試合レポート

鹿児島工vs志布志

2023.07.06


志布志は「楽しい野球」に成長の跡

<第105回全国高校野球選手権鹿児島大会:鹿児島工3ー2志布志>◇6日◇1回戦◇平和リース

 鹿児島工は初回、2死一、三塁から5番・新村 玲雄(3年)の右前適時打で先制する。

 2回は2死から死球で出塁した9番・羽牟 飛我(3年)が二盗を決め、1番・吉田 迅舞(2年)の左前適時打で効率よく2点目を追加した。

 志布志は4回、四球で初めて先頭打者を出し、1死一、三塁として5番・屋野 球真(2年)の右前適時打で1点を返した。

 5回以降は両者互いに好機を作るも8回まで追加点ならず。鹿児島工のエース永田 類(3年)は120キロ台後半の直球と100キロ台の変化球を低めに丁寧に投げ分けて、ゴロで打たせて取る。志布志は4回からリリーフした右下手投げの金井 智也(2年)が100キロ前後の遅い球を有効に使って、タイミングを狂わせ飛球で打ち取った。

 9回、鹿児島工は2死二塁として代打・松山 詩季(3年)が初球を思い切り振り抜く。当たりは良くなかったが、中前に落ちる適時打となり、待望の追加点を得た。

 その裏、志布志も粘る。1死から4番・宮内 颯也(3年)、5番・屋野の連打で一、三塁とし、6番・倉冨 翔(2年)の三ゴロの間に1点を返して1点差とした。続く、7番・福元 敬翔(2年)の打球は中前へ落ちそうな飛球。更に好機が広がるかと思われたが、鹿児島工の中堅手・新村がダイビングキャッチ。好守で志布志の反撃を断ち、接戦をものにした。

 1点差で惜敗した志布志だったが、竹山英輔監督は「3年生5人を中心に最後まで全員で戦ってくれた」と賛辞を惜しまなかった。

 絶対的なエースや本塁打を打てるような強打者はいない。1人1人が持っているものをあの手、この手で組み合わせて「チームワークで勝負する」(前田凌我主将)志布志野球をやり切ろうという姿勢を最後まで貫いた。

 1、2回と失点し相手に流れが行きかけたが、3回に1年生でただ1人スタメンに抜擢された濵﨑 悠斗が中前に落ちそうな打球を好捕し、悪い流れを断ち切った。4回からリリーフした金井は「遅い球」を最大限に有効に使う。最速は110キロにも満たないが、80キロを切るようなスローボールとの緩急差で巧みにタイミングを狂わせた。5月のNHK旗では鹿児島城西に大敗したがプロ注目の明瀬 諒介内野手(3年)から三振も奪い「自信を持っていた」(竹山監督)。

 打線は度々好機を作りながらも、打ち崩せず、9回に2点差とされたが、その裏、1死から粘って1点を返す。「みんなの気持ちが強まり、もっと長く野球をしたい」想いが9回の1点につながった。

 部員は3学年で25人。近年、部員不足が顕著で合同チームも珍しくない中では恵まれている方かもしれない。ただ、中学野球経験者だが高校ではやらないと当初考えていたが、竹山監督の「一緒に楽しい野球をやろう」と熱心に勧誘され、心動かされ入部した選手も数人いる。2年生には野球未経験者の選手も。昨年の台風の影響で防球ネットが壊れ、長く打撃練習ができなかった時期もあった。

 少子化や野球人口減…。野球をめぐる状況の厳しさは志布志もひしひしと感じる中、知恵、工夫、熱意で作り上げた「楽しい野球」の成長は示せた手応えはある。「秋の大会が楽しみです」と前田主将は後輩たちに期待していた。

取材=政 純一郎

鹿児島工vs志布志 | 高校野球ドットコム

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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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