骨折と骨挫傷の違い
デッドボールや自打球によって、骨に強い衝撃が加わることがある
野球ではときどき骨に大きな衝撃を受けることによってケガをすることがあります。よく見られるものがデッドボールや自打球による骨折ではないでしょうか。その他にも選手同士がぶつかったり、バントをするときにボールとバットの間に指がはさまれたりといったケースで骨折することがあります。骨折は骨の連続性が断たれてしまう状態を指します。その多くはアクシデントによるものですが、疲労骨折のように繰り返されるダメージによって「勤続疲労」のように骨に衝撃が加わり続けて折れてしまうこともあります。
また骨折には至らなくても「ヒビが入ってしまった」というケースもあります。骨の位置がずれているといった明らかな所見が見られないときは「ヒビ」として区別することもありますが、「ヒビ」であっても骨折(亀裂骨折、不全骨折等)と同様に骨の組織が損傷している状態であり、骨折と同じように対応する必要があります。「ヒビ」は骨折と違って骨の連続性は保たれている状態ですが、骨の組織を損傷していることに変わりはなく、症状が軽いというものではありません。
さらに骨折やヒビのように骨に亀裂などが見られなくても、骨の内部で内出血が起こり激しい痛みを伴うものに骨挫傷(こつざしょう)があります。挫傷とは皮下組織や深部が傷つくことを指し、いわゆる「うちみ」と呼ばれるものです。レントゲンでは骨折やヒビなど明らかな骨の異常は見られませんが、MRI検査を行うと骨内部の組織が損傷して出血していることを示す高信号が確認できます。レントゲン検査では骨折していなかったものの、しばらく経っても痛みが軽減しない、強い痛みが続く場合は骨挫傷かどうかを調べる必要があるでしょう。
アクシデントによって骨を傷めた可能性がある場合は、その場でできる応急手当としてRICE(患部を安静に保つ・冷やす・固定する・挙上する)を行い、すみやかに医療機関を受診するようにしましょう。明らかな変形、腫れなどがなく、しばらく経過を見る場合であってもいったんプレーは中断し、RICEを行うことが大切です。その後、次第に痛みが強くなる場合は早めに医療機関を受診し、骨折や骨挫傷がないかを診てもらうようにしましょう。
文:西村 典子
球児必見の「セルフコンディショニングのススメ」も好評連載中!