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オリックス・宮城、今や球界を代表する左腕 我喜屋監督が話す「琉球ジジイ」とは

2023.12.14


絶対的エースの山本 由伸投手(都城出身)が抜けた後、オリックスの柱と期待されているのが、来季プロ5年目となる宮城 大弥選手(興南)だ。
宮城は2019年ドラフトで外れ外れ1位でオリックスから指名。1年目の11月に3度目となる先発で、日本ハム相手に5回7安打2失点でプロ初勝利を挙げた。2年目は開幕ローテーション入りを果たし、新人王を獲得した。球団では2008年以来13年ぶり10人目、高卒2年目の投手としては1995年以来25年ぶり5人目、高卒2年目のパ・リーグ先発投手としては史上初の受賞となった。

さらに22年、23年ともに素晴らしい結果を残し、23年のWBCでは1次ラウンドのチェコ戦に3番手として初登板し、5回1失点の好投などの活躍で世界一に貢献した。

『高校野球ドットコム』では宮城投手がプロ2年目を終えた時に、彼の高校時代の恩師・興南の我喜屋 優監督に当時の話を伺っている。宮城投手はどのような選手だったのかインタビューを再構成して掲載したい。
<2021年12月16日>

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入学時からずば抜けていた完成度の高さ

我喜屋-優監督(興南)、高校時代の宮城-大弥(興南)

宮城は宜野湾ポニー時代から評判だった。同チームは県外問わず、甲子園で活躍する球児を送り出し、今年では星稜のマーガード真偉輝投手(2年)、興南の主将・禰覇 盛太郎外野手(2年)など活躍する選手が多い。我喜屋監督は高校野球で活躍する可能性を持った逸材を視察するために、宜野湾ポニーの練習グラウンドに訪れていたが、その時は宮城が目当てではなかった。
「たまたま宮城を見に行ったわけではないですが、宜野湾ポニーの練習に行った時に『この子は面白いよ』という話から見てみたら、大きくはなかったのですが、球のキレはいいし、コントロールもまとまっているなと。それに加えて、実戦的な選手だなと感じました。そういうことで、縁があって興南高校に入ってもらいました」
我喜屋監督は宮城を見たとき「社会人で続けられる選手」と感じたという。
「プロとなると先の話になりますが、私自身、社会人野球(大昭和製紙、大昭和製紙北海道)を経験していたので、そういう経験から、社会人野球でプレーできる選手だと思っていました。何より良かったのは野球小僧という部分です」
宜野湾ポニーの指導者も同じ評価をしていたが、我喜屋監督なりの視点で解説する。
「いわゆる野球小僧ですね。寝ても覚めても、暮れても明けても野球。そして体が強くて、なかなか故障しない。ピッチャーとして活躍できる要素がありました。
ピッチャーは球筋もコントロールも必要だけど、ハート部分でならしていた。1年生から投げても3年生のような落ち着いたマウンドさばきでした。ピンチでもチャンスになっても表情は変わらない子でした」
宮城に限らず、教え子について「野球小僧だった」と振り返るプロ野球選手の恩師は多い。我喜屋監督は宮城のどういう部分に「野球小僧」を感じたのか。
「見ててわかるんですよ。バッティングにしてもピッチングにしても、集中もするけれども、やっぱり楽しんでるなと感じます。他の選手もみんな前向きに頑張っているんですけど、とにかくピッチングもそうだったし、バッティングもそうだし、期待に応えてくれるような、頼りになる堂々とした野球を常にやっていたのが僕が認めるところです」
我喜屋監督は宮城の完成度の高さを評価し、1年生から抜擢。その内容は沖縄大会を勝ち抜き、甲子園に行ける実力はあると実感していた。
「うちは島袋洋奨(元ソフトバンク、現興南コーチ)とか、比屋根雅也(立教大卒)とか甲子園に出場した左投手がいます。彼らを基準にすれば、ここまで到達すれば、相手のチームと戦えるという目安を持っていますから、宮城に関しても1年生だからといって特別にビックリするというのは無かったです」

甲子園出場から「琉球ジジイ」が誕生

高校時代の宮城大弥(興南)

我喜屋監督の目論見通り、決勝戦の未来工科戦で先発した1年生宮城は1失点完投、さらに13奪三振を記録する快投で甲子園出場を果たした。
高校時代のキャッチフレーズ「琉球ジジイ」が誕生したのも決勝戦後だった。彗星のごとく現れたスーパー1年生の活躍。報道陣から「久々の琉球王子の出現ですね」と質問された我喜屋監督はその表現を否定した。
「どこがですか?と(笑)『ベテランみたいなジジイじゃないですか』と話しました。僕は琉球ジジイ、ジジイと言っていたのですが、彼はベテランのようなマウンドさばきで、初々しい、若々しいというよりも、こいつベテランじゃないかなという、落ち着いて任せられる選手でした。
ジジイ=ベテランというイメージ。若々しくて初々しいイメージはなかったので、周りは1年生が出たもんですから琉球王子と言っていたのですが、僕は毎日付き合ってるから『王子じゃないよ』と。王様はオーバーだけど、落ち着いて投げてるベテラン的な表現です」
我喜屋監督の表現は、かなり的を得たものだと感じるプロ野球ファンはかなり多いだろう。高卒1年目から初勝利を挙げ、今年もオープン戦から着々と結果を残し、SNSでは、プロ野球ファンの多くが「高卒2年目の投手とは思えない」というつぶやきが見られ、実際にパ・リーグ関連の情報を発信する動画チャンネルでは、宮城の老獪な投球ぶりをまとめ、「ベテラン」をテーマにして取り上げている。我喜屋監督は中学時代から場数を踏んできたことによって培ったものだと評する。
「高校1年生はどちらかというと経験が浅いのですが、彼は中学から硬式をやって県外に出て沖縄以外の世界大会にも出て相当経験を積んでいましたし、それが興南に来ても活かされていました。やっぱり練習はしていましたし、根をあげるような顔は一回も見たことないし、興南の練習でさらに体作りもできて、バランスのいい体になっていきました」
宮城と同じくU-15代表、中学日本代表となった投手で、ここまで投球が上手い投手は見たことがない。この投球センスはまさに天性のもので、宮城にしかない独自の感覚があったのだろう。

