試合レポート

富士vs沼津商

2023.04.09

最後までもつれた試合は、9回、富士が何とか守り切って沼津商を退ける

富士vs沼津商 | 高校野球ドットコム
富士・水越壱成君

<春季静岡県大会東部地区予選:富士5-4沼津商>◇8日◇代表決定戦◇静岡県営愛鷹球場

 昨年冬、あのイチロー氏がふらりと訪れて指導をしたということで話題になった静岡富士。2021年春に三島南を21世紀代表校として甲子園に導いた稲木恵介監督が異動して就任して2年目。かつて1979年夏、1987年春には甲子園出場も果たしている。東部地区では有数の進学校としての人気もある。対する沼津商は、地域に密着した形の伝統の商業校で地元の人気は高い。昨秋は東部地区予選を順調に勝ち上がって県大会進出も果たしている。

 静岡富士は初戦で三島北を下し、沼津商下田を下しての代表決定戦進出である。稲木監督と沼津商の大久保匡人監督は沼津東での2年違いの先輩と後輩という間柄でもある。

 この日は、風はやや強いが、穏やかな春の日差しの下に行われた試合となった。

 先制したのは静岡富士で2回、一死から6番富永君が四球で出ると、二死一塁から、水越君が右前打するが、エンドランでスタートをしていた一塁走者はそのまま好走よく本塁を陥れた。見事な走塁だった。

 しかし、沼津商も3回、1番近松君が風で打球が少し曲がったということもあったが、左翼手の横を抜ける三塁打で出ると続く土屋君が初球スクイズを決めてすぐに同点とした。相手に考える余地を与えない素早い攻撃だった。お互いアグレッシブな動きを見せて点を取りあった。

 5回、静岡富士はここまで1失点で凌いできた左腕の遠野投手を下げて、この回から背番号1の水越投手をセンターからマウンドに呼び寄せた。すると、今度は沼津商が失策と9番金子君の安打などで一死一三塁とすると、1番近松君の遊ゴロ併殺崩れの右間に三塁走者が帰ってリードする。しかしその裏、静岡富士も先頭の2番中澤君が左越二塁打するとバントで進み、失策で生還して同点とする。

 こうして全く互角の戦いで後半に突入していった。

 6回から沼津商の大久保監督は鈴木投手を下げて、同じ右腕の白井投手を送り込んだ。静岡富士はそこを攻めて、2四球と暴投などで二死二三塁としたところで、3番渡邉君が中越二塁打を放って2人を帰してリードした。

 さらに7回にも静岡富士は3人目として登板した馬籠投手を攻めて四球とバント悪送球でチャンスを広げると、二塁盗塁の送球ミスで1点を追加する。これで、静岡富士はあっさり逃げ切れるのかと思ったが、試合は9回もう一つもつれていった。

 最後の反撃に賭ける沼津商は先頭の白石君が振り逃げで出塁。続く長澤君と代打杉山君が相次いで左前打で無死満塁。9番金子君の犠飛で1点を返す。ここで当たっている1番近松君は三直に倒れたが、続く齋藤巧君の一打は投手内野安打となり、さらに悪送球も誘い1点差となって、なおも二死二三塁。四球で満塁となって、一打逆転もあり得るという場面になった。ここで4番酒井君。「エースと4番の勝負なんだから、思い切ってやってこい」という稲木監督の指示もあったというが、何とか水越投手が投げ勝って静岡富士は辛くも逃げ切った。

 平日は、17時から19時までという限られた時間しか練習時間が取れないという静岡富士。土日も、練習はどちらかということなので、対外試合も他校に比べると少ないという。そうした中で、「元気に明るく野球をやっていこう」という姿勢を貫いている。

 「野球を通じて成長していきながら、様々な方面にアンテナを立てて社会のリーダーとしてやっていかれる人間を育てていきたい」というのが稲木監督の静岡富士での指導方針でもあるという。

 沼津商は、結果的には都合5人の投手をつぎ込んだことになったが、交代のタイミングで失策や四死球が絡んで捉えられて失点につながったのが結果としては痛かった。随所には、いい守りも見せていただけに、惜しい戦いでもあった。それに、9回の粘りは「勝負を諦めない姿勢」を十分に示していたとも言っていいであろう。夏への飛躍が期待されそうな印象だった。

(取材=手束 仁)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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