正則学園vs葛飾野
見事な完封投球だった葛飾野のエース・明石君
テンポのいい好試合は、都立葛飾野がエースの好投で正則学園に完封勝ち
<第105回全国高校野球選手権東東京大会:都立葛飾野3-0正則学園>◇10日◇2回戦◇江戸川区
東京のビジネス街の中枢といってもいい千代田区神田錦町に学校のある正則学園。都心の学校の常としてグラウンドはキャンパス内にないけれども、宮城県の強豪東北出身の國島一平監督の下で、日々の活動は熱心に行われている。ただ、今季のチームは秋も春もブロック予選で敗退しており、東京都大会への進出を逃している。それだけに、この夏にかける思いは強い。
都立葛飾野は、昨秋はブロック予選で聖パウロに競り負けたが、春は都立西と帝京八王子を下して都大会に進出し、1回戦でも豊島学院に快勝。2回戦で世田谷学園にはサヨナラ負けしたものの、才野秀樹監督もチームとしての仕上がりは悪くないという感触は得ているようだ。
そんな両校の対戦は、好試合が期待された。そして、その期待にたがわぬ、いいテンポの好試合となった。結果的には、安打数は都立葛飾野が10に対して正則学園は9。しかし、得点は3対0で、適時打と本塁打が出た分わずかに都立葛飾野が勝って接戦を制したという形になった。
正則学園の大塚 波琉投手(3年)、都立葛飾野の明石 柚希投手(3年)の投げ合いの投手戦となった。
初回の正則学園は1番の宮島 怜音翔外野手(3年)がいきなり二塁打で出たが、後続を抑えられた。そして、大塚の初回は1四球こそあったものの無難な立ち上がり。この段階で「これは、いい試合になっていくだろうな」という予感は十分にあった。こうなっていくと、先取点が、かなり大きな要素になっていくかなと思われたが2回、都立葛飾野が先制した。先頭の5番・島田 倖夢内野手(3年)が中前打で初安打を放つと、死球とバントで1死二、三塁。8番・岡田 賢二朗捕手(3年)が右前打して三塁走者をかえした。
さらに、3回には4番の高 玉龍(2年)が初球をたたいて左翼席へ放り込むソロアーチを放った。髙玉は、「インコースのちょっと甘い変化球だったと思います。前の打席でも変化球で来たので、そこを読んで思い切って行きました」という、思い切りのよさが功を奏したようだ。髙玉は7回にも初球をたたいて安打しており、思い切りのいいスイングは、今後も期待ができそうだ。
都立葛飾野は、さらに4回にも2死三塁から相手失策で幸運な追加点を挙げた。
そして、このリードを右サイド気味の明石が、終始自分の投球リズムを崩すことなく9回まで投げ切って、終わってみたら完封だった。安打こそ、9本打たれ二塁打も4本浴びているけれども、それでも本塁へかえさなかったのは、粘りの投球と言っていいであろう。
明石自身は、完封したにもかかわらず、「今日の出来としては60点くらいです。ちょっと甘いところに行ってしまって、安打されましたから…」と、厳しく見つめていた。そこに関しては、才野監督も、「完封はしましたけれども、今日の明石はそんなにはよくはなかったと思います。もっと投げられるんですよ。特に、前半は球も走っていなくて70点くらいの出来ですかね。コースが甘いので安打は多く打たれましたからね。ただ、捕手の岡田が大事なところで2つ盗塁を刺したり、リードに関しても非常に良かった」と、打者としても2回に先制打を放った岡田捕手を高く評価していた。
食い下がりながらも本塁が遠かった正則学園。國島監督は、「10安打と9安打、安打数ではほとんど変わらないのに、こういうスコアになってしまったのは…、監督の責任ですね」と、肩を落とした。「あと一本が出そうで出ませんでした。だけど、選手は、よく頑張ったと思います。特に、3年生は本当に頑張りました。グラウンドもない状況なので、平日は屋上でティーバッティングとかしかできない状況なのですけれども、そうした中で、一生懸命やってきただけに、勝たせてあげたかったんですけれども…」と、悔いていた。
取材=手束 仁