「球界一のショートと言われる名手に」世代No.1遊撃手・辻本倫太郎が中日から3位指名!
辻本倫太郎
26日に行われたプロ野球ドラフト会議で、仙台大の辻本 倫太郎内野手(4年=北海)が中日から3位指名を受けた。仙台大の野手が支配下指名を受けるのは初。指名後、記者会見場に現れた辻本は、第一声で「小さい頃から追いかけてきた夢。まずはホッとしたというのが最初に出る言葉」と喜んだ。
富山市生まれで、2歳の頃に札幌市へ。北海では主将を務めたが、甲子園は経験していない。大学は尊敬する兄・勇樹さん(現・NTT西日本)がプレーしていた仙台大に進学。右投げ右打ちの内野手で、168センチと小柄ながら、瞬発力と強肩を生かした守備力は世代トップクラスを誇る。パンチ力と勝負強さを兼ね備えた打撃力も大学4年間で磨いてきた。
大学では1年秋からリーグ戦に出場。2年春からは遊撃のスタメンに定着した。3年時まで打率が伸び悩んでいたが、4年時は2季連続で3割を超える打率を残し、ここぞの場面でチームに勝利をもたらす本塁打も放った。リーグ戦通算成績は打率.277、5本塁打、48打点。
大舞台に強く、昨年の明治神宮大会、今年の全日本大学野球選手権ではいずれも本塁打をマーク。部員約250人の大所帯である仙台大をまとめたキャプテンシーも申し分ない。3、4年時は大学日本代表にも選出されており、国際大会で本職ではない二塁や三塁も無難にこなすなど、順応力の高さも証明済みだ。
会見場に登場した際、目元が赤くなっていた。名前を呼ばれた瞬間、自然と涙が流れたという。2日前から食べ物が喉を通らず、この日の睡眠時間はわずか1時間。「眠れないことは試合の前でもなくて、人生で初めて」。今秋のリーグ戦終了直後には「正直、(指名される)自信はあります」と口にしていたが、「運命の日」が近づくにつれ不安は増していった。
ドラフト当日は竹駒神社(宮城県岩沼市)を参拝し、寮に戻ってからは母校・北海が戦う秋季北海道大会決勝を観戦しながら、その時を待っていた。目標は「上位指名」だったが、「育成でも行くというくらい、覚悟を決めていた」。不安から解放され、堪えていたものが一気に溢れ出た。
1学年上の中日・田中 幹也内野手はポジションが同じで、体格も似ていることから、プレー動画を見て体の使い方などを参考にしてきた。また中日を率いる立浪和義監督については「小学生の頃からプレーを見ていて、(立浪監督の)本を読むこともあった。野球選手としては憧れが強い」と声を弾ませた。「1度も行ったことがない」という名古屋市の印象を聞かれると、「味噌カツですかね」と即答し、会場を和ませた。
プロでの意気込みは「ずっとショートをやってきたので、球界一のショートと言われる名手になれるよう練習を続ける。ゴールデングラブ賞をとれるような選手になって、打率は常に3割以上を残せるようになりたい」。プロ入り後のイメージは、すでにできている。1年目から、即戦力としてチームに貢献するつもりだ。辻本はさらに「全力プレーは続けて、観客の方が観ていて気持ちいいと思ってもらえるような選手になりたい」とも口にした。意気込みを語る頃には、いつもの笑顔が戻ってきていた。
プレーはもちろん、その屈託のない笑顔と、どんな時でも怠らない全力疾走は観る者を魅了する。会見に同席した森本吉謙監督も「『すごい』と『偉い』は違う。どんなに地位が上がっても、足元を見つめて周りから応援される選手でいてほしい」とエールを送った。辻本はプロの世界に飛び込んでも、変わらぬ姿を見せてくれるはずだ。
(取材=川浪康太郎)