佐倉vs千葉西
進学校・佐倉 技巧派左腕エースと匝瑳シニア出身の強打の捕手が軸
佐倉先発・横山太一
<秋季高校野球千葉県大会:佐倉8-1千葉西(8回コールド)>◇19日◇1回戦◇県営
千葉県内でも屈指の進学校としても有名な公立・佐倉が、千葉西を8対1で破り、2回戦へコマを進めた。
手堅い野球と「新チームになってからミーティングを増やして連携を取ってきた」と些細なことでも声を掛け合って準備する様子が印象的だった佐倉。3回の4得点でリズムを作ってからは試合の主導権を握り、優勢を維持した。際立ったのはエース・横山太一投手(2年)と5番の伊藤碧海捕手(2年)のバッテリーだった。
エース横山はコンパクトなテークバックでトップを作ると、スリークォーター気味の高さから振り抜くオーソドックスなサウスポー。どの球種でもフォームの再現性が高く、制球力がいい。直球は110キロ台後半で、変化球も100キロ台の緩いスライダー系がメインで緩急をつける投球が持ち味だ。制球力の良さを生かして丁寧にストライク先行の投球ができるので、テンポよく打ち取ることができ、守備から佐倉のリズムができていた。
その横山をリードする正捕手・伊藤は今年の佐倉の要といっていいだろう。イニング間の二塁送球は2.0秒ほど。自身はスピードよりもコントロールを大事にしているというが、捕ってから素早い握り替えとステップで好タイムを記録する。ストップ、キャッチングも癖がなく、どれもしっかりとできていた。さらにマウンドの横山はもちろん、野手への声掛けも徹底していた。チーム全体を巻き込んでいく統率力の高さも伺え、捕手としての能力の高さが見えた。
また打席に立つと、ヤクルト・山田哲人内野手(履正社出身)を彷彿させるスイングを見せる。深く、高い位置にバットを置いて、あらかじめトップができた状態で構える。相手投手が足を下ろすと同時に自身も動き出し、タイミングを計る。インパクトまで最短距離でバットを出していき、強くミートする。第1打席は結果こそセンターフライだったが打球は痛烈だった。2打席目は追加点となる左前適時打を放って横山を援護した。8回の第5打席には右翼手の頭上を越す適時打。持ち前の長打力を発揮して試合を決めた。
阪神・及川雅貴投手(横浜高出身)を輩出した匝瑳シニア時代に、ヤクルト山田の「外角の打ち方が美しい」と心打たれたことで、参考にしていくなかでフォームが似てきたという。今も尊敬するスラッガーを意識して「素振りと同じようにスイングできるように、腰でタイミングを取ってポイントに呼び込む」感覚を大事にしている。高校通算3本塁打を記録する打てる捕手だ。
進学校・佐倉である以上、勉強もおろそかにできない。今大会の1週間前にはテストもあり、「かなり大変だった」というが、「時間確保が難しく、スケジュールが詰まっているからこそ、練習時間を無駄にしないように必死でやっています」とプラスに働いているようだ。次戦に向けて「チャンスで得点を重ね、取るべきところで得点が取れるようにしたいです」と意気込みを語った。
敗れた千葉西のエース・上田浬久投手(2年)は、100キロ台のスライダー、カットボールの変化球で佐倉の攻撃を封じていたが、3回に守備のエラーなども重なり、4失点をしてから苦しかった。長い腕を利用して、大きなテークバックから右腕を振り抜くサイドスロー投手。足を上げてから三塁方向に足を伸ばすことで、左半身で壁を作りながらヒップファーストでの重心移動ができており、下半身を使った投球ができている。
高校2年生から野球人生初の投手となり、すぐにサイドスローへ転向。あらゆる情報をかき集めながらキャッチボールを中心にフォームを固めてきたことで、開きを抑えたフォームができ、制球が良くなったという。直球は最速117キロで、サイドスローである以上、春先に向けてはもう少し球速と切れが欲しいところ。上田も「常時125キロを計測したいですし、スライダーの切れ味も上げられるようにしたいです」と一回り成長することを誓った。冬を越えて、どのような投球ができるか注目したい。
(取材=田中 裕毅)