【神奈川】4回戦 桐蔭学園 vs 横浜商
公立校唯一のベスト8入りを決めた横浜商、強豪私学を破る投手力、堅い守備、好投手に振りまけない打撃に注目
<神奈川県高校野球秋季県大会:横浜商4-3桐蔭学園>◇17日◇4回戦◇サーティーフォー保土ヶ谷
3回、桐蔭学園がチャンスを作り、バッテリーミスで1点を先制。しかし4回、横浜商は桐蔭学園の好投手・熊ノ郷 翔斗投手(2年)から7番・小菅 琉樹外野手(2年)の2点適時二塁打で逆転に成功する。小菅はバスターでしっかりとスイング軌道を改め、138キロの直球を捉えることができていた。
横浜商の先発・平野 友也投手(2年)が8回まで1失点と好投した。最速131キロの直球を両サイドに投げ分けながら、投球の中心は115キロ前後の縦スライダーだった。リードする門脇 嵩世捕手(2年)は「平野の縦スライダーはしっかりと決まれば打たれない自信がありました」と語るように、低めに決まるスライダーに桐蔭学園の打者は、ほとんどが腰砕けだった。
その後、2対1と横浜商リードのまま9回を迎える。
9回表、桐蔭学園の反撃に合い、久我 孝太捕手(1年)の犠飛で追いつくと、6番・寺澤 太智内野手(2年)の右翼線を破る適時打で勝ち越しされた。平野は「先頭打者に四球を出してしまいました。そこが反省点です」と悔やむ。そして門脇は「抑えたい、勝ちたい思いが強すぎて、このコースに投げてほしいというジェスチャーが足らなかったと思います」と反省する。
だが、9回裏にドラマが起こった。2番・嶋田 青太内野手(2年)のサヨナラ逆転2ランが飛び出し、ベスト8進出を決めた。
サヨナラ本塁打を打った嶋田は「風とそして声援が打球を後押ししてくれたと思います。自分は本塁打を打てる打者ではないですし、打った自分が一番驚いています」と結果には驚きつつも、強くスイングする自信はあった。
「これまでバットを振り続けてきて、練習量は負けない自信がありました」
そう、意気込む嶋田に、横浜商の菅沼監督はバントさせることもなく、嶋田のポテンシャルの高さを信じて、打たせた。それが最高の結果につながった。
桐蔭学園の投手はいずれも130キロ中盤を計測し、直球の精度も高い。簡単に打ち崩せる投手ではないが、そういった投手たちに怯むことなく、自分の打撃ができるなど、土壇場でひっくり返す横浜商の底力は侮れない。
出身中学をみると、捕手の門脇は横浜市立西谷中、サヨナラ本塁打を放った嶋田は横浜市立岡村中、好投の平野は横須賀市立長澤中と、地元の公立中出身で構成されたメンバーなのが分かる。
さらに横浜商はセンターラインを中心に守備力の高い選手が多い。公立校唯一のベスト8を決めた横浜商の次の相手は、夏の準決勝で対戦した横浜。前回は何もできずコールド負けに終わった。「投手総動員でいく」と菅沼監督が語るように、全力でぶつかり、勝利を目指す。