アイシングの目的を理解しよう
投球後にアイシングをしたらその後どうなるかを、普段の練習から確認しておこう
セルフコンディショニングの一つとしてよく用いられるものにアイシングがあります。投球後にアイシングをするかどうかは議論の分かれるところですが、何のためにアイシングを行うかによって「実施した方がいいのか」「実施しない方がいいのか」は変わってきます。
●炎症を抑える場合はアイシングを行う
投球後に肩や肘に痛みやいつもとは違った感じが残る場合は、筋肉や靱帯、関節などに炎症が起こっていることが想定されます。このようなときは患部の炎症症状(痛みや腫れ、熱感など)を抑えるためにアイシングを行うことが勧められます。アクシデントによる急性外傷と同じく、応急処置としてアイシングを行うということです。患部を冷却することによって一時的に患部周辺部の筋肉や軟部組織が冷やされるため、動きづらさを感じるかもしれませんが、これは時間の経過とともに改善していきます。痛みや損傷のダメージがこれ以上にひろがらないようにするという狙いもあります。
《投球後に肩や肘に炎症を起こす可能性のあるケース(例)》
・久しぶりに投球した場合
・下半身がうまく使えず、肩や肘に過度な負担がかかるフォームで投げ続けた場合
・マウンドの傾斜や硬さなど、普段とは違ったマウンドで投げた場合
・投球数がいつも以上に増えた場合
・連投した場合
・以前に肩や肘をケガした経験がある場合
●投球後のコンディショニングの場合
一方、痛みや腫れなどの炎症症状はあまり見られないときにアイシングを行う場合は、応急処置的なアイシングよりも時間をやや短めに設定し(~10分程度)、動きやすさを考慮するようにします。前もって普段の練習から「投球後にアイシングをした方がその後の調子が良い」のかどうかを、確認しておくと良いでしょう。投球動作を繰り返すと、肩前方部の筋肉は縮み、肩後方部は引き伸ばされて張ってしまう傾向が見られます。このような時は肩前方部のストレッチや、背中や肩後方部の筋肉を収縮させるようなエクササイズなどを取り入れて、本来の筋バランスを回復させることや、筋肉の柔軟性を回復させるために肩や肘まわりを中心に下肢もあわせてストレッチをしておくようにしましょう。必ずしもアイシングを行わなければならないという状態ではないと考えられます。
痛みや違和感が残る場合は「応急処置」としてのアイシングを実践し、コンディショニングとしてアイシングを行う場合は時間設定を短めにしたり、ストレッチやエクササイズを行ったりすることで肩や肘のコンディションを整えるようにしましょう。
文:西村 典子
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