高校生。気持ちの切り替えはやはりそう簡単なことではない。
 「学校内や外でも注目されますし、しっかりと地に足をつけてやること」と話した西谷監督。甲子園で見せたチームの根幹である粘り強さ。それには、やはり私生活からが大事だと指揮官は感じているようだ。

 「昨日(7日)、春季大会のメンバー発表があったのですが、漏れた選手は一人も落胆していなかった」と話した主将の水本。ケガで今大会は外れた主砲の田端良基(3年)ら、特に3年生は最後の夏の大会でのベンチ入りを目指して努力を重ねる。主将の言葉にあった気の抜けたようなプレー。それが改善されない選手は夏のベンチ入りに大きく関わってくるだろう。

 この日は、100パーセントの動きができなかった選手も、日常で時間をかけてリセットし直していけば良いように思う。そしてその先に日本一険しい山への挑戦が始まる。


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清水谷ベンチ

 一方、敗れた清水谷だが、選手たちは試合前から大きな声を出して実に楽しそうに動き回っていた。それもそのはずで、これが昨秋以来の公式戦。久々に背番号をつけて試合をする彼らの喜びは相当なものだっただろう。しかも相手は選抜優勝校。

 「甲子園が始まる前に、大阪の組み合わせは決まっていたのですが、その後に優勝されたチームと対戦できることになった。選手にとっては良いモチベーションになったと思います」と話した林拓磨監督。さらに、「勝ったらお前たちが日本一だぞ」とハッパをかけていたという。
 大阪桐蔭の澤田を打って一度は勝ち越しに成功。この時のベンチの盛り上がりは特に印象深かった。
 エースの瀬戸川は、緩急をつけた投球術で四死球などの無駄な走者はほとんど出さない。それにバックも無失策で応えた。結局、大阪桐蔭にとっては、打つしかないという流れを作りあげたのだ。
 「冬場はとにかく走ることと守備、それに走塁に力を入れてきた」と話した林監督。その成果はいかんなく発揮していた。

 最後は力負けする形になってしまったが、この経験を生かす場は夏に残されている。
 昨秋、今春と初戦で敗れ今のチームはまだ勝利の味を知らない。「夏こそ勝ちたい」という指揮官の言葉はナイン全員の思いでもある。

 甲子園優勝校と、勝つ喜びをまだ味わえていない公立校。状況は様々であるが、夏が最大の目標だというのは共通している。
 グランドを去る両チームの選手たちの目は、すでに夏に向いているようだった。

スターティングメンバー
清水谷】8杉浦、4中嶋、7松井、5岡、2小川、3小阪、9小泉、6松本、1瀬戸川
大阪桐蔭】2森、4大西、9水本、5辻田、3小池、7安井、6笠松、8白水、1澤田

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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