瞬発力を鍛えるプライオメトリクスとは
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ばねの力を鍛えて一瞬の動作スピードを高めよう
瞬発力を強化するトレーニング方法として広く知られているのがプライオメトリクスです。瞬発力とは「瞬間的に出る強いばねの力」(広辞苑より)であり、トレーニング科学でいうところの「パワー」とほぼ同義語だと考えて良いでしょう。パワーは「スピード×力」で数値化することができ、「スピード」と「筋力」の二つが向上することによってパワーが大きくなる=瞬発力が高まると言えます。
プライオメトリクスは「ストレッチ・ショートニング・サイクル=SSC」というメカニズムを利用して、急に伸ばされた筋肉がそれ以上伸ばされないように抑制をかけて縮もうとする性質(伸張反射:しんちょうはんしゃ)と、それによって得られる腱の弾性エネルギーによってより大きなパワーを生み出すトレーニング方法です。例えば膝を曲げず、足首を固定した状態のまま、上半身の反動を使いながらその場でジャンプを繰り返すといったエクササイズ(呼び方はさまざまですが、その場ジャンプ、アンクルジャンプなど)はその一例です。伸張反射を利用するためには地面との接地時間をなるべく短くすることが重要であり、着地した時に膝や足首で力を吸収してしまうと接地時間が長くなって、伸張反射をうまく引き出すことができなくなります。ばねのように「素早く」そしてより「高く」跳ぶことを意識して行いましょう。
プライオメトリクスは効率よくパワー向上を養うことができますが、行う際にはいくつか注意点があります。一つ目は十分な筋力が備わった状態で行うということ。トレーニング経験の浅い選手(新入生を含む)や体格と照らし合わせて筋力が不十分な状態では、大きな負荷のかかる瞬発力強化のトレーニングによってケガをしてしまうことも考えられるからです。二つ目は疲労の少ない状態で行うということ。全体練習の終盤や練習後の自主練習では体力的に疲労がたまった状態であり、本来の目的とする「全力で」「一瞬で」動作を行うことが難しくなってしまいます。チームで行う場合は練習時間の始めに、比較的疲労がたまっていない段階で実施することを心がけましょう。三つ目は疲労回復の期間を十分取ること。パワーを鍛えるトレーニングは運動強度が高く、体にも大きな負荷をかけやすいため、トレーニングの頻度や回数、負荷設定などは十分に考慮する必要があります。実施する際には「短時間で」「数日おきに」行うことを念頭に、疲労回復の期間を十分にとりながら行うようにしましょう。
文:西村 典子
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