Column

25年ぶりの大転換期! 2024年東京の高校野球”3つの見どころ”

2024.01.04


円陣語りかける日大三・三木有造監督

約四半世紀ぶりの転換期
東京の高校野球は転換期の中にある。昨年、日大三日大二桜美林創価堀越、専大附、明星などの監督が交代した。日大三は夏の西東京大会で2連覇を果たし、9月に堀内尊法監督が就任したばかりの創価は、秋季都大会で準優勝するなど、早くも成果をみせている。それでも新監督のカラーが本格的に出てくるのは、ひと冬越えた24年からだろう。そこで、どんな戦いを繰り広げるのであろうか。このような変化は、約四半世紀ぶりのことだ。

1996年、二松学舎大附の監督に市原勝人氏が就任し、97年に関東一の監督だった小倉全由氏が母校・日大三の監督に就任し、2000年に米澤貴光監督が関東一の監督に就任した。さらに01年には学校移転に伴い早稲田実業が東東京から西東京に移った。

この時期、どういうことが起きていたか。夏は85年以降甲子園から遠ざかっていた日大三が99年に14年ぶりの出場を果たすと、01年に全国優勝するなど黄金期を築いた。

一方、東東京では帝京が02年の夏は甲子園で4強に進出するなど強さをみせたが、99年に都立城東が初出場を果たし、01年も優勝している。2000年は日大豊山が、03年は都立雪谷が初優勝を果たし、05年は、当時は東東京だった国士舘が、夏の初優勝をするなど、群雄割拠の時代になった。そうした時期を経て、長く雌伏の時を過ごした米澤監督の関東一と、市原監督の二松学舎大附が東東京をリードする存在になる。

そういう意味では昨年、西東京では日大三が2年連続優勝したが、東東京では、共学化に伴い05年から出場し、ベスト8が最高成績であった共栄学園が優勝したことは、一過性のものなのか、それとも黄金時代の始まりなのかは、これからをみていく必要がある。それでも共栄学園の優勝は、壁を越えることができなかった多くの学校に勇気を与えるものであったことは確かだ。

こうして迎える2024年は、次の3つの要素が大きな焦点になる。

新基準のバットの導入は関東一などに有利か?

二松学舎大附・片井海斗

まず、新基準のいわゆる低反発バットが導入される。使ってみた学校からは、「木のバットに近い」「野球が変わる」などの声も聞こえる。これから優勝などで結果を残したチームの野球が、新基準バット時代のスタンダードになり、高校野球が徐々に変わっていく可能性もある。

50年前に金属バットが導入されたとき、原辰徳前巨人監督が1年生だった東海大相模(神奈川)などは、バットを長く持って、パワフルな野球をしていたが、多くの学校は木製バット時代と同じようにバットを短く持って、コツコツと当てる打撃をしていた。フィジカルを鍛えて強く振る野球が定着するのは、82年に池田(徳島)が圧倒的なパワーで優勝してからだ。つまり金属バット導入から8年が過ぎている。

もっとも、今日では科学的な分析力が当時とは比較にならないほど進歩しており、もっと短い期間に、新基準バットでの戦い方が見えてくるのかもしれない。とはいえ、しばらくは試行錯誤が続くだろう。

それでも打球が減速するなど、新基準バットの特性を考えれば、足が使えて、守りが鍛えられているチームが有利と考えられる。秋季都大会優勝の関東一は、まさにそうした野球ができるチームだ。西東京では秋は3回戦で大敗したものの、国士舘もそうした野球ができるチームだ。また、国士舘野球の基礎を築いた永田昌弘氏が監督に就任した明星がどのようなチームに仕上がるかも注目される。

もっとも芯でしっかり捉えることができる打者は、新基準のバットになっても影響が比較的少ないのではないか。日本が国際大会に本格的に参加するようになった2012年のU‐18野球W杯では、当時花巻東(岩手)の大谷 翔平(現ドジャース)など、大半の打者が木製バットに苦しむ中、当時、大阪桐蔭(大阪)の2年生だった森 友哉捕手(現オリックス)は、最初から打ちまくっていた。

現在、東京のトップクラスの打者といえば、やはり二松学舎大附片井 海斗内野手(2年)になる。本塁打のイメージが強い片井だが、逆らわない打撃で芯に当てるのもうまい。片井のような打者の場合、本塁打が多少減るかもしれないが、打撃成績全体としてはさほど影響を受けないのではないか。

日大三東海大菅生といった本来打撃のチームが、新基準のバットにどう対応するか注目だ。

帝京、日大三がノーシードで臨む春季大会

帝京・西崎桔平

次にタイブレークへの対応だ。昨夏はタイブレークで二松学舎大附関東一東海大菅生など強豪校が相次いで敗れた。不利とみられていたチームは、強豪校相手に延長タイブレークに持ち込んだことで、精神的に勢いづいていることはあるだろう。したがって、前評判が高い方のチームは、早めに仕掛けてくる可能性がある。秋季都大会の準々決勝の二松学舎大附日大二戦で、二松学舎大附は8回に4番の五十嵐 将斗外野手(2年)が安打で出塁すると、五十嵐に代走を送って勝負に出た。結果論としては、この回に得点できず、4番の強打者がベンチに下がったことで、延長12回には3番・片井が申告敬遠で歩かされ、得点できなかった。それでもタイブレークになる前に、早めに勝負を仕掛けてくることは、今後も増えるのではないか。

さらに今年最大の変数は、春季大会ではノーシードの強豪校が多いこと。したがって春の大会の組み合わせ次第では、強豪校が潰し合って夏はノーシードというケースも出てくる可能性がある。

帝京は、春は1次予選から戦わなければならいない。秋は1次予選で二松学舎大附に大敗したものの、西崎 桔平投手(2年)、奈良 飛雄馬内野手(2年)などを擁する帝京は、上位の実力があることは確かだ。むしろ9月17日に敗れてから、新基準のバットへの対応も含め、しっかり時間をかけてチームを作り、むしろ怖い存在になったのではないか。

夏の東西東京大会で優勝した共栄学園日大三も、ノーシードからの挑戦になる。日体大荏原佼成学園もノーシードだが、力のあるチームだ。それに桐朋も二刀流の森井 翔太郎(2年)の成長次第では上位校を食う可能性もある。

その他、國學院久我山八王子大森学園堀越などは1次予選では大差で敗れているが、点差がそのまま実力差というわけではない。

秋は優勝した関東一と準優勝の創価がやや抜き出ていたが、他校も追い上げてくるに違いない。

気になるのは23年夏はシード校ゼロに終わった都立校の存在だ。秋も都立校は8強に残ることができなかった。

都立城東都立小山台都立日野都立昭和都立文京都立片倉といった伝統的な都立の強豪校に加え、今年注目したいのは都立武蔵丘だ。近年着実に力をつけており、秋の1次予選で東亜学園を破ったことは、都立校としては最高の金星であった。

監督の顔ぶれもかなり変わり、新基準のバットが導入される2024年は、例年以上に混とんとしていると思う。23年の共栄学園に続き、新たな強豪が出現し、約四半世紀前のような戦国大会になるのか、それとも全国的に知られた強豪校が強さを発揮するのか、予想することはできない。それでも各校が互いに高め合い、質の高い好試合が多くあることを期待したい。

この記事の執筆者: 大島 裕史

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