試合レポート

【春季東京都大会】明大中野が序盤のリードを守り切り準々決勝進出!早稲田実業・宇野は3試合連続本塁打

2024.04.15


先制打を放つ牧田 健吾(明大中野)

【トーナメント表】東京都大会 結果一覧

<春季東京都高校野球大会:明大中野3-1早稲田実業>◇14日◇4回戦◇スリーボンドスタジアム八王子

スタンドには早稲田実業明大中野の応援団も繰り出し、早明戦の熱気を帯びていた。明大中野の岡本良雄監督は「御大」と呼ばれ、東京六大学野球の名物監督であった島岡吉郎氏の、晩年の教え子になる。岡本監督は、恩師の写真を帽子に入れて試合に臨んでいた。島岡氏は「早稲田、慶應には絶対に負けるな」と繰り返し言っていた。この試合は、そんな明大中野の闘志を感じさせる一戦になった。

一方、早稲田実業はエースの中村 心大投手(2年)が負傷で投げることができず、投手陣のやり繰りは厳しい。この試合では、制球のいい中島 颯之介投手(2年)を先発のマウンドに送った。しかしこの試合の中島は、立ち上がり制球が乱れ、2つの四球などで2死一、二塁のピンチを招き、明大中野の5番・牧田 健吾捕手(3年)の中前安打で二塁走者が還り、明大中野が1点を先制する。

2回も明大中野は、7番・田中 健吾内野手(3年)の二塁打の後、8番・佐伯 魁栄投手(3年)のバントは失敗し、田中は三塁で刺されるが、9番・多田 光誠内野手(3年)、1番・吉田 海渡内野手(3年)の連続安打で満塁となり、早稲田実業はここで投手を山﨑 啓生投手(3年)に交代する。明大中野の2番・高岡 珀人外野手(3年)の二ゴロの間に三塁走者が生還してさらに1点を追加する。明大中野は、なお2死一、三塁のチャンスが続いたが、山﨑が後続を抑え、明大中野のリードは2点止まり。早稲田実業打線の威力を考えれば、まだまだ分からない展開であった。

しかし、この試合では、明大中野の先発・佐伯の丁寧な投球が光った。「この冬、しっかり走り込み、投げ込みました」と語る佐伯の投球は、秋とは見違えるほど制球が良くなっていた。特に「単打はOKという気持ちで投げました」と言う、早稲田実業の中心打者、1番の宇野 真仁朗内野手(3年)に対しては、低め低めを丁寧に突く投球で、第3打席までは凡打に打ち取った。「丁寧に投げて、宇野君を抑えてくれました」と明大中野の岡本監督は語る。逆に早稲田実業の和泉実監督は、「宇野が打てないと、こういう試合になる」と語り、早稲田実業としてはもどかしい展開になった。

それでも、早稲田実業の2番手・山﨑は、3回に安打を1本打たれた以外は明大中野打線を抑えて、試合に緊迫感をもたらした。3回以降は両チーム0点が続く。

野手の好守もあり、早稲田実業打線を抑え続けていた明大中野の佐伯だが、8回に入ると「疲れました」と佐伯は言う。4月とは思えない暑さに、早稲田実業打線の迫力もあり、佐伯の球も乱れ始める。8回、早稲田実業は、3番・高崎 亘弘内野手(3年)の内野安打、4番・石原 優成外野手(3年)の四球に5番・内囿 光太内野手(3年)の犠打で二、三塁とし、6番・灘本 塁外野手(2年)の二ゴロで三塁走者は動くことができず、2死二、三塁になったところで、明大中野は佐伯に代えて田中 俐希投手(2年)をマウンドに送った。佐伯は「頼りになるピッチャーなので、安心して任せました」と言えば、田中俐も「腹をくくりました」と言う、明大中野としては想定通りの投手リレーだ。田中俐は早稲田実業の7番・唐箕 大和外野手(3年)を二ゴロに抑え、明大中野にとっては、この試合最大のピンチを切り抜ける。

明大中野は9回、6番・岡田 麟多郎内野手(3年)が中前安打で出塁した後、早稲田実業にバント処理のミスが出て、岡田が一気に生還し、明大中野としては貴重な、早稲田実業としてはもったいない1点が入った。

3点を追う早稲田実業は9回の攻撃も2死になる。ここで1番・宇野がセンターのフェンスを越える本塁打を放った。「狙っていたストレートを打ちました。センターの深いところだったので、入るかどうか、分かりませんでした」と語る。宇野はこの大会で3試合連続の本塁打。それも全て木のバットで記録した。一方、打たれた明大中野の田中俐は、「宇野君は知り合いなので、意識しているところはありました」と言う。宇野と田中俐は小学生時代、浦安ベイマリーンズに所属していたチームメートだった。

宇野の本塁打の後、四球の走者は出たものの攻撃は続かず、3対1で明大中野早稲田実業を破った。主将でもある宇野は、「自分が打たないと、という責任に負けました。冷静になれない自分がダメでした」と語る。それでも、3試合連続の本塁打で力のあるところは示した。後は打線のつながりと、投手陣の安定が課題となった。

一方、明大中野はこの大会では、まずベスト8が目標だった。ベスト8に進み、次は日大豊山と対戦する。これからは、目標のさらに上を目指しての戦いになる。

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この記事の執筆者: 大島 裕史

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