都立日野台vs東京
1年前はベンチ外だった強打者が活躍 西東京の実力校が東東京16強を下す
都立日野台1番・明星洵佑
<秋季東京都高校野球大会1次予選:都立日野台5-1東京>◇3日◇1回戦◇佼成学園グラウンド
西東京で打力を武器に近年結果が出ている都立日野台が、夏の東東京16強の東京を5対1で打ち破った。
6回が終わって0対1。何度もチャンスを作るが、あと1本を出せずに6回までで7残塁を記録。攻撃のリズムは悪かったが、1番・明星洵佑内野手(2年)が一変させた。
「1、2打席目で凡退したので、『ここで打たなきゃ』と思っていました」と気持ちを奮い立たせて打席に立つと、6球目を右中間へ。手ごたえ十分だった打球はチーム初の長打で、貴重な同点適時打となった。指揮官の畠中監督も「価値ある一本でした」と称賛した適時打を放った明星はその後、勝ち越しのホームを踏み、チームへ勢いを与えた。
夏の大会では7番打者としてスタメン出場。ただ3回戦の早稲田実業との試合では0点に抑えられて敗戦した。「夏は打てずに負けた」。悔しい思いを胸に刻んでいたが、変な「力み」にするつもりはなかった。
新チームになり、畠中監督と相談をしながら「肩が上がってしまうことで肩甲骨が使えずに、上半身の連動性が悪くバットが出なかった」という課題を洗い出した。
チームで徹底している大きいテイクバックをあえてとらず、反動を小さくすることで上半身の使い方を改善させた。打席での意識も「インパクトの瞬間まで力を抜く」ことを大事にした。おかげで連動性が生まれ、バットがスムーズに出せるようになった。インパクトも体の前で迎えることができてきたことで、ホームランが2本出るなど「手ごたえ十分です」と確かな成長を感じていた。
去年1年間はベンチ入りもできず、控え選手として鍛錬を重ねる日々だった。チームで徹底している大きくトップを取って、間を作る感覚を覚えながら「骨盤を使ったスイングや、上半身の使い方を見直しました」と体の仕組みから打撃フォームを改善。2年春からベンチ入りをつかむと、夏にはレギュラー入り。新チーム発足時では「今年のキーマンです」と畠中監督が言うほど、欠かせない戦力にまで成長した。
次戦の東京都市大付を下せば都大会出場だ。「主軸としてチームを引っ張り、勢いを与えたい」と意気込んだ明星。代表決定戦でもチームに勢いをもたらす打撃を見せられるか。
[page_break:トルネード投法の129キロ右腕に期待 春での活躍に期待]トルネード投法の129キロ右腕に期待 春での活躍に期待
東京先発・市野将暉
<秋季東京都高校野球大会1次予選:都立日野台5-1東京>◇3日◇1回戦◇佼成学園グラウンド
東京は夏の東東京16入りするも、秋はブロック予選で姿を消すことになった。7回の失点が悔やまれるだけに指揮官の松下監督も「チャンスを作りながら2対0にできずに、投手に負担をかけてしまった」と前半5回までの攻撃で1点のみに終わったことを反省していた。
先発して7回途中で降板したエース・市野将暉投手(2年)は「100球超えたところから、抜けはじめてカウントを悪くし、失投を打たれた」と敗因を的確に振り返った。春に向けては直球の球質向上はもちろん、変化球を増やしていくことを明言。オリックス・田嶋大樹投手(佐野日大出身)をイメージして成長していきたいと誓った。
本人は課題を口にしたが、6回までは被安打3、奪三振5、与四死球3で無失点と打たせて取る安定した投球だった。イニング交代45秒を目標に自分たちのテンポを作る東京にとっては、十分な内容だった。
元々、打たせて取る投球スタイルも主体は直球だった。夏の大会を前に「カットボールのほうが、打たせて取れている」と気づき、投球の構成をカットボール中心に変えた。
手首の角度だけを変えて、スライダーに近いイメージで投げる。後ろから見ていても直球よりやや遅いものの、同じ軌道から若干曲がっているくらい。うまく芯を外して凡退させていた。
「捻転差を生かした球速向上や、ヒップファーストのためにやっている」というトルネード投法も独特だが、考えて工夫しながら投げているのが受け答えを通じてもわかる。最速こそ129キロと物足りないが、一冬越えて春には好投手として、都大会に導く活躍を見せてほしい。
(記事=田中 裕毅)