Interview

【ドラフト】高校屈指のパワーピッチャー・日當直喜(東海大菅生)が実践する“プロへの備え”、異例の「高卒即プロ」を選んだ理由とは?

2023.10.08


今年の高校生でも屈指のパワーピッチャー・日當 直喜(ひなたなおき)投手。190センチ100キロと恵まれた体格が際立つ。

最速153キロのストレートと何種類もの速いフォークを使い分ける投球スタイルが特徴だ。インタビューや練習風景からは、彼がすでにプロでの活躍を強く意識した取り組みをしていることを感じた。

日當は2年秋にチームを2年ぶりに都大会優勝に導く投球をみせ、センバツに出場。センバツでは3回戦の沖縄尚学戦で完投勝利を挙げ、ベスト8入りを果たしている。140キロ後半の速球、130キロ台のフォークで圧倒する投球は、スカウトから注目を浴びた。

日當のプロ志望届は東海大菅生では異例。田中幹也内野手(亜細亜大→中日)や高橋優貴投手(八戸学院大→巨人)など、同校OBは大学進学が定石だ。しかし、彼の言葉や、練習を見ていると、なぜ敢えてプロを志望したのか、その理由がわかった。

キャッチボール、投球練習からプロを見据えての練習

9月中旬、あきる野市・東海大菅生グラウンドに出てきた日當。後輩たちと一緒に混じって、アップを行っていたが、明らかに体格が一回り違う。体重100キロではあるが、引き締まった肉体を見て、最後の夏が終わっても、精力的にトレーニングしてきたのが伺える。

今まで日當については実戦やブルペンでの投球しか見たことはなかった。しかし、実際に投球練習に入るまでのキャッチボールをみると、気づいたことがある。日當は、一球一球考えながら練習に取り組んでいるのだ。

キャッチボールにしても、すぐには投げない。一度足を上げたあと、タイミングが合わなかったら、下ろしてしまう。タイミングが合って初めて、相手へ向かって投げるのだ。この意図について日當が説明する。
「自分は、投球1つ1つの動きを大切にしています。いつ実戦練習があっても大丈夫なように、そこで良い球を投げられるように、泥臭く練習をしているんです」
投手の基本はキャッチボール――。190センチの日當は、繊細に球界の金言を実践している。

次は投球練習。力強い速球に決め球のフォークを投げ込む中で、これまでと違ったのは二段モーションで投げていることだ。
これもプロを見据えて、夏が終わってから始めたものだという。
「二段モーションで投げたほうが、自分はバランスよく投げられる感じがして、いま挑戦をしています。以前の投球フォームより、直球の威力は上がっています」と手応えを感じている。

センバツ「全球直球勝負」のワケ

意識の高い練習を行っている日當は、自らの成長のために、公式戦でもテーマを掲げて投げる投手だ。

センバツの初戦・城東(徳島)戦で8回からリリーフした日當は、変化球を一切投げず、すべてストレートで勝負。見事2回を無失点で抑え込んだが、これも意図したものだった。

「ストレートがどれだけ通用するのか、試したかったんです。ストレートで抑えることができなければ、この先通用しないと思ったからです。自分を成長させるために変化球を使わないで、ストレートで抑える投球術も磨いていきたいと思いました」

この試合での最速は148キロで、140キロ超えは27球中、24球だった。その平均球速は142.29キロ。いうまでもなく高校生としてはトップレベルのストレートで、日當は城東打線をねじ伏せ、自慢の直球が全国で通用することを証明して見せたのだった。

これだと思ったら、とことん研究し、やり抜く日當。日々のキャッチボールも、二段モーションへの挑戦も、すべてに明確な意図があるのだ。

周囲への感謝も忘れない、心優しき剛腕

また、彼の言動からは、周囲の人間への感謝の気持ちを強く感じる。まず彼の口から出てきたのは、同校の若林弘泰監督を慕う言葉だった。
「若林先生にスカウトにしてもらったことは本当に感謝しています。大好きな野球をやるには、ここ(東海大菅生)しかない。若林先生を尊敬しているので、ここを選んだんです」

入学当初から強いプロ志望があった日當にとって、元プロの若林監督から指導を受けられることは、大きな財産だ。厳しい注文をつけられることもあったが、それも自分のためと思い、努力を重ねてきた。

また、日當は7人兄弟の大家族。その中で寮生活を送り、3年間野球に打ち込むことに専念させてくれた両親に恩返ししたい思いもあった。
「親に恩返ししたい。支えてくれた方々のためにも、自分のためにも恩返しのつもりで、高卒プロを志望しました」

また、日當は1、2年生と一緒にグラウンド整備や用具の片付けも行っていた。後輩の打撃練習中には、外野で守備について球拾いを行い、自らの投球練習が終わったあとでも、打撃投手を務めていた。
「Bチームの選手たちが(サポートを)やってくれたおかげで、自分たちはプレーに専念できた。いま、後輩たちの練習を手伝うことは、東海大菅生高への小さな恩返しなんです」

後輩選手たちによると、日當は新チームが始まった時からこのように練習のサポートをしているようだ。後輩たちはそんな日當を見て「かっこいいです」と目を輝かせている。

誰かのために尽くす。自分は支えられている立場というのを自覚しているからこそそういう行動ができる。プロ野球選手には応援されるような人間性も大事な要素だ。日當にはそれが備わっている。

ドラフトも近づき、その夢がかなった時、どんな投手になりたいのかを聞いた。
「最終的には日本を代表する投手になりたいです。厳しい練習を乗り越えてWBC代表になりたい」
恩師、両親の恩返しのために、さらに後輩たちにも尽くす心優しき剛腕はNPBの世界で、大成功を果たす。

取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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1 Comment

  1. 匿名

    2023-10-10 at 1:25 PM

    嘘ばかりの記事だな

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