苦い経験を糧にできるのが宮城の強さ

オリックス・宮城-大弥(興南)、我喜屋-優監督(興南)

2年夏も甲子園に出場。3年生になると、ストレートも140キロ後半に達し、切れ味鋭い変化球を武器に春季九州大会では、26イニングで41奪三振、防御率0.65と圧巻の投球内容でNPBのスカウトへ好アピール。世代NO.1左腕と評する声が多くなっていた。
しかし最後の夏は県決勝で沖縄尚学に敗れ、3年連続の夏の甲子園出場はならなかった。我喜屋監督は決勝戦の投球について「らしさ」があまりなかったと振り返る。
沖縄尚学との打ち合いという形になりましたが、高校生であるが故のまっすぐでの勝負が仇になったのかなと」
確かに最後の夏や春の九州大会での宮城の投球は力勝負する傾向があった。老獪さを売りにする現在のピッチングと比べるとギャップがある。どう考えても、次元が違うのだが、NPBの世界では力みが抜けた大人びた投球を実践している。
「当時、押し出しが決勝点になりましたが、あれもツーストライクと追い込んでから、今みたいな緩いボールを投げるのではなく、まっすぐまっすぐで、強気強気が裏目に出たのかなと思います。
宮城が素晴らしいのは、それだけはプロの世界では絶対ダメだぞと自覚し、もう一個緩いボールを使うようになった。そしてキャッチャーのリードもハマってそれが今の宮城のピッチングだと思います」
恩師の発言からは、苦い経験をしっかりと糧にできる宮城の学習能力の高さが分かる。興南の3年間で、宮城がプロの投手として活躍する素質が備わった。そして体力的な土台も高校のトレーニングで培った。投球は老獪そのものだが、マウンド以外ではにこやかな表情、ひょうきんなキャラクターも相まって、先輩選手から可愛がられている姿をよく見かける。そのギャップにファンになった方も多いだろう。我喜屋監督は高校以前の教えが大きいと語る。
「そういう意味では、彼は練習でも決して根をあげないですし、人の悪口も言わないですし、家庭のしつけも良かったと思います。さらに宜野湾ポニーの指導者の教えも非常に良かったなと、こうした繋がりが今日の彼を形成しているんじゃないですか」

これからも大きな花を咲かせるよう、根っこ(土台)を太くすること

高校時代の宮城-大弥(興南)

宮城はオリックスの環境に恵まれ、自分のキャラクターを押し出しながら、メキメキと成長を見せ、今季は13勝を挙げ、リーグ優勝を経験。日本シリーズでは第2戦に登板した。普段から日本シリーズを見る我喜屋監督だが、いつもとは違う気持ちだった。
「僕は結果は聞くけど、1回から9回まで追うよう観ることはあまり無かったのですが、逆に言えば親の気持ちになればあまり観たくない(笑)
他の日本シリーズだったら観るんだろうけど、自分の教え子が出る場合は活躍できるんだろうかというヒヤヒヤしたものがありますから、後からどうだったと聞くことが多いです」
高卒2年目の投手がオリックスのエース・山本 由伸投手(都城出身)に次ぐ勝ち星、防御率を残し、堂々の新人王を獲得した。さらなる成長へ向けて我喜屋監督は教育者としてエールを送った。
「今年、新人王の資格があり、それを認めてもらったと自信を持ってほしいと思います。
ただし、来年も週刊誌やマスコミからの取材も含めて、あくまでも他人の期待と、自分のやるべきことを分けてほしいですし、ムードだけで迎えると落とし穴があるのは明らかですし、その罠にはまらないことですね」
野球人にとって人生で一度しか獲れない新人王は誇れるタイトル。ただプロ野球選手は1年1年が勝負。祝福ムードに終わらず、今季の反省を活かし、レベルアップを目指してほしい願いが込められていた。そして2022年。さらに厳しいマークを受けてプロ野球人生を過ごすことになるだろう。我喜屋監督は最後にメッセージを送る。
「興南の教え、前の宜野湾ポニーの教え、そしてプロでの教え。先輩たちの作ってきた成功体験、失敗体験を経て、彼も幅広く大きな人間になってもらいたいですし、その後にまた力と技術が付いてくると確信しているので、とにかく日々努力。
彼の『スコアボード』はこんなもんじゃないはず。
ずっとずっと続けられる、大輪の花が咲き続ける選手になってもらいたい。
そのためには人様には見えない根っこを太くすることですね。
新人王、リーグ優勝だとか今の宮城は満開が続いてますが、それは散っちゃいますから。それをカバーするには、根っこを太くすること。新しい芽が出てきて大きな大木になって枝も大きくなるはずです」
太く長く活躍する大投手になるには、常に謙虚であるのみ。自身が生きてきた環境から学んだ教えを着実に活かす宮城なら成し遂げられるはずだ。
(記事:河嶋 宗一)

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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