試合レポート

準決勝 神村学園 vs 鹿児島実

2023.07.22


神村学園が粘り強く、泥臭く、勝ち切る

<第105回全国高校野球選手権鹿児島大会:神村学園11-4鹿児島実(7回コールド)>◇21日◇準決勝◇平和リース

実力校同士の対戦は、中盤で両者互いに点をとり合う長丁場の競り合いだったが、粘り強さ、泥臭さで勝った神村学園が終わってみればコールド勝ちだった。

3回、鹿児島実が2番・満留 裕星内野手(2年)の左前適時打で先制すれば、その裏、神村学園も2番・増田 有紀内野手(2年)の右前適時打で同点に追いつく。

鹿児島実は4回、2死満塁から9番・井上 剣也投手(2年)の適時内野安打で2点を勝ち越す。

その裏、神村学園は1死一、二塁から送りバント悪送球、押し出しで同点。更に1死満塁からスクイズを仕掛ける。本塁フォースアウトとなるも、捕手からの一塁送球が悪送球となり、4点目を挙げた。

5回、鹿児島実は2死から5番・植戸 颯大外野手(3年)の中越え二塁打、6番・丸山 陸内野手(2年)の右越え三塁打で同点に追いつく。

その裏、神村学園も2死から3連打を浴びせ、6番・上川床 勇希外野手(2年)の中越え三塁打、7番・松尾 龍樹内野手(3年)の中前適時打で2点を勝ち越した。

まるでミラーゲームのように、点をとってはとり返す、拮抗した展開が5回までは続いた。

流れが大きく変わったのは6回以降だった。神村学園は5回途中からリリーフした左腕・黒木 陽琉投手(3年)が6、7回を無失点で切り抜けて守備からリズムを作る。

攻撃では6回、満塁から2つの押し出しで点差を4点に広げると、7回には2死から1死球を挟んで4安打を集中。最後は6番・上川床が中越え二塁打を放ち、7点差となって2時間47分に及んだ熱戦を締めくくった。

一昨年は準決勝、昨年は初戦と、この2年間、夏はいずれも鹿児島実に苦杯をなめていただけに、「選手たちが借りを返そうと、粘り強く、泥臭く、最後まで戦い抜いてくれた」と神村学園・小田大介監督は選手たちの頑張りを称えた。

ターニングポイントは4対4の同点で迎えた5回。2死から5番・岩下 吏玖内野手(2年)が左越え二塁打を放ったが、フェンスにぶつかった左翼手の治療で約5分間の中断があった。

「相手は早く守備を終わらせようとするから、初球だけは見送れ!」が小田監督の6番・上川床への指示。「来た球を打つ」ことのみに集中していた上川床だったが、指示通り初球を見送り、1ボール1ストライクから3球目を迷わず振り抜き、右中間を深々と破る三塁打で勝ち越しに成功。打撃不振で悩んでいた7番・松尾龍も執念の中前適時打で続き、2点差とし、ミラーゲームのような点の取り合いから抜け出すきっかけになった。

「黒木が0をつけてくれたのも大きかった」と小田監督。5回までの点の取り合いを6、7回は黒木が無失点で切り抜け、守備も無失策。守備で崩れなかったのも大きな勝因になった。最後は7回裏、2死から集中打を浴びせ、コールド勝ちした。

締めくくりの長打を放ったのも6番・上川床だったが「後ろにつなぐ気持ちが結果的に長打になっただけ」と振り返る。今年のチームのテーマは「気愛」。攻撃でも守備でも、あるいは試合に出られない控え選手やベンチ外の選手でも、仲間のため、チームのために自分ができることをやり切る。「部員50人の気愛が甲子園につながる」と上川床は言う。

今大会は「初戦から6試合、決勝をやるつもりでやってきた。あと1試合決勝をするつもりでやる」と小田監督。「気愛」でどの試合も全力投球する姿勢はいささかも揺らぐことはない。

取材=政純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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