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徳島インディゴソックス「10年連続ドラフト指名」の驚くべき理由、今年も来年も逸材ゴロゴロの球団はなぜできたのか?

2023.10.26


「四国IL徳島」「徳島インディゴソックス」——。
いよいよ本日開催される「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」。今年も運命の日が間近に迫るにつれ、この球団の名前がメディアを賑わすようになってきた。とにかく所属する選手が次々とドラフト候補として紹介されているのだ。
その中でもこの3選手は、NPBスカウト陣から高い評価を受けている。
注目度NO.1最速159キロの剛腕・椎葉 剛島原中央-ミキハウス-徳島インディゴソックス)、アメリカからの逆輸入193㎝の大型左腕・シンクレア ジョセフ 孝之助(ジョンオリバ一高-コチス短大-メアリー大-徳島インディゴソックス)、独立リーグNO.1スラッガー・井上 絢登久留米商-福岡大-徳島インディゴソックス)だ。
徳島インディゴソックスは、独立リーグ・四国アイランドリーグplusの球団だ。現在日本には7つの独立リーグ・30の球団があるのだが、徳島の「ドラフト実績」は他を圧倒している。
茶野 篤政(オリックス・バファローズ)、増田 大輝(読売ジャイアンツ)、岸 潤一郎、古市 尊(いずれも埼玉西武ライオンズ)など2013年から10年連続で計20名のNPB選手を輩出しているのだ。
徳島に行けば、なんとかなる——。球界でこう囁かれている「最もNPBへの扉に近い独立球団」の成功の秘訣はどこにあるのか?
海外でプレーしていたシンクレアジョゼフ 孝ノ助を獲得したような、国内外に張り巡らされたスカウティングネットワーク。オリックス・バファローズ二軍監督などNPB球団での豊富な指導経験を持つ岡本 哲司監督やNPB未経験ながら 今年で就任6年目を迎えた橋本 球史コーチらの指導といった側面があるのは言うまでもないが、本稿ではトレーニングの部分を紹介したい。
徳島インディゴソックスは「データに基づいた野球パフォーマンスに直結するフィジカルアプローチ」を掲げ、計画的に選手のパフォーマンスを向上させているのだ。

 「インディゴコンディショニングハウス」が飛躍的球速向上の原動力に
「当時からインディゴコンディショニングハウスの皆さんは単なる筋力トレーニングではなく、野球のパフォーマンスにつながるメニューを組んでくれました。ここは他とは決定的に違いましたし、自分にとっても非常に助けになりました」
そう語るのは、2018年、千葉ロッテから育成1位で受けた鎌田 光津希投手(横芝敬愛~敬愛大・2020年引退)。徳島インディゴソックスでは提携施設である「インディゴコンディショニングハウス」で徹底した管理の下、フィジカルアプローチが行われている。
徳島インディゴソックスの選手たちの1ヶ月は「体力測定」から始まる。これを毎月繰り返すことにより自らの状態を数値で明確に把握した上で、パフォーマンスを上げるのに足りない部分をフィジカルアプローチで補う手法を採用している。かつ、トレーニング後のケアは併設の治療院で直後に行うこともできる。これらのシステムが彼らの飛躍的パフォーマンス向上に大きく寄与しているのだ。
最も解りやすい投手の球速で示してみよう。冒頭にコメントを寄せた鎌田氏は入団時149キロだったストレートが155キロへアップし、ドラフト指名につながった。今季の選手では北海道大学出身右腕として注目を集める宮澤 太成が最速151キロから155キロ。椎葉が148キロから159キロ。池田卒4年目の白川 恵翔が今季149キロから154キロ。投手のほとんどが徳島の地で飛躍的に自己最速を更新しているのがわかる。
ちなみに彼らはインディゴコンディショニングハウスでのトレーニングにほぼ皆勤賞の面々。まさに「トレーニングはうそをつかない」好例である。

まだまだいる「次なるスター候補」
少し気が早いかもしれないが、「次なるスター候補」を5名をあげてみよう。
1人目は高卒2年目の右腕・山崎 正義。都立紅葉川時代は最速130キロ中盤。かつ175センチ77キロと決して身体が大きな方ではないが、今期は151キロまで最速を更新し後期からは守護神としてリーグ制覇に大きく貢献した。オリックス・バファローズの山岡 泰輔投手を思わせる全身をフルに活かした魂の投球をぜひ大きな舞台でみたい。
2人目は石川 槙貴、鹿児島城西~九州共立大を経て今季、徳島インディゴソックスに入団した。リーグ戦では7試合登板と経験は少ないが、186センチ90キロという恵まれた身体から繰り出す最速152キロのストレートと、縦に鋭く落ちるフォークは大きなスケールを感じさせる。
3人目は、徳島県出身で生光学園中ヤング時代からインディゴコンディショニングハウス・殖栗 正登代表からトレーニング指導を受けてきた正真正銘の「インディゴ育ち」高卒新人右腕・谷口 朝陽。184センチ85キロの堂々たる体格を有し、広陵(広島)時代は背番号「1」を付ける時期もあるなど素材は一級品である。今一つ殻を破り切れず最速も145キロに留まっていたが、徳島での一年間で最速は153キロと大きく上昇。将来性ではNPBの高卒一年目右腕と比較しても決してひけをとらない。
4人目は角井 亮太。龍谷大から今シーズン入団した右の長距離砲。後期シーズンからレギュラーに定着して一気にブレイク、井上 絢登につぐリーグ2位の7本塁打と放ち、独立リーグチャンピオンシップ(富山戦9/29)やフェニックスリーグ(ヤクルト戦10/11)でも本塁打を放つなど存在感を示した。
そして5人目は、シーズン途中でサイドスローに転向した出岡 佳英。MAX 143キロのストレートと切れの良いスライダーで勝負する。フェニックスリーグにも四国アイランドリーグplus選抜として招集されるなど、来シーズンに向けてチームの期待は大きい。スピードが上がってこれば、一躍ドラフト候補に名乗り出る可能性は高いだろう。

ちょっと四国は遠い、と思われる方もいるかもしれないが、ぜひ彼らの雄姿を四国の地でみていただきたい。そのパフォーマンスとハングリー精神に魅了されること、請け合いである。

文/寺下友徳

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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