試合レポート

【東東京】決勝 共栄学園 vs 東亜学園

2023.07.30


ミラクル共栄学園!準決勝に続き9回2死からの逆転劇で甲子園初出場を決める

<第105回全国高校野球選手権東東京:共栄学園12ー6東亜学園>◇30日◇決勝◇神宮

これが勢いというものか。準決勝で9回2死から劇的なサヨナラ勝ちをした共栄学園が、決勝戦でも9回2死からの逆転劇で悲願の甲子園初出場を決めた。

両チームとも決勝戦に至るまでの戦いでかなり消耗していた。東亜学園の先発は三浦 寛明投手(3年)。主将でもある三浦に託した形だ。一方、共栄学園の先発は2年生の田嶋 勇斗投手。エースの茂呂 潤乃介投手(3年)の消耗が激しく、序盤を何とかつないでいければという意味での先発起用であった。

試合は序盤から点の取り合いになった。1回、共栄学園は1番・笹本 裕樹内野手(3年)、5番・前田 幸毅内野手(3年)の二塁打などで2点を先制すれば、その裏、東亜学園は5番・三浦の左前適時打などで1点を返す。3回、共栄学園はエラー絡みで1点を追加する。

4回、東亜学園が1死後、安打2本を連ねたところで、投手を1年生の首藤 健介投手に交代する。田嶋が4回途中まで持ったことは、共栄学園の原田健輔監督としては、「よく頑張ってくれました」という健闘だった。交代した首藤は、東亜学園の9番・佐藤 海斗捕手(1年)に二塁打を打たれ2人が生還。同点になる。続く1番・毛利 光希外野手(3年)を死球で出したところで、共栄学園はエースの茂呂を登板させる。茂呂は2つの四球で押し出しの1点を献上したが、後続は絶つ。

5回、共栄学園が4番・菊池 虎志朗捕手(3年)の二塁打など安打3本を放ち同点に追いついたところで、東亜学園は投手を三浦から投手陣の柱の1人である大沢 健翔投手(3年)に交代する。6回、共栄学園は代打の渡邊 修(3年)の三塁打などで1点を勝ち越す。共栄学園は、途中出場の3年生が活躍したことが、勝利につながっていく。

5対4。共栄学園が1点リードで迎えた8回の東亜学園の攻撃は、この試合の分水嶺になった回だ。この回、東亜学園は安打1本と2つの四死球で1死満塁のチャンスを得る。ここで4番・倉持 大希外野手(3年)の二ゴロに対し、二塁手の二塁への送球が悪送球になり、2人が生還して東亜学園が勝ち越す。しかし続く大沢の打席の2球目にスクイズを敢行するが、共栄学園のバッテリーはこれを読んで外して追加点を阻止する。エラーで逆転されても、バッテリーが冷静さを失わなかったことが、9回のドラマにつながっていく。

運命の9回、共栄学園は2死一塁と追い込まれる。ここで代打、3年生の清藤 和真捕手(3年)が死球で出塁する。続く途中出場の3年生・打野 琉生内野手(3年)がセーフティーバント。内野安打になると同時に三塁手の一塁へ悪送球で、共栄学園は土壇場で同点に追いつく。なおも一、三塁に走者がいる。ここで一塁走者の打野が盗塁。捕手が二塁に投げると、三塁走者である清藤の代走である3年生の齊藤 開心内野手(3年)がホームを狙う。ダブルスチールの成功で1点を勝ち越す。「あれはサインです」と原田監督。たたみかける攻撃で、東亜学園を追い込む。さらに続く高𣘺 祐稀外野手(2年)が三塁打を放ち、打野も生還した。

さらに茂呂の右前安打で1点を追加する。茂呂はこの試合、二塁打1本を含む3安打の活躍。「自分が打ってやろうという気持ちで振りました」と茂呂。原田監督が「茂呂はヘロヘロでした」と言うように、体力的には厳しい状況にあったが、気持ちの強さで勝利に導いていく。さらに四死球の走者で満塁になったところでこの試合、本来の3番に戻った主将の横田 優生内野手(3年)が二塁打を放ち満塁の走者が生還。この回一挙に7点を挙げた。「自分を信じて打順を挙げてくれた監督さんの期待に応えたかったです」と横田は言う。

9回裏は、この回先頭の途中出場の9番・大岸 旭外野手(3年)の右翼への打球が、共栄学園の右翼手の顔面を直撃するアクシデントがあった。一瞬、勝負はまだ分からないという感じにもなったが、茂呂は動ぜず、3人を打ち取り、共栄学園は悲願の初優勝を果たした。

共栄学園の原田監督は、「この大会を通して、私の出す采配は全てズレていたけど、部員みんなでカバーしてくれました。甲子園はまだ実感がわきません」と語った。準決勝で奇跡の逆転勝利を挙げた時は、感極まっていた原田監督は、優勝が決まった後は、意外と冷静にみえた。これはまだ実感がわかないというところから来るのだろう。優勝の喜びに浸る間もなく、甲子園大会が始まる。

このチームは秋の1次予選で敗れ、体づくりからやり直し、鍛え上げた。夏は強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強い、と言われる。共栄学園は大会を通して強いチームになっていった。共栄学園は2003年に共学化されたが、それ以前は女子校。都立雪谷のようにルーツをたどれば女子校というケースはあるものの、2000年以降に私立の女子校の共学化が進む中で発足した野球部が甲子園に行くのは、東京では初めて。「共栄学園に男子生徒もいるの?」と言われながら、選手を集めてきた原田監督ら関係者の苦労が実を結んだ。

一方、東亜学園はまたも甲子園を逃した。武田朝彦監督は、「ほぼエラー絡みの失点になった」というように、肝心なところで守りのミスが出たことが大きかった。それでも「そんなに力のないチームがここまで来ました」というように、秋や春の戦いを考えれば、準優勝は立派な成績である。最後の勝負強さをどう磨いていくか。34年遠のいている聖地への道を切り開くカギになる。

 

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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1 Comment

  1. 大東亜学園

    2023-08-12 at 8:05 AM

    何で決勝戦のフォトは共栄学園の選手達だけで、東亜学園の写真は一枚たりとも無いの?

    そんなに東亜学園がお嫌いなんですか?💢

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