独自のセイバーメトリクスの指標も開発!伝統校・鳥羽に現れた文科系マネージャー
橋詰祐季
第一回夏の大会の優勝校・鳥羽高校。これまで夏6回春4回甲子園に出場し、今も京都の強豪高校として知られる学校だ。そんな伝統校野球部に“文科系”の男子を発見した。
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グランドに着くなり、目に留まった男子生徒がいた。
真っ黒に日焼けした野球部員の中でひときわ目立つ色白。スラッとした体型でタブレットを持っている。
ちょっと野球部員に見えないこの男、京都・鳥羽高校野球部の橋詰祐季くんだ。サイバーメトリクスを駆使して野球を数値化して、選手をサポートする異色のマネージャーである。
橋詰くんが野球のデータに興味を持ったのは、小学三年生まで遡る。テレビで野球中継を見ていた橋詰は、スコアに興味を持ち「野球の記録を取ってみたい」と感じたという。中学三年生になったとき、父からパソコンをもらい、エクセルに野球のデータを入れ始めた。最高の玩具を手に入れた橋詰くん。独学でエクセルを使いこなせるようになり、ますます野球データに夢中になっていった。
高校受験を控え、鳥羽高校の学校説明会を訪れた橋詰くんは当時野球部の監督をしていた山田知也先生に出会う。
「山田先生に『野球のデータに関わる仕事をしたいんです』と相談すると、『大歓迎です』って言ってくださったんです。その時点で『鳥羽の野球部に入る』って決めました」(橋詰くん)
独自に開発した指標「進塁率」
野球部に入部した橋詰くんは、セイバーメトリクスを早速導入して、データ解析を始めた。「進塁率」という独自の指標も作った。これは一塁に進塁された投手が、その後どれだけ進塁をされるか、打者はどれだけ進塁させたか、を数値化するものだ。
「『進塁率が高い人を2番とかにしたら良いんじゃないですか』などいろんな提案を先生に言ったりしてます」
目をキラキラさせながら「データの魅力」を話してくれる橋詰くん。日々集めたデータから「鳥羽の勝利」につながるアウトプットを引き出そうとしている。
「練習効率を上げたりすること、大事だと思っています。例えばデータから『流し打ちができてない』とわかったら、流し打ちを練習する。そういうデータの活用っていうのはできるんじゃないかなって思っています」
もちろん野球はデータが全てではない。しかし、データという切り口があることは、チームにとって大きな強みになる。正しくデータが使えれば、数値から行動の振り返りができ、的確な対応もできるようになる。
夏に向けて橋詰くんが始めたことがある。
「全部の打席を分析する『全打席分析』っていうのをやり始めました。ボールカウント、球種、などを全部出して『この時に打ちました』というデータを全部出してる状況です。選手の傾向をより詳細に掴むことで、強みと弱みがより分かってきて、チームの強化に繋がるんじゃないかなと思ってます」
「この『全打席分析』、結構時間かかるのでまだ終わってないんですけど」とおどける姿にはまだあどけなさが残っている。異色のデータ系マネージャーが鳥羽のこれからに注目したい。
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